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【ゼブラ社長インタビュー】デジタル時代の荒波に“MADE IN JAPAN”の底力、「将来なくなる」と言われた筆記具メーカーの矜持
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ゼブラ株式会社 代表取締役社長・石川太郎氏
中国で爆発的人気の『学覇利器』、「日本製の筆記具の品質の高さに気づく人が増えている」
中国の学生に人気の『学覇利器』(がくはりき)
同社の代表取締役社長・石川太郎氏は、『学覇利器』の開発背景を次のように語る。
「中国では小学生の頃から学習用の筆記具に鉛筆やシャープペンシルではなくボールペンを使うのが一般的で、政府でも0.5mmの黒のジェルボールペンを推奨しています。しかも、中国は非常に学習熱の高いお国柄。少しでも勉強が楽しくなるよう、ペンの胴体にインクの減りを見える化できる目盛りを付けるなどの工夫をしたところ、爆発的なヒットとなりました」
何より支持を集めている理由は、その品質の高さだ。『学覇利器』のベースとなっているのは、ゼブラのロングセラー商品、ジェルボールペン『サラサ』。この鮮やかな発色と、さらさらな書き心地が「勉強が捗る」「手放せない」として、月に2〜3本消費する学生も多いという。
『学覇利器』が中国市場に投入されたのは2017年のこと。これ以前に3割程度だった海外売上は、今や6割以上となっている。ゼブラ製品はこれまでも世界100ヵ国以上で販売されてきたが、特に昨今は「インバウンドをきっかけに日本製の筆記具の品質の高さに気づく人が、世界的に増えているようです」と石川社長は手応えを語る。
逆に、海外のホテルのチェックインなどでボールペンを使った際に「書きにくいな」と感じた経験はないだろうか。日本人にとっては当たり前の「MADE IN JAPAN」の書き心地も、外国人にとっては新鮮な感動に満ちているのかもしれない。
「中国でも全体的な教育水準は底上げ傾向にあります。その他の国も含めて、海外市場はまだまだ伸び代があると感じています」
「将来なくなる」「少子化で大変」と言われた筆記具業界、意外な健闘のワケ
筆記時の振動を徹底的に抑えた『ブレン』
「たしかに、手書きの機会は減少傾向にあります。1人あたりの筆記具を使う本数は減っている、デジタル化の趨勢としてこの事実には抗えません。一方で、1人あたりの筆記具の消費単価は上がっており、その分、業界全体の売上も伸びています。記録やメモを取るなどの“道具”としての筆記具がデジタルツールに置き換わった分、“あえての筆記具”はこだわりの1本が選ばれるようになっているようです。小中学生の間で1本数千円以上の高級シャーペンがブームになっているのも、その象徴的な事象でしょう」
高品質な筆記具に慣れた日本人に向けた商品開発は、「かつて以上に高付加価値を追求するようになった」と石川社長は語る。
その成果の1つが、2018年12月発売の新ボールペンブランド『ブレン』で、筆記時の振動を徹底的に抑えたストレスフリーな書き心地が「もうほかのボールペンには戻れない」というファンを数多く掴んでいる。
北米でも大ヒット、“ペンの生命線”の自社開発・製造にMADE IN JAPANのものづくり精神
「実は、『マイルドライナー』は北米でも大ヒット商品となっているんです。もともと北米はバレットジャーナルなどのアート&クラフト文化が盛んですが、自国製品にはない、豊富な色展開と繊細な発色が高く評価されています」
ジェルボールペン『サラサ』
ペンの書き味はインクと内部機構の設計で決まると言われており、石川社長は「当社では創業以来、ペンの生命線ともいうべきこの2つの要素をゼロから自社で開発・製造することにこだわってきました」と自負を語る。
圧倒的スムーズな書き心地も、情緒に響くカラー展開も、優れた製造技術をベースに高付加価値を追求して実現したもの。筆記具に実用品を超えたバリューが求められるようになった今、 MADE IN JAPANのものづくり精神はますます同社の強みとなっていきそうだ。
堅実だが「一歩間違えると硬直化してしまう」業界、デジタル時代だからこその挑戦
センサーを搭載した『T-pen』
そのテーマとなっているのが「デジタルとアナログの融合」だ。
同社では2016年より「カク」の価値や可能性を広げる実証実験を重ねており、その成果としてセンサーを搭載した筆記具『T-pen』を開発。手を動かして「カク」という動作を通してさまざまなフィジカルデータが取得できることから、「医療やヘルスケアでも活用を目指したい」と期待する。
さらに2025年には、この『T-pen』を活用して紙にも仮想空間にも文字やイラストを「カク」ことができるリアルタイム3Dビジュアル生成プラットフォーム『kaku lab.』(カクラボ)を発表。アナログ的な「カク」という動作とデジタル技術を組み合わせた技術を活用し、教育やエンタメ、クリエイティブなど多彩な分野とコラボレーションしたい考えだ。
ワークショップ『kakuwaku.プロジェクト』
「デジタルの普及は、たしかに筆記具の存在価値を変えました。しかし私は、デジタルとアナログが相反するとは思いません。むしろ互いに補完し合う関係にあるのが、理想的だと考えています。これからもアナログの筆記具の価値を追求しつつ、デジタルにも果敢に挑むことで、『カク』ことの提供価値を世界にお届けする。それが当社が目指す筆記具メーカーとしての在り方です」
「文具業界は景気に左右されにくい一方で、スローで堅実。ゼブラも長年の信頼はいただいていますが、ブランドイメージは真面目、実用的といったところでしょうか。これは良さでもありつつ、一歩間違えると硬直化してしまう恐れもありました。私たち自身、時間をかけてでも日々挑戦し、アップデートしていかなければと考えています」
「カクを拡張する」を合言葉に、手書きのさらなる可能性に挑む44歳の若きトップの手腕に注目したい。
■kaku lab.イメージ動画(外部サイト)
■kakuwaku.プロジェクト(外部サイト)
(写真:田中達晃/Pash 文:児玉澄子)