ORICON NEWS

新たなアンセムの誕生も…5年ぶりアルバム『暁』から紐解くポルノグラフィティの現在地

 ポルノグラフィティが、約5年ぶりとなるアルバム『暁』を8月3日に発売した。前作『BUTTERFLY EFFECT』(2017年10月)以降にリリースされたシングルを始め、新曲9曲を収録。同作は、この5年間に起きた出来事、そのなかでの岡野昭仁(Vo)と新藤晴一(G)が得た経験、そして“この先も音楽を鳴らし続ける”という強い意思が感じられるアルバムになったといえるだろう。

“ライブアーティスト”としての存在感を示してきた5年間

ポルノグラフィティ

 前作アルバム以降、ポルノグラフィティは精力的にライブツアーを継続してきた。まずはアルバム『BUTTEFLY EFFECT』を引っ提げた全国ホールツアー(2017年11月〜2018年4月)を開催。さらに“UNFADED”(色のさめない、新鮮さを失わない)というタイトルを掲げたアリーナツアーを行い(2018年12月〜2019年3月)、2019年9月7月、8日には20周年の東京ドーム公演『20th Anniversary Special LIVE NIPPONロマンスポルノ’19〜神vs神〜』を敢行。しっかりとステージに軸足を置きながら、ライブアーティストとしての存在感を強めてきたというわけだ。

 しかし、2020年春から広がった新型コロナウイルス感染症の拡大によって、ライブ活動は停止。世界中の音楽家と同様、ポルノグラフィティも停滞を余儀なくされた。そんな閉塞感を打ち破るように開催されたのが、2020年12月4日のハイブリッド型ライブ『CYBERロマンスポルノ’20 REUNION』。翌年8月に『ポルノグラフィティ 2021 “新始動”』を宣言し、シングル「テーマソング」とともに本格的なリブートを果たした。

 昨年行われた全国ツアー『17thライヴサーキット“続・ポルノグラフィティ”』では、「サウダージ」「メリッサ」「ハネウマライダー」などの代表曲に加え、新曲もたっぷり披露。ライブのオープニングを飾った「IT’S A NEW ERA」(シングル「テーマソング」収録)、「また皆と会ったときに、この次の曲を一緒に歌おうよ。一緒に今度こそ声出して、ひとつになれるように歌おう」(岡野)というMCに導かれた「テーマソング」、さらに“最新の音と言葉をいち早く届けたい”という思いで演奏された「メビウス」「ナンバー」といった楽曲は、“現在進行形のポルノグラフィティ”を強烈に印象づけた。

音楽に対する真摯な姿勢と前向きなメッセージが色濃く出た5年ぶりのアルバム

  • アルバム『暁』初回限定盤

    アルバム『暁』初回限定盤

 “20周年を飾る東京ドーム公演”を始めとする最高な出来事、そして、パンデミックという最悪な状態を経験し、アーティストとしても人間としてもさらに深みを増したであろう岡野と新藤。約5年ぶりのニューアルバム『暁』には、音楽に対する真摯な姿勢とオーディエンスに向けた前向きなメッセージが強く刻まれている。そのことを端的に示しているのが、アルバムの1曲目に収められたタイトルトラック「暁」(作詞:新藤晴一/作曲:岡野昭仁・tasuku)だ。

 荘厳な弦の響きから始り、ヘビィな音圧としなやかなスピード感を共存させたバンドサウンドへと移行。ドラマティックな展開を見せるボーカルライン、美しく歪んだギターが共鳴するロックナンバー「暁」の背景にあるのはもちろん、2020年以降のリアルな世界を表している。未曾有の事態に直面した人々は本音を隠さないようになり、それぞれの価値観、世界観によって分断が進んでしまった。そんな現状から眼を背けることなく、<弱き者よ どれほど待っている? 暁>というフレーズを打ち立てる同曲は、いまを生きる全ての人に大きなインパクトを与えるはずだ。本作を象徴すると同時に、ポルノグラフィティの新たなアンセムと呼ぶべき楽曲といえるだろう。

 また、「悪霊少女」(作詞:新藤晴一 作曲:新藤晴一)も強烈なインパクトを放っている。ダークゴシック的な雰囲気を色濃く反映した音像は、明らかにポルノグラフィティの新機軸。神父、十字架、暗黒の館といったフレーズが並ぶ歌詞はまるでホラームービーだが、その根底にあるのは、初めて恋愛の入り口に立った少女の感情。新藤の創造力が炸裂するユニークで刺激的なロックナンバーだ。

多くの音楽ファンに前向きなパワーを与える珠玉のアルバムが完成

  • アルバム『暁』通常盤

    アルバム『暁』通常盤

 筆者の個人的な推しは、「バトロワ・ゲームズ」(作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁・トオミヨウ)。サウンドの基調は、ファンク、ネオソウル系のグルーヴ。10年代後半から始まった世界的なトレンドを掴みつつ、歌謡系のノスタルジックなメロディーライン、生楽器の響きとプログラミングされた音を融合させ、ポルノグラフィティ流のシティポップと呼ぶべき楽曲に仕上げている。SNSで繰り広げられるバトルを想起させる、現代的なエンタテインメント性に満ちたリリックも秀逸だ。

 そしてもう1曲、「証言」(作詞:新藤晴一/作曲:岡野昭仁)にも触れておきたい。<悪魔が黒い翼 羽ばたかせ飛び去った>という冒頭のフレーズからグッと引き込まれる同曲は、エモーショナルに尖ったギターを軸にしたミディアム・ロックチューン。エキゾチズムを滲ませる旋律とともに映し出されるのは、大切なものを失いかけている“私”の姿。過酷な運命に見舞われたとしても、決して奪われないものが自分にはあるという思いを刻んだ歌、そして、楽曲の世界観を増幅させながら、まるで祈りのように響くギターソロにも強く心を揺さぶられる。寓話的なイメージと生々しい現実感を同時に表現することで、全てのリスナーが自分のこととして受け取れる構成も素晴らしい。

 9月22日からは、本作を引っ提げた全国ツアー『18thライヴサーキット“暁”』がスタートする(ファイナルは2023年1月23日、24日の東京・日本武道館公演)。常に現実と向き合い、音楽の力によって現状を打破してきたポルノグラフィティ。アルバム『暁』が放つ未来を照らす光はここから、多くの音楽ファンに前向きなパワーを与えてくれるはずだ。

(文/森朋之)
◆ポルノグラフィティ『暁』購入はこちら(外部サイト)
◆ポルノグラフィティオフィシャルサイトはこちら(外部サイト)
Sponsored by Sony Music Labels Inc.

あなたにおすすめの記事

メニューを閉じる

 を検索