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大正14年創刊『小学一年生』編集長に聞く、100年を経て日本の“小学生”はどう変わった?

 1922年から順次創刊し、1925年には『小学一年生』から『小学六年生』まで全てが揃った小学館の学習雑誌。漫画連載、学習教材、付録などが収録され、国民的人気コンテンツ『ドラえもん』『とっとこハム太郎』なども輩出。1970年代には、6誌合計500万部を超える発行部数を記録した。大正から令和にかけて小学生の嗜好ニーズを徹底的にリサーチしてきた同社に、この100年に渡る日本の小学生の変化を聞いた。また、ネット時代も発刊続ける学習雑誌への想いとは?

娯楽を制限された戦時中や戦後も… 100年変わらず、理念受け継がれてきた学年誌

 小学館の学年誌が生まれたのは、遡ること100年前の大正11年。私立の学校が多数設立され、世の受験熱・学習熱が高まっていた時代であった。それゆえ、読者対象は中学受験を控える子どもたちであり、まず発刊されたのは『小学五年生』『小学六年生』。そこから下の学年のものも出したほうがいいのでは、との声が社内で上がり、『小学四年生』『せうがく三年生』が発刊。大正14年には、『セウガク二年生』とともに、現在も唯一刊行されている『小学一年生』が『セウガク一年生』として産声を上げた。
「創業者は、児童に興味をもたせる編集で、読むこと書くこと、新しく作り出す力を養い、自ら学ぶことの楽しさを身に着けてもらいたいという信念のもと、発刊を考えたそうです。向上心につながる記事内容、混乱させるような情報を廃して正直に作ること、楽しく読んでいることが自然と学習につながるよう制作することなどがスローガンとして掲げられていました」(『小学一年生』『小学8年生』編集長・齋藤慎氏/以下同)

 学年別ではあるが、要は受験の心得や学習法、準備法。もちろん当時から学習ドリルなどもあったが、学年誌ではエンターテインメントを使用しながら学習の副読本となるような内容であることが重視されていた。現・編集長の齋藤氏はその歴史を学び、「自分たちが先輩に教わったことと全く同じであり、今でもその理念が受け継がれていると実感した。学年別学習雑誌の文化や倫理、道徳的な面など、100年間変わってないという事実に思わず鳥肌が立った」と明かす。

「もちろん時代によって流行りがありますので、見かけは変化しています。例えば、創刊時の表紙は子どもを描いた絵だった。戦時中や戦後は表現がかなり制限されたこともありました。60年代に入ると、オバケのQ太郎やパーマンなどの人気漫画キャラ、テレビが普及し始めると、芸能人やスポーツ選手が。2000年代にはロボットも登場しました。ですが編集方針や理念は、創刊時より変わらず現代に至っているわけです」

「漫画を読むとバカになる」通説破りにも一助? 学習雑誌として“教科書にはない学びを”

 子どもたちが喜び、驚き、楽しみながら、教科書では得られない学びや人生を送る上で有益となるようなコンテンツを作る。100年もの間、脈々と受け継がれてきたその理念のもと、漫画ブームが巻き起こった1960年代以降は、学年誌でも積極的に漫画を掲載してきた。

 学習雑誌に漫画が掲載されている──。幼い頃に「漫画を読むとバカになる」と大人から言われていた人は少なくないはずで、当時から保護者の反発もあったのではないかと予想できる。「当時の反応は正直分からないのですが、漫画というのは、子どもには楽しいものであることは間違いありません。新聞にも4コマ漫画が掲載されているように、学年誌も内容すべてが漫画ではない。“子どもが楽しいと感じるものは掲載する”考えであったことは、今も昔も変わりません」
 実は、『小学一年生』をはじめとした小学館の学年誌から生まれた人気漫画も多数存在する。その代表例が『ドラえもん』だ。同作は、御存知の通り現在に至るまで大人気のコンテンツとなり、ここから藤子不二雄の漫画をさらに見せるため、学習要素を減らし、エンタメ要素に特化した『月刊コロコロコミック』が誕生した。ほか、学年誌発の漫画には『いなかっぺ大将』や『名たんていカゲマン』、『あさりちゃん』など懐かしい名前が並ぶ。『とっとこハム太郎』も同誌群から生まれた。

 その時々で子どもたちが最も関心があるトピックやコンテンツを取り上げ、ベビーブームの恩恵を受けた1974年には歴代最高となる500万を超える発行部数を記録。しかし、その後はバブル崩壊、少子化、娯楽の多様化などの逆風を受け、発行部数は年々減少。
 さらに昨今はジェンダーギャップについての考え方、ネットやスマートフォン中心の生活であるなど、社会的に大きな転換期にある。これまでにも関東大震災や第二次世界大戦、高度成長期、バブル崩壊、東日本大震災など多くの節目はあったが、学年誌のあり方や小学生たちの学習能力や理解度、嗜好ニーズなど、この100年の間に変化はあったのか。

 齋藤氏の答えはNOだ。「確かにさまざまな変遷をたどりましたが、100年前から、基本的に小学生たちの瞳の奥にあるものは変わっていないと感じています。例えば、今はスマホやゲームなど遊び方が多様化していますが、それが50年前にあったら、当時の小学生もそれで遊んでいたはず。つまり、見た目では変わったように感じるが、根っこの部分では子どもたちが喜び驚く本質は100年間変わっていない。どんなに時代が変化しても、ドラえもんが広く愛される理由は、そういうことなんだろうと思います」

他学年誌は全滅、『小学一年生』のみ残す理由「ネット社会だからこそ光る原体験」

 今でも耳にする「ピッカピカの一年生♪」のCMが大ヒットするなど隆盛を極めた学年誌だったが、2017年の『小学二年生』休刊により、遂に残る学年誌は『小学一年生』のみとなった。他の学年誌が休刊されていったなか、なぜ『小学一年生』のみが残ったのか。

「幼稚園から小学校に上がるタイミングというのは、ある意味大人への入り口であり、自立への第一歩だと思うんです。つまり、親離れしていかなければならない時期。それまでが読み聞かせ期だったとすれば、小学生になったら自分自身で本を読まなければいけない。そういったフェーズが変わる瞬間の子どもたちには、後押しする雑誌が必要なんだと思っています。また、『小学二年生』の休刊後、小学2~6年生を対象とした『小学8年生』を発刊して、今に至ります。これからも小学生に学びと楽しさを伝えていきたいと思います」

 小学校でもオンライン授業が浸透しつつある今、小学生も紙よりネットに親しみ、雑誌よりもYouTubeが主流の時代だ。それ以外にも趣味や娯楽がますます多様化していく中、紙媒体を発信し続ける意義はどのように感じているのだろうか。
「別に紙が良いというわけでもないし、紙にこだわっているつもりもない。ですが、多様化し玉石混交の情報の中だと必要なものが埋もれる可能性があるし、正しく伝わらない可能性もある。ネットもLINEもSNSもすべて、文字がベースになっている。だからこそ、“正しい情報を活字から読み取る”という原体験が非常に大事な時代だと思うのです。そんな時代の中、学年誌は正しい情報を届けている。雑誌を通して、正しいもの、面白いものの匂いをきちんと嗅ぎ分けられる人に育ってほしいと思いますね」

 何か分からない事があった時、確かな人に聞くよりも、まずはネットで調べる時代だ。新型コロナウイルス感染拡大の際にも顕著だったが、社会に溢れる情報量は年々増えていく中、いかに正しい情報をかぎ分け、選び取れるかで人生を左右する場面も出てくるだろう。そんな時、ネットの文字の羅列だけに縛られず、活字や映像、より多くの情報源に触れてきた原体験が、1人1人の人生や社会に役立つ瞬間が訪れるかもしれない。
(取材・文=衣輪晋一)
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『小学一年生』4月号
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