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【医師に聞く】「薄毛」に冷たい日本、薬や生活習慣改善で“治る”ものではない…20代も増加するAGA治療の今
「20代の約10%はAGA」という統計も、20代〜30代の受診が増加
とはいえ、「おじさんの代名詞」と捉えられてきたように、以前は薄毛に悩む人は中高年男性であり、人知れず育毛剤を買ってこっそり…というイメージが強かった。だが現在、その様相は変わり、「AGA治療を行う20代男性が増えている」という。
「一般的には、AGA治療というと40〜50代の方が対象に思われますが、実際に当院を受診される方で多いのは20代と30代。ついで、40代と50代となっています。『20代の約10%はAGA』【※】という統計もありますが、私の体感としては、『どこがAGA?』と感じるくらいの方が、とても気にされている印象です。とくに20代の方はセンシティブですね」
【※】板見 智:日本人成人男性における毛髪(男性型脱毛)に関する意識調査.日本医事新報:第 4209号,27―29, 2004
薄毛人口は減った? 男性の美意識の変化、コロナ禍でのオンライン診療規制緩和も影響
「ほかに、コロナ禍でオンライン診療規制が緩和されたことも大きいでしょう。AGA治療という特性上、対面が恥ずかしい人でもオンラインなら敷居が下がりますし、手軽に診断を受けられます。また、以前は治療費が高額でしたが、価格競争が起きたことで低額化。月に一度美容院でカットする、または女性が全身脱毛に通うくらいの感覚で受診できるようになったのも、20代が増加した理由かもしれません」
そうして若いうちから治療を始める人が増えたせいか、「日本の薄毛人口が減った」と言われることもある。
「薄毛が減ったと言って良いかはわかりませんが、治療する人が増えて薄毛の対策ができるようになった、とは言えるでしょう」
AGAは薬で「治る」ものではない、飲むのをやめた時点から進行
「これは実際、そのとおりです。世の中には『髪のためにストレスをためず、睡眠をしっかりとって』『海藻類を食べるのがいい』といった都市伝説は多いですが、AGAは生活習慣の改善などでは治すのは難しいんです。と言いますか、他の病気と違い、AGAは薬で『治る』ものではないのです。処方薬はあくまで、男性ホルモンを活性型に変換する酵素をブロックするもの。AGAの進行を遅らせることはできますが、飲むのをやめればブロックされなくなり、その時点から進行します」
「治る」という概念を持つのがそもそもの間違いであれば、薬を飲み続けるしかないのは理解できる。では、市販されている育毛剤は数々あるが、それではダメなのか。
「ミノキシジルという成分が入っていれば、効果は期待できます。ただ、ミノキシジルを5%含有しているものでも、1万円前後はします。それ以上の濃度になると、AGAクリニックなどで処方される薬しかない。市販薬でも高価なため、実際はクリニックで診断してもらい、自分に合った薬を処方してもらった方が費用対効果は高いと思います」