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TikTok“無言配信”第一人者 夏絵ココが歌手デビュー「0から1を作る快感」
「無言配信」は配信で配信の疲れを癒やすことを具現化
もともとしゃべるのは大好きで楽しいけど、少し疲れる部分もあったりして、TikTokライブを見ていたときに「しゃべらない配信ってできないものかな?」みたいなことを考えて。配信で配信の疲れを癒やすことを具現化したのが「無言配信」だったんです。
――「無言配信」はアニメやゲームかのような作り込まれた世界観が印象的ですが、それはどのように構築されていったのでしょうか。
やるんだったら作り込みたいという性分が強くて、フィルターと照明との折り合いをつけて「このフィルターだったらこの照明がいいな。じゃあこういう格好にしよう」と細かく考えていきました。
ただ、最初は私服のダボダボッとしたパーカーを着て、夏絵ココが座っているところを覗いているみたいな配信にしたいなと思っていたんです。その段階から“作り込むぞ”と決めていたので基礎はできていたんですけど、コスプレ配信をしたときに背景がシンプルすぎると面白くなかったので、いろんなものを足したり引いたりみたいなことを繰り返してバランスを取っていきました。
あの動きは最初からやっていましたね。なんでそういう動きをしたのかは、実は夏絵ココにもあんまりわかっていないんです。でもみんなの反応を見ながらどんどんブラッシュアップされていく、「思考実験」するのが夏絵ココの配信なので、コメントを見てちょっとずつ体が揺れてきたんだと思うんです(笑)。
そしたら誰かが「ロボットみたい」「AIみたい」だとか、「ゲームのキャラクター選択みたい」という言葉が出てきて、「もっとそう見えるふうにやってみようかな」「こうしたらどうなるんだろう」というのをちょっとずつ試して定着していきました。
考察に近いくらい、いろいろ考えてくれていますね。夏絵ココは自分勝手にしているのが好きだし、相手が自分勝手にしているのも好きなので、いい言葉だろうが悪い言葉だろうが、その反応は全部面白いと思って見ているんです。
だからこそ、時々視聴者さんのことを裏切るようなこともあって。それこそ「夏絵ココにとっていいことなのか」という考えを、さておいたような行動をとってしまって、そのひとつが無加工だったんです。無加工をさらすのは夏絵ココにとっては実験だけど、みんなにとっては裏切りの可能性も十分あって、でも「みんなはどんな反応するの?」とだけ考えていたんです。
案の定、最高の反応をしてくれて「無加工だって関係ないじゃん」という人もいれば、「全然違うからイヤだ」という人もいて。そういう反応を「予想どおりだ!」と楽しく見ていました。
「これは一体何?」夏絵ココは“間(はざま)”の存在
基本的に人間は“間(はざま)”でできていて、その“間”に魅力を感じているんじゃないかなと日頃から思っていて。人間関係でも、例えば「今ある言葉で表現すると親友になるけど、実際この関係には名前を付けられないよね」みたいなことがあるじゃないですか。
夏絵ココは見た目をキレイにしていて、フィルターもかかっていてメイクもされていて、人間なのか人間じゃないのかという“間”の存在で、「これは一体何?」という名前が付けられないものだから魅力を感じるのかなと思っています。
――表現する上でのインスピレーションの源はありますか?
美術館を巡って彫刻や絵画を見るのが好きで、あとはサンローランさんやシャネルさんなど、ハイブランドの展覧会を観るのも刺激になっていると思います。ファッションやインテリア、絵画からインスピレーションをいっぱいもらっていますね。
そうですね。自分を立体や平面で捉えてみたりしながら、その日その日のテーマに合わせて作っている感じです。なので自分にとっては絵画も彫刻も、ハイブランドのひとつひとつこだわり抜いたデザインも、ブランドの理念も全部が必要なものなんです。
その人がなんでその絵を描いたのか、どうしてこの色をテーマにしたかったのかに興味があるので、そこは掘りますね。自分がモノ作りをするときにそれが抜けていると空っぽな作品になりがちだと思うし、結局表面的にいいだけのものなら私じゃなくてもいいんですよね。私の理念が入るから私じゃないといけないのであって。そういう私だけにしかない感覚というのをすごく大事にしているので、観る上でも重要視しています。
――創作活動をする上での理念を言葉にするなら、どういったことでしょうか。
それもやっぱり“間”ですかね。そして、バイアス(偏見、先入観などの偏り)と戦っていくこともテーマであると思っています。バイアスというものは全部が全部、悪いものじゃないと思うから、「今は世界的に、そこにシビアすぎるんじゃない?もっと間があるよね」ということが理念に近いのかなと思います。
数字や性別とか目に見えるものへの偏見に悩まされて、「イヤすぎてしょうがない!」と思っていたことがあったのですが、「みんなの反応って面白いな」と思うようになったんですよね。その考えが今の活動につながっているんです。