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「切り抜き動画」なぜ流行る? 新たな動画の隆盛に視聴者の判断能力が問われる実情も

 もはやメディアのメインストリームになった感もあるYouTubeで、今トレンドとなっているのが「切り抜き動画」だ。これはライブ配信など長尺の動画を短く編集して字幕を付けたもので、『2ちゃんねる(現5ちゃんねる)』開設者の“ひろゆき”こと西村博之氏の生配信を切り抜いた動画などが有名だ。ひろゆきは自身のツイッターで、5月のYouTube「ひろゆき切り抜き」動画の再生数が3億回を超え、5月中に1回でも切り抜き動画を視聴した人数が1583万人いると発表し、世間を驚かせた。今、なぜ“切り抜き動画”がブームを巻き起こしているのか、その真相に迫る。

気づくとおすすめが「切り抜き動画」一色に、その仕組みとは?

 切り抜き動画に関しては、“第一人者”のひろゆきが宮迫博之の公式YouTubeチャンネル『宮迫ですッ!』でわかりやすく解説している。ポイントを下記にまとめる。

●ひろゆきのYouTubeの生配信(YouTubeライブ)でも20〜30万再生止まりで、それほど再生数は伸びない。長時間の動画(ひろゆきの生配信で2時間ぐらい)は見ていられないという人が一定層いる。
●だが、切り抜き動画になると月に1400万人が再生する。
●短い切り抜き動画が多いので気軽に動画をクリックすると、YouTubeのアルゴリズムでひろゆきの他の切り抜き動画もおすすめされる仕組みになっている(アベマ調べによると、ひろゆきの切り抜きチャンネルは600ほどあるとのこと)。
●切抜き動画をアップするのは第三者の配信者であり、利益は配信者とひろゆきで折半。
●切り抜き動画を見て気に入れば、結果的にひろゆき本家のYouTubeの登録者も増える。

 このような切り抜き動画の“現状”を見て、ヒカル、岡田斗司夫、DaiGoといった著名YouTuberも切り抜き動画を“公認”“黙認”する流れが出てきており、こうした流れはゲーム配信や「歌ってみた」動画の世界にも及んでいる。いわばネットの「まとめサイト」に近いノリもあるが、YouTuberが切り抜き動画チャンネルを“承知”しているため、視聴者側も違法動画を見ているような罪悪感もなく、さらにYouTuberを応援することにもなるので、新たな動画の形として注目されているのだ。

他のプラットフォームの配信コンテンツをYouTubeで切り抜くケースも

 なぜ、切り抜き動画がブームなのかといえば、先述のようにやはり「YouTuberのライブコンテンツは長いが、それを抜粋した”切り抜き動画”は短いので気軽&気楽に見られる」「時間が限られるなかで、要点だけを見たい」という点が大きいだろう。一般的にYouTubeの動画では、8分以上の動画になると「ミッドロール広告」が入るので収益が上がりやすく、動画の尺が長くなる傾向にある。そんなに長く動画を見ていられない場合や、また見たくない視聴者にとっては、短く要点をまとめた切り抜き動画は需要があり、視聴回数も増えるというのが、大きなポイントとなっている。

 ひろゆきの生配信のように、視聴者からの質問に答えるという形式が決まっている動画の場合は、絵に変化がないので「目の可処分所得」を奪われないで済み、“ながら視聴”にも適している。またヒカルのように、ツイキャスやインスタライブの配信をYouTubeで切り抜き動画として投稿するケースもある。他のプラットフォームで配信しているものをわざわざ見に行くことは、相当なファンでなければハードルが高い。しかし、要点を絞った形でYouTubeに上げ直してくれれば、コアなファンでなくてもコンテンツに触れられる。いわばファンの間口を広げる役割を切り抜き動画が担うことにもなるのだ。

動画の内容は真実なのか? 問われる視聴者側の判断能力

 こうして見ると、いいとこだらけのような切り抜き動画だが、一番の問題は権利関係。そもそも元動画の配信者の許可なく、切り抜き動画を作成・配信することは違法行為。実際、そうした“グレー”な切り抜き動画も多数存在するが、認知度や人気度をアップさせる無料の販促ツール的な側面もあり、切り抜かれる側にもメリットがあるので、何となく放置したり、黙認するということにもなる。しかし、コラボ動画の場合は共演者の権利にも抵触してくるし、さらにVtuberのゲーム配信や歌い手の切り抜き動画となると権利関係が複雑に絡み合ってくる。また、切り抜かれ方によっては、元動画の配信者の意図しない方向に改編・加工され、改ざん・改悪ともなれば炎上するリスクだってあるのだ。

 トップクラスのYouTuberのように権利関係を明確にし、収益化システムを確立さえすればメリットの多い切り抜き動画だが、まだまだグレーな要素を孕んでいそうだ。拡散されやすいだけに、今後は視聴者のほうでも切り抜き動画の内容について見定める眼力、知見、リテラシーが求められることになるだろう。
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