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ハロプロレジェンドOG・鈴木愛理が選ぶ「愛してやまないハロプロ曲」5選 つんく♂楽曲の“独特な女の子像”が持つ魅力

この記事は、LINE初の総合エンタメメディア「Fanthology!」とオリコンNewSの共同企画です。
⇒この記事をオリジナルページで読む(1月31日掲載)

鈴木愛理

2002年に8歳で「ハロー!プロジェクト・キッズ オーディション」に合格した鈴木愛理さんは、2017年6月の℃-uteの解散までハロプロ歴15年。今なおソロ歌手として第一線で活動し、今年で芸能活動20周年を迎えます。「アイドルが憧れるアイドル」の異名を取り、そのパフォーマンスで多くのファンを魅了し続けている鈴木さんに、「愛してやまないハロプロ曲」5曲を選んでいただきました。「昔からずっと、つんく♂さんのダークめな曲が大好き」という鈴木さんが悩み抜いた末に選んだ5曲とは?

撮影:田中達晃(Pash) 取材・文:東海林その子

モーニング娘。ファンの少女がハロプロキッズになるまで

――鈴木さんは2002年6月、8歳で「ハロー!プロジェクト・キッズ オーディション」に合格され、今年で20周年を迎えます。まずは、ハロー!プロジェクト(以下、ハロプロ)に興味を持ったきっかけから教えていただけますか?
私はモーニング娘。さんを好きになったときはまだ、ハロプロはありませんでした。ハロプロができる瞬間を『ハロモニ。』(2000年4月〜2007年4月までテレビ東京系列で放送されていた番組『ハロー!モーニング。』)で見ていて、私自身も間もなくメンバーになったので、そこからどんどんグループが増えて、派生ユニットができてという過程をリアルタイムで見てきました。

最初はSPEEDさんやBoAさんといった歌って踊るアーティストが大好きで、SPEEDさんが解散するくらいのタイミングでモーニング娘。さんを好きになりました。ファンクラブにも入って、モーニング娘。さんの初めてのミュージカル『LOVEセンチュリー〜夢はみなけりゃ始まらない〜』で、最前センターを引き当てたんですよ! 最後のライブコーナーで、練習して振り付けを覚えていた『恋愛レボリューション21』が流れたとき、「きたー!」と思って、本家の目の前でめちゃくちゃ踊ったんです。

そしたら、矢口真里さんがしゃがんでくれて。いっぱいファンがいる中で、私に向かって手を振ってくれたんです! あの瞬間の光景が忘れられなくて、「私もああいうふうになりたい」と思いました。なので、私も小さい子を見るとしゃがんで手を振ってしまいます(笑)。
――ライブを見て踊れるくらい、聴き込んでいたんですね。
大好きでしたし、幼稚園の年中からアップフロントミュージックスクールに通っていて、ダンスレッスンの課題曲がモーニング娘。になることも多かったんです。(モーニング娘。の振付やダンス指導を担当していた)夏まゆみ先生がたまに来てくださったり、先生のアシスタントの方から教わったこともありました。なので、スクールで練習してきたことを発揮するしかないだろう!と思って、本家の前で踊りました(笑)。

――当時、ハロプロで推しはいましたか?
モーニング娘。さんが一番好きでしたけど、松浦亜弥さんも大好きでした。駄菓子屋さんとかで売っている100枚くらいがセットになった生写真を箱買いして(笑)。ファイリングもしていたので、実家に帰ると、当時のカードや生写真がめちゃくちゃたくさんあります(笑)。
――そこから自分がパフォーマンスする側になろうと思うまでには、どういった経緯があったのでしょうか。
ミュージックスクールに在籍できる期間は3年間と決まっていて、卒業する頃に小学生限定の「ハロー!プロジェクト・キッズ オーディション」があったんです。タイミングがちょうどよかったので、自分で受けたいと言いました。

――いつかステージに立ってみたいという気持ちはずっとあったのですか?
正直、その記憶はあんまりないんです。でも、今もそうなんですけど、ライブでステージに立つときは緊張せずに自分らしくいられるのに、例えば学校で何かを発表するとか、人前で何かを言うのはすごく苦手で、顔が真っ赤になっちゃうんです。だから“ステージに立ちたい”と心に秘めてはいたけど、人には言ってなかったと思うんですよね。

ZYX落選「初めてめちゃくちゃ悔しい思いを」

――お仕事としての自覚はどのあたりで芽生えたのでしょうか?
学生の頃はよく「お仕事と学校を両立してすごいですね」と言ってもらえたんですけど、小2から生活の中に仕事がある人生しか歩んだことがなくて。仕事の感覚ではないというか、当たり前に組み込まれているものだったんです。

ただ、幼稚園からミュージックスクールに通っていたこともあって、礼儀やあいさつ、上下関係を教えてもらっていたり、大人と接していたりで、今は静かにしなくちゃいけないんだとか、走り回ったら怒られるとか(笑)、そういうことは早いうちから認識していたと思います。

特にハロー!プロジェクト・キッズ(以下、キッズ)のときは先輩のバックダンサーにつける人数が決まっていて、争奪戦だったので、争うとか勝ち残らなきゃいけないという感覚も幼い頃から持っていました。「ZYX」(ジックス)という矢口さんがリーダーのグループができるときにキッズ15人全員がオーディションを受けて、そこで落ちたときに初めてめちゃくちゃ悔しい思いをしました。
でも同じタイミングで、「あぁ!」(田中れいなさん、夏焼雅さん、鈴木さんの3人組グループ)に受かったと報告を受けて、悔しいけどうれしいという複雑な気持ちになって。当時のインタビューで「悔しかったこと:ZYXになれなかったこと、うれしかったこと:あぁ!になれたこと」と言っているのを何年か後に見て、我ながらすっごい負けず嫌いだなと思いました(笑)。あまのじゃくだったので、「負けず嫌いだよね」と言われるのはすごくイヤだったんですけと、どこからどう見ても負けず嫌いですよね(笑)。

鈴木愛理が「愛してやまないハロプロ楽曲」5選

――それでは、ここからは鈴木さんが愛してやまないハロプロ楽曲を5曲、選んでいただきたいと思います。
どうしよう〜! すごく難しい……。全体論でいうと、つんく♂さんが昔から作ってきた独特な楽曲と女の子像があるじゃないですか。現役のときから、つんく♂さんの楽曲は歌詞について考えることが多かったです。ちゃんと考えないと真意までたどり着けない曲が多かったので。歌詞の意味を考える時間がすごく好きだったし、みんなの成長と人それぞれの解釈に寄り添ってくれるんですよね。

近年は、山崎あおいちゃん(ハロプロに多くの楽曲提供をしているシンガー・ソングライター)や他の方が手がける曲も増えてきているんですけど、つんく♂さんが作ってくださっていた楽曲と、意外と遠くないなと思うんです。特にあおいちゃんの楽曲が昔からハロプロを好きな方に刺さる理由は、曲に描かれる人物像は違うけど、どちらにも強がりなところがちょっとあって、「自分を認めてはいるけど、誰かに“私は私”というのを認めてほしい」という気持ちがどこかにあるというか。そこが“ハロプロ!”という感じで私もすごく好きですし、現役の子たちも楽曲に影響を受けて育っていて、それが今も変わらないのがうれしいですね。

モーニング娘。『Do it! Now』:イントロでもう、「ハロプロきた」
15thシングル『Do it! Now』(2002年7月発売)

モーニング娘。『Do it! Now』

……と、前置きしつつ、好きな曲が多すぎて選べないんですけど(笑)。私が幼少期からずっと好きなモーニング娘。さんの曲は『Do it! Now』なんです。イントロでもう、「ハロプロきた!」と思うし、当時は歌詞まで考えていなくて曲調だけで好きでしたけど、今聴いても歌詞を含めてやっぱり好きだなと思います。

そして、なんといっても後藤(真希)さんと安倍(なつみ)さんが背中合わせで立っているのが好きです(笑)。お二人が背中合わせで歌うあの感じが『Do it! Now』に合いすぎていて、めちゃくちゃ熱いですよね。完全にファン目線なんですけど(笑)。

松浦亜弥『LOVE涙色』:「やっぱりすごいな」と何回も思う先輩
3rdシングル『LOVE涙色』(2001年9月発売)

松浦亜弥『LOVE 涙色』

松浦亜弥『LOVE 涙色』

次は松浦亜弥さんの……どっちにしようかな……(悩み抜いた末に)『100回のKISS』と悩んだのですが、『LOVE涙色』にします。初披露したときの『ハロモニ。』をすごく覚えています。それまでずっと明るくてかわいい楽曲を歌っていた松浦さんが、急に大人っぽい曲をシンプルな格好で歌い出すあの衝撃が忘れられなくて。

私がソロで歌うようになってから、松浦さんは「やっぱりすごいな」と何回も何回も思う先輩なんです。かわいく歌ったり、大人っぽい曲やバラードを歌ったりするのも、歌のスキルの高さが前提にないとできないことですし、しかもすごくかわいいですし。もし、松浦さんを通ってない方がいるなら、平成のトップアイドルとして一度は通ってほしいなとめちゃくちゃ思う先輩のひとりです。

あぁ!『FIRST KISS』:背伸びをしないで歌えるようになる感動
1stシングル『FIRST KISS』(2003年10月発売)

あぁ!『FIRST KISS』

あぁ!『FIRST KISS』

自分が参加した曲だと、あぁ!の『FIRST KISS』が一番好きなんですよね。もちろん℃-uteもBuono!も好きな曲はいっぱいあるんですけど、『FIRST KISS』はこれまで歌ってきた中で似たような曲があんまりないというか。小3のときは歌詞の意味を理解していなかったんですけど、小・中学生の頃につんく♂さんからもらった曲って、大人になったときのことが考えられているんだろうなという曲が多くて、何年か後にやっと背伸びをしないで歌えるようになる感動がいつもあるんですよね。「あっ、やっとこの歳になった!」みたいな。

例えば『涙の色』(℃-ute)は、当時中学生だったので「浮気なら それなりに許すつもりだった」という歌詞は、「なんで許すの?」って思っていました(笑)。昔からちょっと暗くて難しい曲が好きだったんですが、そういう意味で『FIRST KISS』は最初の挑戦でしたし、今でも大事に歌いたいと思っている曲です。

℃-ute『涙の色』

――『FIRST KISS』は当時の年齢ならではの幼い、かわいらしい声が印象的ですが、今聴くとどう思われますか?
私、あのときの自分の声が一番好きなんですよ。なんの汚れもない(笑)、傷ついてない声帯というか。でもちょっと大人びようとして鼻にかけている感じも。成長過程で出そうと思っても出せなくなってしまった声だからこそ、ああいうステキな楽曲に残せてよかったなとすごく思いますね。あの頃の声は、自分の声を聴いているようには思えないんです。

アンジュルム『Uraha=Lover』:初めて聴いたときからずっと好き
7thシングル『泣けないぜ…共感詐欺/Uraha=Lover/君だけじゃないさ...friends(2018アコースティックVer.)』(2018年5月発売)

アンジュルム『Uraha=Lover』

アンジュルムの『Uraha=Lover』は、初めて聴いたときからずっと好きな曲です。山崎あおいちゃん提供の曲なんですけど、どこか懐かしいハロプロ感もありつつ、ダンスはバキバキにハードルの高いことをさりげなく入れていて。

あんなにかわいい子たちが、男の子に対して本音を言わないスタイルの曲を歌うというのが矛盾しかないじゃないですか(笑)。それがいい! 「いやいや。君たちからいなくなる男なんていないから!」と言いたくなりますけど(笑)。

そんな子たちがすごく切なそうな顔で「ほっとしてるくせに」と言い捨てる感じがたまらない。“もっとくれ!”と、気持ち悪い先輩になっちゃうんですけど(笑)、本当に好きです。

――ご自分が参加した曲以外だとファン目線が出てきますね(笑)。
そうなっちゃうんですよね、オタク気質があるといいますか(笑)。今のハロプロに対してはそういう目線で見ちゃいます。大人と子どもの境目ぐらいにいる年代のメンバーを見ていると、「あ〜! 今この時期を残せてよかったね〜!」と、成長に一喜一憂しちゃいます。

℃-ute『Summer Wind』:大人になって素直に受け止めて歌える喜び
29thシングル『何故 人は争うんだろう?/Summer Wind/人生はSTEP!』(2016年4月発売)

℃-ute『Summer Wind』

本当に5曲では収まらないんですけど、最後は℃-uteの曲で、中でも『Summer Wind』がすごく好きです。リリースが解散に近いタイミングだったので、他の曲に比べると歌ってきた回数は少ないんですけど、「℃ONCERTO」ツアー(2016年春に開催した「℃-uteコンサートツアー2016春 〜℃ONCERTO〜」)でのパフォーマンスが自分の中でとても印象に残っています。

久しぶりにつんく♂さんの楽曲をいただいて、歌詞の女の子はやっぱり強がっているんだと思ったんですよ。「助手席には座るけど 何にも決めちゃいない」ってどういう状況?って最初は思いましたけど(笑)、自分の中に何か秘めているものがある、凛とした女性というキーワードがすごくしっくりくる世界観で、それを大人になって素直に受け止めて歌える喜びみたいなものもありました。

この曲のレコーディングで思い出に残っているのが、アウトロで「好きなようにフェイク(※)していいよ」と言われたんです。そんなことは今までなかったので、超欲張って、アウトロ全部にフェイクを入れたんですよ。そしたらスタッフさんから「『フェイクっていうのは欲張りすぎずに、要所要所でええんやで』とつんく♂さんが言っていた」とアドバイスされて。結局、おいしいところだけ使ってもらって、半分か、なんなら1/4くらいになっているんです(笑)。

※フェイク……音楽用語で、原曲をアレンジして歌ったり、曲の間奏や後奏部分で即興的に歌うこと。ここでは後者の意味

今ならその意味もわかるんですけど、当時は挑戦と言われたら全部やる!みたいな感覚だったので、すごく勉強になった曲でもあります。ダンスも含め、あえてローテンションめのまま終わる感じもすごく好きです。1人で踊ることができない、みんながいてこそ成り立つ不思議な世界観の曲なので、いつか何人かでやりたいですね。

それにしても私があげた曲、全部暗いですね〜! ずっと暗い(笑)。もちろん『そうだ!We’re ALIVE』(モーニング娘。)とか明るい曲も好きなんですけど、昔からずっとつんく♂さんの、ダークめな曲が大好きなんですよね。

モーニング娘。『そうだ!We’re ALIVE』

ハロプロは「今の自分のほとんどを作ってくれた」

――最近では矢島舞美さんと中島早貴さんとのイベントや、M-line(主にハロプロを卒業したアーティスト)のライブでハロプロの楽曲をパフォーマンスしていますが、卒業しても変わらないハロプロらしさ、あるいは以前との変化を感じることはありますか?
私が在籍していた頃とは「アイドル」の捉え方自体が時代的にも変わりましたよね。私が高校生くらいのときは、アイドルといえば黒髪ロング、清楚が正義!みたいなイメージの時代で、金髪や茶髪にする子はグループに2人までというような感じでした。

でも今はどのグループにもいろんな子がいて、メイクがすごく個性的でも、衣装が奇抜でも受け入れてもらえるようになって。ハロプロでは、アンジュルムが時代の流れに沿っていて、モーニング娘。はどっしりと変わらないでいてくれて、BEYOOOOONDSは昔のハロプロを思い出させる感じがします。

私が現役のときにそうだったんですけど、例えばBerryz工房を見て“いいな”と思ったらいいところを盗もうと考えちゃうんですけど、そうするとみんなが似てきちゃうんですよね。「似ないことの良さがあるよ、それを強みとして持ってほしいな」と思うし、「どんどん違うベクトルで振り幅をもっと出していってほしいな」と、OGメンバーとしても、一ファンとしても思いますね。

そういう変化があっても、音楽チームのスタッフさんが変わっていないことがハロプロっぽさを残してくれる軸となっています。音楽面では身を委ねて、自分たちはどんどん羽を伸ばして個性を磨いていったら、いい意味でバチバチするんじゃないかなと思います。

BEYOOOOONDS選抜メンバーと

――それでは、鈴木さんにとって、「ハロプロ」を一言で表すとしたら?
「今の自分のほとんどを作ってくれた場所」です。もう人格レベルから(笑)。ソロになって「ハロプロの子たちってずっと謙虚だよね」と言ってもらえることが多いんですけど、それって先輩方がそうしてきたのを見ていて、影響されて無意識にできているところもあると思うんです。そういう無意識のうちに先輩の背中を継承している感じがハロプロなんだなと思うので、私もソロで活動しながら後輩たちにいい影響を残せるといいな、ちょっとでも卒業後の道しるべになれるといいなと、こっそり思っています(笑)。

音楽を作ることと歌うことは止めなかった2年間

――ここからは、2月2日にリリースされるニューアルバム『26/27』についてお話しを聞かせてください。前作から2年ぶりのアルバムとなりますが、どういった経緯で制作が始まったのでしょうか。
タイトルのとおり、26歳から27歳の2年間の曲たちをギュッとまとめたアルバムなので、2年間通して作っていた感じなんですよね。コロナ禍でみんなが苦しい思いをしたり、自分ではどうにもできないことも多くて、でも音楽は止めちゃいけないなと思って、音楽を作ることと歌うことは止めなかった2年間だったんです。

本当に悩んでいた時期の曲や、まだまだ自分の中で何が正解かわからないときの曲、自宅で録った曲もあります。本当にそのときどきで作ってきたので、1曲でもみなさんの心に響く曲が見つかるといいなと思っています。

鈴木愛理『Let The Show Begin』

――楽曲ごとに、制作したときのことを思い出したりすることもあるのでしょうか。
思い出しますね。『Let The Show Begin』はめちゃくちゃショーアップ的な明るい曲ですけど、横浜アリーナ公演(2020年4月に開催予定も緊急事態宣言下で中止)に向けて作った曲だったので、横アリ公演ができなかったことを思い出すんですよね。リハーサル初日の帰り道に「中止になりました」と言われて、初めてどうしようもできない悔しさを経験して。

20年活動してきて、自分の体調不良とかでお仕事を休んだことがないことだけが自慢なので、やるはずだったことができなくなったことがこれまで一度もなかったんです。なので、どうしたらいいのかわからなかったし、やっぱりライブって、私にとって大事なことなんだと気づいて、リビングで正座してぽろぽろと涙が出てきたのをすごく思い出します。

それと同時に、この楽曲を通して、あのとき叶えられなかったことを絶対に叶えるという新たな夢もできたので、そういう意味では明るい気持ちにもなれる曲でもありますね。こういうエピソードが曲ごとにいっぱいあるんです。

マーチンさんとの出会いで気づけた“それが私なんだ”

――この2年を振り返ると、鈴木雅之さんをはじめ、さまざまなアーティストとコラボレーションをしたり、昨年からは『クラシックTV』(NHK Eテレ)のMCに挑戦されたりもしています。そういう新しい経験が制作や活動に生きていると感じることはありますか?
マーチン(鈴木雅之)さん、『クラシックTV』の清塚信也さん、『アニソンでしょでしょ』(テレビ朝日のYouTubeチャンネルで配信中の『オーイシマサヨシ×鈴木愛理のアニソン神曲カバーでしょdeショー!!』)のオーイシさん、このお三方とお仕事をさせていただいて、音楽を心から楽しめるようになったと感じています。
特にマーチンさんと出会いは最初のきっかけになりました。ハロプロ時代はグループ活動だったので、自分以外のメンバーが私のできないところを補ってくれていました。なので、ソロになったら自分だけで表現できる幅がすごく狭まるだろうなと思っていて、実は「ソロでは歌いたくない」と言っていたんです。

それでも「ソロをやってほしい」と言ってくださるファンの方がいたからソロでも歌い始めて、やるからには自分になかった引き出しを開けてみようと、最初はこれまでアイドルとして使ってきた“母体”以外のギアを上げて活動していたんです。
でもそれがしっくり来ていない中でマーチンさんと出会って、マーチンさんと一緒に歌うとなったら引き出しなんて考えている場合じゃないので、「やるぞ!」と気合いを入れて歌ったら、しばらく使っていなかった母体のギアが“どかーん!”と上がったんです。そのときに「やっぱりこれなんだ」と思って。どこかで過去の自分を止めていたけど、ちゃんと認めてあげなきゃいけないし、“それが私なんだ”とマーチンさんとの出会いで気づけたんですよね。

そこからは音楽を素直に楽しめていて、心の底の底から「音楽が好きだな」「楽しいな〜!」と思えるようになりました。本当にお三方との出会いは大きかったですし、音楽的なお話をする機会が増えて、自分が見ている世界は狭かったなとも思いました。

松浦亜弥さんの初期のアイドル像を頭に置いた新曲MV

――アルバム収録曲の中から『ハイビート気分』のMVが1月17日に公開されました。
まずアルバムを作るときに、何も考えずにいつ聴いても楽しかったり、みんなが踊れて気持ちが高まるような、いい意味でアイドルっぽい曲が今まであんまりなかったので、「欲しいです」と話して、最後にできたのがこの曲でした。

MVを撮るときは、松浦亜弥さんの初期のアイドル像を頭に置いていました。私がミニチュア化した“ハイビー子ちゃん”のシーンを最後に撮ることになったので、合成と言うと夢がないですけど(笑)、あとからどうなってもいいように演技をしました。ボウリングのシーンは早朝から撮ったんですけど、それが一番面白かったです。ハプニングもあったし、朝早くからボウリングすることなんてもうないだろうなと思って(笑)。

鈴木愛理『ハイビート気分』

――「こういう曲が欲しい」という意見も鈴木さんから出されているんですね。
そうですね。曲を選ぶ作業にも最初から参加していて、それこそ『Easy To Smile』は1stアルバムに入るはずだった曲をずっと引っ張って引っ張って、やっと今になって出したんです。2019年くらいに「笑わない曲がやりたい!」と言っていた時期があったんです、恥ずかしながら(笑)。

この曲のMVを公開したのは一番つらかったとき(2020年7月)だったんですけど、「愛理ちゃんっぽくてすごく元気をもらえて、涙が出ました」「明るい曲で初めて泣きました」と言ってもらえて、そこでもちゃんと自分のことを認めてあげなきゃと思って。やっぱり笑顔は自分のトレードマークで、ありのままでいられるのがいいなと思えました。

きっと『ハイビート気分』も少し前なら出していなかったと思います。そういう意味でも『26/27』に収録された曲はどれも私だなぁと思うし、自分に素直に歌えているなと思えて、すごく楽しいです。

鈴木愛理『Easy To Smile』

――2022年はこのアルバムからスタートしますが、音楽面で今年チャレンジしたいことはありますか?
芸能界に入って20周年を迎えるんですけど、よく考えると自分が悩むことも、うれしいと思うことも、全部音楽にまつわることが軸でした。音楽に関しては本気で悩むし、本気で喜べるので、こういうときだからこそできる恩返しを音楽を通してできたらいいなと、今年は特に思っています。もちろん横アリ公演をやりたいとも思っていますけど、まずは自分自身に素直に、嘘のない歌を歌いたいなという想いが根本にあります。
プロフィール

鈴木愛理

鈴木愛理(すずき・あいり)

1994年4月12日生まれ、千葉県出身。2002年、8歳で「ハロー!プロジェクト・キッズ オーディション」に合格。2005年6月、ハロー!プロジェクト・キッズの7人で結成された℃-uteのメンバーとなり、2007年2月に『桜チラリ』でメジャーデビュー。同年末に日本レコード大賞 最優秀新人賞を受賞し、第58回NHK紅白歌合戦に初出場した。2017年6月のグループ解散をもってハロプロを卒業し、2018年6月にアルバム『Do me a favor』でソロデビュー。同年7月にソロでは初の日本武道館公演で1万人を動員した。2015年6月号からはファッション誌『Ray』の専属モデルも務め、2021年4月からはNHK Eテレ『クラシックTV』のMCを担当。「アイドルが憧れるアイドル」の異名を取る。
作品情報

3rdアルバム『26/27』

3rdアルバム『26/27』(2022年2月2日発売)

前作『i』(2019年12月発売)から2年ぶりとなる3枚目のアルバム『26/27』(読み:ニーロクニーナナ)は、文字通り、26歳〜27歳の2年間に制作された楽曲を集約した作品。全14曲入り。

【収録曲】
01. ハイビート気分
02. Be Brave
03. rescue
04. 噂のホクロ
05. 見る目ないなぁ
06. きみにだけ人見知り(Home Demo Ver.) 
07. Apple Pie
08. Let The Show Begin
09. BABY ! WE CAN DO IT !
10. 真夜中のメリーゴーランド
11. 笑顔
12. Easy To Smile
13. この星のキセキ
14. 光 (Live@日本武道館Version)
この記事について
この記事は、LINE初の総合エンタメメディア「Fanthology!」とオリコンNewSの共同企画です。
俳優・歌手・芸人・タレントらの趣味嗜好を深堀りしつつ、ファンの「好き」を応援。今後、さらに気になる人の「これまで」と「これから」をお届けしていきます。
⇒この記事をオリジナルページで読む(1月31日掲載)

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