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アルコール分“0.00%のお酒”の価値とは? ノンアル構想に50億円投資したサントリーの矜持「文化継承にも必要な活動」
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サントリーから発売されているノンアルコール飲料
「前向きな選択肢のひとつになってきている」 “我慢”から“積極的選択”へと転換
そんな中、サントリーは濃い飲みごたえを打ち出した『ザ・ベゼルズ』、そして飲食店向けに多彩なノンアルサワーの提供を可能にする『ZEROPPA(ゼロッパ)』を投入。国内ビール大手各社がそれぞれ新商品を打ち出したことで、“我慢”から“積極的選択”へとノンアルコール飲料の大きな転換が提示されたといえるだろう。
サントリーはノンアルコール飲料を“0.00%のお酒”として位置づけている。実はこれまではノンアルコール飲料の中にも、0.5%など微量のアルコールが入っているものもあったというが、飲酒運転の厳罰化が転機になったという。
「2000年以降、飲酒運転の罰則強化や酒税法が変わったタイミングでお酒の代替としての需要が急速に高まり、そこからビールテイストのさまざまな商品が各社から出てきました。その後、ワインテイストやサワーテイストなどにも広がり、ノンアル市場は拡大していきました」(サントリー株式会社 未来開発部長 兼 ノンアル部長 福本匡志氏)
昔は周囲に合わせて、多少無理をしてでもお酒を飲むような風潮が強かった部分もある。今は「個々の体質や気分を尊重する時代になった」と福本氏。
「たとえお酒を飲まなくても、気分を整えたりスイッチを切り替えたりするための飲み物として、ノンアルコール飲料は前向きな選択肢のひとつになってきていると感じます。日常生活でも、気分を切り替えたいけどお酒を飲めないというシーンも多々ある。勤務時間が終わって、気分を切り替えたいけれど、子どもの送り迎えがあったり、別の仕事をやらなければいけなかったり、晩酌の後もやることがあるという人は多いはず。だからこそ、ノンアルの選択肢を当たり前にしていくことが我々の使命です」
「アルコール自販機に、ひとつでも“ノンアル”があれば」存在を示すための各社協業
「例えば、ビジネスホテルの自販機には、清涼飲料とアルコールが並んでいますが、ノンアル飲料はない事が多い。選べる環境が整っていないんです。だから、まずは選択肢を増やして、ノンアルの存在を提示することが大事だと思っています」
アサヒの自販機にはアサヒのノンアル、サントリーの自販機にはサントリーのノンアルを入れるといった形でいい。それが“気づき”になり、ノンアルコール飲料全体の認知につながっていく。
「どの自販機にもノンアル飲料が並ぶようになれば、その場では買わなかったとしても、実際に売り場に行ったときに各社のノンアル商品に目がいくようになります。現状、自販機の1スロットをノンアルに変えるというのはなかなかできないことです。でも、それをやっていくことも取るべき選択肢の一つだと考えています」
濃い飲みごたえ…『オールフリー』とは“対極の味を目指す”新商品の中味開発
「既存のビールブランドをコピーしてノンアル商品を作るのでは、いつまでもお酒の代替のままで終わってしまいます。労力はかかりますが、独自のブランドを作ってこそ。『オールフリー』は“いつでも自由に飲める”という世界観を作ってきたブランドなんです」
『ザ・ベゼルズ』
「ノンアル離脱の大きな理由として、“薄い・物足りない”という声が多くありました。逆に、そこにチャンスがあると感じ、物足りなさを満たすために“濃さ”を打ち出しました。とにかく濃くて飲みごたえがある。『オールフリー』とは対極の味を目指して中味を作り込むことで、ビール好きが満足できる熟成の旨みを味わってほしいです」
飲食店向けノンアルコールベース『ZEROPPA』
「ノンアルコール飲料といえば、まだまだビールテイストしか置いていない飲食店がほとんどです。そもそも選択肢がない状態だと、ノンアルは選ばれないままになってしまいます。『ZEROPPA』という名前は伝わらなくてもいい。お店にあるソフトドリンクの種類の分だけ、ノンアルサワーの種類が増えれば、ノンアルコール飲料の選択肢を広げられるという想いがあります。
自分たちのブランドを訴求することだけに主眼を置くと、せっかくのこの成長市場が鈍化してしまう気がします。まず考えるべきは、選択肢を広げること。その後、お客様の生活シーンに取り入れてもらえるような環境作りができたら、そこから初めて勝負が始まると考えています」
市場を“業界全体で広げていく”段階、ノンアルが当たり前の世界観を作り上げる
「今はシェアを奪い合う段階ではなく、ノンアル市場を“業界全体で広げていく”段階だと思っています。それはサントリーだけの力ではできない。各社が協力というか、それぞれしっかりと展開していくことで、お客様が前向きに選べる環境づくりができると感じています」
選択肢を広げて、いつでも気軽にノンアルコール飲料が選べるような環境を作り上げる。同時に、単なるお酒の代替品にはならない、満足感のある本格的な味わいを追求していくことが、ノンアルコール飲料の今後の進むべき道であるのだろう。そして、さまざまなシーンに自然に取り入れられるようになっていくことが、最終目標ともいえる。
「酒類の市場、清涼飲料の市場、そしてノンアルコールの市場という、この3つの選択肢が当たり前という世界観を作っていきたいと思っています。ノンアルコール市場を拡大させることは、“0.00%のお酒”として酒類の文化継承にも必要な活動だと感じています」