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ORICON NEWS
小栗旬 SPECIAL INTERVIEW 時代に流されることなく自分の意志を持って
時代が人に与える影響を感じざるを得ない
小栗少年Hが(物語がすすむに連れて)どんどん大人になっていく、その表情がとてもよかったです。
──そんな少年Hの成長から何を感じましたか?
小栗映画のなかの少年Hと僕らとでは、置かれている現実がまったく異なるので比べることはできないけれど、戦争について思うことはあります。映画でもHが言っていること──「この戦争は一体何だったんだ……」と。戦争を経てきた方たちに対しての言葉としては正しくないのかもしれないけれど、悲しいなとも思う。でも、僕らはその戦争があったからこそこうやっていま生きているわけで、そういう歴史のうえに自分たちは立っている。その歴史から目をそむけるのはよくない。こういうことがあっていまの日本があるのだと、そのルーツを知らないのなら知ってほしいし、この映画を通じて自分なりの意見を持ってもらえたら嬉しいですね。
──たしかに。そんな考えさせられる作品で小栗さんが演じるのは、うどん屋の兄ちゃん役。どんなキャラクターですか?
小栗少年Hにかなり大きな影響を与える人間でもあって、さまざまな人と人とのつながりが人格を作っていくんだなと感じた役でした。時代が違っていれば彼は(周りから)おかしなことをやっているとは思われなかっただろうし、戦争が起きなければ警察に捕えられることもなかった。時代がどれだけ人に影響を与えるのかを感じざるを得ないキャラクターでした。
──現場に入る前に準備したことはどんなことですか?
小栗藤原義江さんの曲を聴いたり(劇中で流れるのはヴェルディの「リゴレット」)、思想犯がどうやって生まれていったのかというのは勉強していきました。共産主義があの時代のなかでどう捉えられていたかも。彼らとしては悪いことをしているつもりはないわけで。足並みを揃えない人たちは逮捕されてしまう、なかなかしんどい出来事だなと思いましたね。
他人同士では出ない何かが出ていると思う
小栗6つ離れた兄がいるので、兄に対する憧れはありました。自分よりもいろいろなことを知っているし、格好良く見えたんですよね。
──小栗さん自身はどんな少年でしたか?
小栗どちらかというと活発な子どもだったと思います。小学生の頃は団地に住んでいて、その空き地で毎日誰かが野球をやっていたので僕も夢中になって、プロ野球選手になりたいと言っていたこともあります。かと思えば、料理人になりたいと言っていた頃もあったり(笑)、夢はいろいろありましたね。
──少年Hの姿を見て、自分の幼いころを思い返す人もいるでしょうね。少年Hと父親との関係も感動的でした。水谷豊さんの演じた父親役についてどんな感想を持ちましたか?
小栗少年Hの父親、妹尾盛夫は偉大な父親ですよね。周りや時代に流されることなく自分の意志を持って、その時その時に対応して生きている気がする。すごく心の強い人だったんだなと思います。僕も将来的には父親になりたいと思うけれど、ああなりたい、こうなりたいとか具体的な理想像はないんです。ただ、自分の父親が立派な人だと思っているし、(僕らの)育て方はなかなかすばらしかったと思っています。
──どんなお父さんなんですか?
小栗あれはダメこれはダメとは言わない父親だったよね、と最近兄弟で話していました。今では友人みたいな関係ですね。
──ということは、反抗期といったものはなかった?
小栗それはありました(笑)。たぶん、反抗期と言えるのは高校生のとき。父親は(仕事で)ほとんど家にいなかったので、母親にあたっていた時期はあります。
──そうなんですね。また、今回は水谷さんと伊藤蘭さん、本当の夫婦が映画でも夫婦役を演じています。そのことについてはどんな感想を?
小栗いいことだなと思いました。夫婦だけでなくほんとの恋人同士が恋人の役を演じることにも言えることだと思うけれど、やっぱり他人同士では出ない何かが出ていると思うんですよね。
──最後にプライベートな質問をひとつ。最近はまっていること、興味を持っていることは何ですか?
小栗最近は少し時間があるので、家でずーっと漫画を読んでいます(笑)。『SENGOKU』を読み終わったので次はなにを読もうか探しているところ。連載中のものだとうっかり最新号を買い忘れたり、その逆ですでに買っているのにまだ買っていないと思って2冊買ってがっかりすることがあるので、完結しているもの(シリーズ)を大人買いして読み切るのがベストですね(笑)。
(文:新谷里映/撮り下ろし写真:鈴木一なり)
映画情報
少年H
昭和初期・神戸。洋服の仕立屋を営み、柔軟な考えを持ち、家族を温かく見守る父親・盛夫。大きな愛で家族を包む母親・敏子。好奇心旺盛に育つHこと肇。そして妹の好子。幸せに暮らしていた4人だったが、やがて戦争がはじまり、軍事統制も厳しさを増し、自由な発言をしづらい時代となっていくなか、盛夫は、周囲に翻弄されることなく、「おかしい」「なんで?」と聞くHに、しっかりと現実を見ることを教え育てる。
中学校に入ったHを待っていたのは、軍事教練ばかりが続く毎日。盛夫は消防署に勤めるようになり、敏子は隣組の班長に、そして好子は田舎に疎開することになるなど、それぞれの日常が激変してゆく。ついに神戸も大空襲に襲われ、終戦を迎えたとき、街は見渡す限り焼け野原になっていた。その中で、神戸も日本も新しく生まれ変わろうとする。
監督:西谷弘
出演者:水谷豊伊藤蘭 吉岡竜輝 花田優里音 小栗旬
【公式サイト】
2013年8月10日(土)より全国東宝系で公開
(C)2013「少年H」製作委員会
関連リンク
・映画『少年H』公式サイト