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びっくりドンキーが“モーニング”に注力する理由 「破格ハンバーグセット」で切り開いたファミレスの新境地
コロナ禍で“モーニング”に追い風、深夜客激減で苦境続くファミレス業界の兆しとなるか
しかし、働き方改革やコロナ禍の影響で、昨今の人々のライフスタイルは夜型から朝型へシフト。2020年から、ガストやジョナサン、サイゼリヤなど、大手ファミリーレストランも相次いで深夜営業の廃止に。ランチタイムや宅配サービスの拡充に舵を切る企業も多い中、びっくりドンキーは市場が拡大しつつあるモーニングに着目した。
「コロナ禍で深夜の利用が大きく減少しましたが、それ以前の15年ほど前からインターネットゲームなどが普及し、人々の夜の遊び方が変化したことによって、深夜帯の来客数は減少が続いていました。さらに、深夜帯の人員確保が難しくなっていた側面もあり、11時〜深夜2時が標準だった営業時間も8時〜0時(※)に早め、モーニングに注力していく流れとなりました」(びっくりドンキー・商品企画担当・河村征人氏/以下同)
(※)政府や自治体の要請及び各商業施設の運営方針等により、一部店舗では営業時間の短縮及び酒類の販売を休止。
5年前は客数比率が1%だったモーニングだが、昨年2.5%、今期は4.5%にまで成長。もちろん店舗拡大の影響もあるが、コメダ珈琲の全国展開などにより、市場全体で見ても、ここ5年で外食モーニング需要は110%成長していると言われている。
とは言え、ランチ、ディナーが主力であることには変わりない。リニューアル後のモーニングメニューは店舗にもよるが、「プレーントーストセット」(トースト、ゆで卵、ドリンク)が330円(※)、「ミニマムバーグディッシュ」(100gハンバーグ、ご飯、サラダ) が520円 と、その安さがSNS上でも反響を呼んでいる。モーニングはランチ・ディナーよりも利益率が2~3%低く、他の時間帯の売上があるからこそ、低価格で上質なモーニングメニューの提供が可能となっているのだ。
(※)価格は税込。価格・取扱いメニューは地域・店舗によって異なる。
“深夜の喋り場”から“お1人様空間”へ… おかわり自由のコーヒーはこだわり自家焙煎
「お1人でいらっしゃるお客様はモーニング独特の客層なので、びっくりドンキーって1人で行ってもいい店なんだなと思ってくださると嬉しいですね。さらに、モーニングのみおかわり自由なコーヒーは、差別化を図るべくしっかり豆から選び、自社工場で自家焙煎してこだわってご提供しておりますので、コーヒーだけ飲みに来るという利用方法も広がっていくといいなと思っています」
長引くコロナ禍で外食業界全体の苦境が続く中、モーニングに新たな活路を見出したびっくりドンキー。今後も世の中のニーズを捉えた商品を提供していくことで、お客様との結びつきを強めていきたいと河村氏は語る。
ファミリーレストランは近隣の利用者が大半。外出自粛により代わり映えのない日々になってしまいがちな今、遠くにお出かけや豪華なご馳走は難しくても、朝食だけでもいつもと違った場所で非日常体験を味わうという選択肢は今後も広まっていくかもしれない。
(取材・文=鈴木ゆかり)