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一年戦争の転機『オデッサ作戦』を下支えした“ロートルタンク” “古参パイロット”が人型ではない機体に乗って見せた意地
嫌いだったガンタンクを制作「『作りなさい』という啓示だと思った」
量産ズキ「映画のワンシーンみたい」「このあとの展開を想像しました」などの感想をいただき、自分がイメージした情景がしっかりと伝わったことがうれしかったですね。最近はいかに場面を想像してもらえるかというテーマで、情景表現することにハマっているので。
――そもそも、なぜガンタンクを主役にした作品を作ろうと思われたのですか?
量産ズキ正直なところ、子どもの頃ガンタンクには興味がなく、むしろ嫌いでした。ところが大人になって、そのリアルさや、渋さがようやく分かってきたんです。そんな時に、(以前オリコンニュースでも取材した)ジオラマ作家の荒川直人さんの『wildriver円形劇場の[ケリビア第1砲台啓示]』という作品を見ました。この作品は、『オデッサ作戦』のジオン補給ラインを封鎖するため、チュニジアのケリビアで移動砲台と化したガンタンクを描いたものだったんですが、これに大きな衝撃を受けまして。ちょうど「そういえばガンタンク作っていないな」と思っていた時で、中古屋さんに行ったらたまたま『MG ガンタンク』が売っていた。これは「作りなさい」という啓示だと思いました(笑)。
――導かれるようにガンタンクを手にしたんですね。
量産ズキそうですね。昔から主役機よりサブキャラが好きなんです。それに、劇場版では削られたマイナーなガンタンクを使って、カッコいい作品を作ろうと思いました。
砂漠に埋もれたトラックも、ガンダム史を感じさせる意味を持たせた
量産ズキ『一年戦争』の序盤、地球連邦軍は苦境に立たされますが、『オデッサ作戦』を機に形勢が逆転します。その背景には、ジオン補給ラインを断つために、ベテランパイロットがロートルマシンを操り、癖のある古参兵を連れて斥候(せっこう=地上戦で、敵情や字形などを偵察・秘密裏に監視する少人数の部隊やその行動)任務があった、という設定で制作しました。
――派手な戦いの背景で、自軍に有利に進めるために、こうした地味な活動も行われているんですね。
量産ズキそうですね。新しいモビルスーツが台頭するなか、地球では火力と極地戦での戦車の利用価値はまだまだあるはず。改修して人員輸送も兼ねてまだまだ現役、戦車乗りが「地上ではまだまだこいつが一番」と言いながら、あえて人型ではなくこの機体に乗って意地をみせ、活躍すると想像してます。
――ガンタンクは、数々の戦いを乗り越えてきた感じが表現されていますね。
量産ズキとにかく実際の戦車をイメージにして、よりリアルに砲身・機銃・コクピット・ドラム缶など作りました。古参パイロットによる飛行機によくある『ノーズアートガール』もつけてみました。操縦・狙撃において複座の実在感を出したいので、コクピットのフレームを太く、リベット打ちしました。これは、ダグラム(「太陽の牙 ダグラム」)をイメージしています。
また、ガンタンクはデカ過ぎるので、ロー&ワイドに腹部を一段抜き、戦車部は30mmくらい幅増し改造してます。手のガトリングも装填数を考えて二の腕を弾相としてベルトリンクでつなぎかなりの数を撃てるようにしました。
――ガンタンクだけでなく、砂漠で朽ちてしまったトラックや飛び出す兵士の躍動感もいい味を出しています。
量産ズキありがとうございます。トラックは『ジオン降下作戦』当初にやられ、数ヵ月放置された結果、朽ち果てたという設定です。銃撃され、斜面から落ち、砂に突っ込んで止まった状態でドライバーはなんとか逃げて助かった、みたいなイメージです。フロントに弾痕も作ったんですが、砂に埋没させたら見えなくなりました。
場面としては高低差をつけてタンクを下からあおるように見せ、斜面をかけ下りる兵士で「動」を出して、随分前の戦闘で撃たれ放置されたトラックで「静」を表現しています。この配置がなかなか決まらず、何回か土台から作り直し、変則な縦長で後ろが高い形になりました。それぞれ縮尺が異なるので違和感ないように見せるのに苦労しました。
――多くの人に見てもらえたことで、その苦労も報われましたね。
量産ズキそうですね。この作品もそうですが、ガンプラのおかげでいろいろな人と知り合え、つながりを持つことができました。これからもこのつながりを大事に、作品を作っていきたいですね。