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“超ビンボー水族館”に設置された「館長が出てくるボタン」、予算なくても新たな体験つくる館長の工夫「スタッフも展示のひとつ」

  • 話題となった「館長が出てくるボタン」(写真提供:北の大地の水族館)

    話題となった「館長が出てくるボタン」(写真提供:北の大地の水族館)

 押すと、3分以内に館長が出てくるボタン――、その名も「館長が出てくるボタン」がTwitterで注目を集めている。このボタンは、北海道北見市おんねゆ温泉にある北の大地の水族館で、来館者とのコミュニケーションを目的に2020年夏に導入された。「スタッフも展示物のひとつ」と語るのは、ボタンの発案者である「北の大地の水族館」館長・山内創氏だ。ボタン設置の理由について話を聞くと、その背景には小規模な水族館ならではの体験を作りたいという思いがあった。

押すとその場に館長が現れるボタン、来館者との気軽な対話が目的「とにかく押しやすい名前に」

館長の山内さん(写真提供:北の大地の水族館)

館長の山内さん(写真提供:北の大地の水族館)

水族館の目玉展示の一つ「滝つぼ水槽」(写真提供:北の大地の水族館)

水族館の目玉展示の一つ「滝つぼ水槽」(写真提供:北の大地の水族館)

 北の大地の水族館は、日本で唯一の水族館プロデューサー・中村元氏が手掛け、2012年にリニューアルオープンをした小さな水族館。改装費も低予算の“超ビンボー水族館”ながら、「日本最大のイトウ」「日本初の滝つぼ水槽」「川面が凍る水槽」などのさまざまな仕掛けが当時、話題を呼んだ。

――「館長が出てくるボタン」は2020年7月に設置されたそうですが、これはどういったボタンですか?

山内館長水族館の館内に設置してあり、押すと私がその場に現れるというボタンです。来館していただいたお客様とその場でお話ができる機会があったらいいなと思って設置しました。

――導入されて1年半経ちました。反響はいかがでしょうか?

山内館長緊急事態宣言で休館して以降、来館者数が減ったままですので、実際の来館者数に繋がっているか実感はないのですが…。ボタンを押してもらえる頻度は、月に10回程度はあります。

――設置時にはTwitterで「ハンバーガーの話(雑談)でもいい」と呼びかけていましたが、実際にどんな話をする人が多いのでしょうか?

山内館長押してくれるのはTwitterを見て来館された方が多く、あとは展示について、魚のことや飼育について気になる点がある人が押してくれます。ときには15分ほど話し込むこともあります。

――Twitterでは、「館長が出てくるボタン」という直球な名称が「じわじわ面白くなってくる」という感想もありましたね。

山内館長押しやすい名前がいいなと考えていました。「呼び出しボタン」だと用事がないと呼びにくい印象なので、とにかく気軽に押せて、押した人があまり責任を感じないような名称にしようと名づけました。

スタッフとの会話で体験価値を生み出す、小さな水族館が大切にする“顔が見える展示”

1周20-30分でまわれる小さな水族館(写真提供:北の大地の水族館)

1周20-30分でまわれる小さな水族館(写真提供:北の大地の水族館)

――このボタン、押されたらアプリを経由して通知が入り「館内の“どこにいても”3分以内に館長が現れる」という仕組みだそうですね。運用への本気度を感じました。

山内館長どこにいても出てくるほうが面白いし、事務所にいる時にしか出られないでは、タイミングを逃してしまうので…。館長という立場上、バックヤードで手が放せない仕事をしていることはそれほど多くないので、私が最優先すべきはお客様だなと考えています。

――来館者との対面でのコミュニケーションを大事にされているんですね。

山内館長私たちの水族館は、1周20〜30分程度で見終わってしまう小規模なものなので、お客様の館内の滞在時間を少しでも延ばしてもらうためにも、疑問や質問にお答えしたいという気持ちが強いです。

――水族館のスタッフと気軽に話せるというのは、大きな水族館ではあまりできない体験なのではないでしょうか。

山内館長小さな水族館ならではの「顔が見える展示づくり」などをしたほうが面白いし、それができるのが強みでもありますからね。スタッフも展示物のひとつだと思っているので、スタッフとのコミュニケーションによって水族館の体験価値が少しでも上がればいいなと考えています。「なるべくお客様とお話をしよう」と普段からスタッフにも指示しています。

「改修ができなくても、来館者数を維持したい」飽きが早い時代、展示工夫への苦労

目玉展示の一つ、イトウの食事シーンがみられる「いただきますライブ」

目玉展示の一つ、イトウの食事シーンがみられる「いただきますライブ」

――水族館HPには“超ビンボー水族館”とも記載されています。そのことも、今回のようなコミュニケーションを軸とする仕掛けづくりを大事にすることと繋がっているのでしょうか?

山内館長予算の点でいうと、当館はリニューアルして今年で10年経ったのですが、市の施設のため、そう簡単には展示の改修ができないんです。今は浸透するのも飽きられるのも早い世の中なので、本来なら10年に1回くらいは大規模な展示の改修を行って来館者数を維持したいところですが、なかなかその予算がつかないのが実状なので、苦肉の策といった面もあります。

――一方で、来館者との対面コミュニケーションが展示などに生かされることもありますか?

山内館長「こういった生き物は展示しないのですか?」と言われて、そこから展示に繋がったものはあります。「イトウの稚魚」は、お客様の声から生まれた展示のひとつです。

――イトウというと、北の大地の水族館の目玉でもありますね。

山内館長イトウの稚魚が見られる水族館はほとんどないですし、うちは日本最大のイトウがいる水族館なので、1メートル級の成魚と稚魚の対比が見られるのは面白いなと思いましたね。

「水中世界をしっかり再現して、生き物の姿を伝えていきたい」 水族館という場への想い

日本で唯一、冬に「川面が凍る水槽」凍った川の中で魚がどう過ごすのか観察できる(写真提供:北の大地の水族館)

日本で唯一、冬に「川面が凍る水槽」凍った川の中で魚がどう過ごすのか観察できる(写真提供:北の大地の水族館)

――山内館長は、水族館はどのような場所だと考えますか?

山内館長「生き物の情報を伝える」ことが水族館の一番の役割ですし、楽しくなければ伝わらないとも思うので、情報を伝えることを前提に、楽しんでもらえる場にするのが水族館の在り方だと思います。

――昨今は、“癒し”の場として水族館を訪れる人も多いかと思います。

山内館長お客様がどう水族館を楽しむのかは、こちらがコントロールできることではないので、私たちは水中世界をしっかりと再現して、楽しみながら生き物の姿を伝えることに努めるだけです。水族館を楽しい場だと認識してもらえたら、何度も訪れてもらえるでしょうから、そこから少しずつ生き物自体に関心を持ってくれる人も増えるのではないかと考えます。

――今年はリニューアルから10周年とのこと。今後の展望について教えてください。

山内館長北見市を中心としたオホーツクエリアの住民の皆様に向けて、「この地域の水族館」ということを強く押し出してみたいです。地域に水族館があることの意義をしっかりと伝える企画を色々と考えています。

――地域に根差した水族館ですか。

山内館長うちの水族館がある場所は田舎で、近隣住民は1千人ほど、車で2時間の範囲にも20万人ほどしかいなく、また緊急事態宣言が明けたからといって、気軽に行こうという感じにはなりにくいのも正直なところです。ですが、地域の皆様と一緒に楽しんで水族館を盛り上げて、その結果、ここには面白いことをやっている人たちがいるなと思ってもらえたらいいですね。改めて地域の人たちから認めてもらえる地元の水族館になれるような取り組みをしていきたいです。

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