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「ボクサーパンツ」なぜ主流に? 親や妻に「買ってもらう」“代理購買”減少も背景に…90年代ブレイクから現在まで支持される理由

  • 超軽量化された“進化系”ボクサーパンツ(『BODY WILD』シリーズ『EZX』より/画像はグンゼ提供)

    超軽量化された“進化系”ボクサーパンツ(『BODY WILD』シリーズ『EZX』より/画像はグンゼ提供)

 かつて巷では、男性用の下着について、“ボクサーパンツ派”、“トランクス派”、“白ブリーフ派”という派閥のようなものがあった。だが現在、店頭の多くを占めているのは、「ボクサーパンツ=ボクサーブリーフ」である。90年代に発売された『カルバン・クライン』の商品が爆発的にヒットし、その後、“見せパン”なるファッションも登場。瞬く間に地位を確立していった「ボクサーパンツ」は、ブリーフとトランクスの“いいとこ取り”のようなアイテムだ。はたして今後、これを超える新たなスタイルは登場するのだろうか。男性同士では話題に昇りにくい、「男性用アンダーウェア」の歴史や変遷、トレンドについてレポートする。

日本の“男性用下着”にまで影響を及ぼした映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』

 80年代以降から現在までの男性下着のトレンドは、白ブリーフからトランクス、そしてボクサーパンツへと変貌してきた。それ以前で言えば、「ふんどし」や、1945年頃のトランクスに形が似た「ステテコ」「さるまた」が主流だろう。白ブリーフの登場は1955年頃になる。

 戦後の流行の変化は、基本的にはアメリカから入ってきたものに準じている。元々、布帛製のトランクスもあったが、時代は白ブリーフ。それが染色技術の向上により、「カラーブリーフ」が人気を集め、これらの技術がトランクスにも活用されていった。さらに、いわゆるキャラクターなどをあしらった“柄物”トランクスも登場し、トランクスは急激に“オシャレ”と取られるように。トランクスに流行が切り替わっていった。

 そして1985年。日本にとって画期的な出来事が起こる。名作映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の大ヒットだ。作中では、マイケル・J・フォックスが、1992年に発表された『カルバン・クライン』のボクサーブリーフを穿いて登場。ローライズのジーンズから覗くそのファッションが、「カッコいい」とされるようになった。

 その『カルバン・クライン』のライセンスを日本で取得し、販売していたのが、昨年創業125年を迎えたグンゼである。

 「ボクサーブリーフは、トランクスのデザイン性にブリーフと同じ収縮性のあるニット素材で作られた、いわゆる“いいとこ取り”の商品。映画のヒットをきっかけに、飛躍的に商品が広まりました」(グンゼ/アパレルカンパニー インナーウエア事業本部MD本部メンズ&キッズMD部の武安秀俊さん、以下同)

 そしてその数年後に、いわゆる“見せパン”ブームも到来する。この理由については、「ファッションは循環するもの。今、ルーズなファッションが流行っているように、当時ルーズさがオシャレだったため、そういった着方が自然発生的に流行った」という。

 そして1998年。グンゼは、日本発ボクサーパンツの開発に着手。新ブランドとして、『BODY WILD』を誕生させた。

 「海外から入ってきたものは、体格が大きく、筋骨隆々の西洋人向けであり、日本人向けではなかったんです。そこでグンゼでは、日本人の体型にきっちりと合わせた新ブランドを起ち上げようと奮起したわけです」

男性下着を穿いた篠原涼子CMの衝撃も後押し、日本の四季もボクサーパンツ定着の要因?

 さらに同社は、ボクサーパンツという新しいアイテムを市場に浸透させるため、『BODY WILD』の広告に俳優の篠原涼子を起用。“女性が男性下着を穿く”というインパクトをもって、大きな話題を作ることに成功した。今思えば、ジェンダーレスの現代、未来を先取りしたとも言えるこの広告。現在は、みちょぱが、その広告塔を引き継いでいる。

『BODY WILD』イメージキャラクターを務めるみちょぱ


 ちなみに今の支持率を聞いてみると、「ボクサーブリーフが43%、トランクスが28%、ニットトランクスが15%、ブリーフが14%の割合」と、やはりボクサーパンツがトップとのこと(同社調査による)。少し前では、中高年男性はトランクス、若者〜40代はボクサーパンツ、低学年はブリーフというイメージがあった人もいるだろう。ところで、男児がブリーフからトランクスに変わるタイミングには何があるのか。

 「元々、幼稚園児では衛生面などの問題で白ブリーフを推奨されていた時代があります。少年がそこからトランクスへ移行するのは、『父親と同じ白ブリーフは格好悪い』という息子の反抗期のような心理。またはトランクスが流行していく中で、友だちの間で1人だけ白ブリーフではいたくない、そういった想いが当時はあったのだと考えられます」

 こうした通過儀礼も、今やボクサーパンツに取って代わられている。その理由には、“日本人ゆえ”のこだわりも裏にありそうだ。

 「海外の方からは、アンダーウェア1つにそこまでこだわるのか、と驚きの声が挙がることもあります。例えば、腰ゴムでは、これでもかというほど伸縮性の耐久チェックを行い、限界点まで強度を高めています。また、穿き心地については、日本の独特な四季も関係しています。これだけ湿気が多く、四季がハッキリしている国は稀であるため、通気性や締め付けによるかゆみやあせもの低減など、季節ごとに適したアンダーウェアを開発したりしています」

トレンドは縫い目のない“縫製なし”、立体成型も…進化を続ける男性下着

 さらにボクサーパンツを主に着用する人の声を聞くと、「腰回りや股下あたりの締め付けが嫌」といった意見がかなり多かったという。そこで同社は、腰ゴムのない『AIRZ』を2018年に発表した。

 これまでのボクサーパンツは、座ると腹部や裾がややきつくなることも。しかし『AIRZ』は、素材を“切りっぱなし”にすることで、腰はもちろん裾にも折り返しがなくなり、さらに当たって不快に感じる縫い目も少なくすることに成功している。この技術は、女性用アンダーウェアの技術から来たものという。

 ちなみに近年のボクサーパンツといえば、“縫製なし”の商品が浸透している様子だ。布地を縫製せずに商品化したもので、例えばグンゼでは2019年に完全無縫製の『AIRZ SEAMOFF』が発売されている。なぜ今、“縫製なし”なのかというと、「ストレスフリーで快適性が高い商品を追求していた結果です」という。

 なお、最近のニーズとしては、デザイン性を重視する声も多いという。そのため、新開発のクールなデザインの腰ゴムを採用し、製品全体で大幅な軽量化を行っている『EZX』も売れ筋になっている。また消費傾向としては、ECが浸透し、購入場所も多様化してきたこともあり、母親や妻に「買ってもらう」代理購買も減少傾向。自身の好みで下着を選択する男性が増えているようだ。

 細かな進化を遂げているボクサーパンツだが、ブリーフやトランクスからの変化とはまた異なる大きな変革は見られない様子だ。とはいえ、多様化のこの時代。最近はジェンダーレスファッションも注目が集まっており、レースを施した男性用下着が“完売続出”という話題もあった。ファストファッションや競合ひしめくアパレル業界で、進化が止まらない男性用下着の新アイテムにも期待したい。

(取材・文/衣輪晋一)

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