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ORICON NEWS
20年ブレイクなしの“悪役俳優”がSNSで子どもたちに爆ウケ、役者の苦悩乗り越え見つけた居場所
実は良い人? 予想を超える大きな反響に戸惑い「悪役は嫌われてナンボ」
阿部亮平俳優として役の幅が広がれば良いなって始めたのがきっかけです。もともとチンピラとか悪い役が多いんですけど、一度お仕事すると、違う役もいけそうだねって言ってもらえることも多くて、それなら自分たちからアプローチしてみようっていう感じで。いつも楽しく遊んでる時間を動画作りの時間に使ってみない?っていう流れでした。
――実際に始められて反響はいかがでしたか?
山根和馬ありがたいことに「可愛い」とか「好き」って言っていただけることが多いのですが、そういう言葉を言われ慣れていないので、最初は受け取り方に戸惑いましたね(笑)。普段僕たちの悪役としての仕事って、主役が讃えられることで完了する感覚なので、僕たちが直接反響を感じることってほとんどないんですよね。悪役は“嫌われてナンボ”なので、そういった反響に対して、嬉しさと同時に驚きがありました。
阿部亮平今回のように取材してもらえるっていうのが仕事の部分で広がったところかもしれないです。朝のニュースでも、柄の悪い僕らが本当に出ていいの?みたいな(笑)。
「悪役になりたくて俳優になったわけではない」それでも純粋に悪役を全うしてきた“純悪”
阿部亮平いつの間にか仕上がっちゃったんです。最初は普通の格好と悪役の芝居バージョンと両方あったんですけど、TikTokのおかげで「純悪」の方が自然と走り出して。皆さんの中で純悪=ガラの悪い格好みたいなのが印象付いたんじゃないかなって思います。
山根和馬僕たちは現場でああいう格好しているのが普通なので、表情や口調とかも含めて自然にやっているんですけど、動画を見た人たちは何これって言うインパクトがあるんだと思います。「純悪」という名前もそんなに深い意味はなくて「純粋に悪役をやってきた」っていう。ですけど、悪役になりたくて俳優やっている訳でもありませんし、悪ぶりたくもないんですよ。ただ、僕たちの顔とか雰囲気で悪役を求められるので、役として真剣に向き合ってきた結果が、純粋に悪役。それで「純悪」っていうことでやってます。
阿部亮平たまに「極悪」と間違える人半分くらいいますけど(笑)。「極悪の2人ですよね」って。似ている歌謡グループもいるんですけど、やる前に「純悪でやるんですけど良いですか?」って聞いたら「あ、良いよ」ってちゃんと許可とってるんで(笑)。
阿部亮平悪役を演じるのはすごく楽しいですよ。だって普段、逮捕されないし、追いかけられないし、街中で怒鳴ることもないじゃないですか(笑)。友達に「お前あの役最悪だったな、子どもによくあんなことできるな」って言われても嬉しかったです。そう見えたんだ。最悪だったでしょ?仕事だもん、それがって。
――悪役のイメージから、日常生活で困ったことなどもなかったですか。
阿部亮平ほとんどないですね。怖いなって思われたら何もされないじゃないですか。ごくたまに声かけてくれる若い男の子たちいますけど、すごく礼儀正しいですね。よく芸人さんとかって街で「おーい」ってやられるって言われるじゃないですか、全くないです(笑)。SNSを始めてからは、お子さんに声かけられることは増えましたけどね。多分子どもたちからするとTikTokの人たちなんですよ。
山根和馬子どもたちは、あの格好見ても”怖い人”じゃなくて”TikTokの人”ですから。
阿部亮平この間も撮影してたときに子どもたちの集団がいて、「わーー!TikTokの人だ!」ってなったんですけど、「やめなさい、あなたたち!」ってお母さんが止めるって言う(笑)。で、「こっちおいでー」って呼びかけたら、親御さんたちが「あ、本当は良い人たちなんだ」って安心してました(笑)。
「自分を否定し続けていた」求められない苦悩の末、作り上げた自分たちの居場所
山根和馬昔は、俳優って待つことしかできない職業だなって捉えていて。自分自身が商品なので、結局”仕事がない=自分が必要とされていない”っていうことじゃないですか。そうなると、仕事がないとき常に勝手に傷ついている状態になってしまうんですよね。でもここ何年かで自分たちの魅力を伝える作品を自分たちで作り始めてから、それがいろんな人に受け入れてもらえるようになって考え方が変わりました。待つんじゃなくて、自分たちから発信していけばいいかなって。そこで自分を否定し続けるのをやめることが出来たと言うか。
阿部亮平壁にぶつかることはたくさんありますし、常に思い悩んでますが、やめようとは思ったことはないです。役者はみんないつも戦っていると思います。毎回就活をして、退社と入社を繰り返しているようなもので、それが僕らにとって現場ですから。
阿部亮平ただ、僕たちにとって今は『純悪』があるので、その不安は無くなるのかなって。今後、役者も自分たちだけで作品を生み出せる人が強いんじゃないですかね。発信の仕方間違えれば炎上しますけど、上手くまとめれば面白く響く時代ですからね。
山根和馬そういうメッセージを伝える時に一番実感するのは、人に伝えてるようで、自分たちにも向いているんですよね。自分自身に常に言い聞かせていることが若い子たちにも伝わったら良いなって思っています。学生の皆さんの中には、新卒の採用試験に対して”人生に一度の勝負”というようなプレッシャーがあると思うんですけど、俺たちなんて毎月オーディションという名の就活やってるよ!みたいな(笑)。自分たちもこんな感じだし、そんな1回、2回の失敗があっても大丈夫だよってその子たちに言ってあげたいし、自分たちにも言いたいというか。
山根和馬あえて目標を立てずに、目の前のことをやっていれば目標よりも上に行くことができるのかなって思っています。今はこの仕事来たからやってやろうみたいな感覚でいます。僕は最初は中学生から憧れていたDA PUMPで5年間活動させてもらっていて、元々ダンサーでやっていくと決めていたけど、途中で役者という新しい夢ができました。これからも、YouTuberだろうがTikTokだろうが、自分の芯を持ち続けていれば、何にでも柔軟に対応できるって思っています。
阿部亮平例えYouTuberって言われても、そう見えているなら良いんです。じゃあYouTuberの役できるじゃんって。全部役者に繋げられるというか。今は役者っていう太い幹にYouTubeやTikTokっていう枝がどんどんついているイメージなんですよね。幹の部分は崩さないことで柔軟に対応できるし、考え方も変えていける。役者を続けていく上でどんな経験も無駄じゃないって思っています。ただ本音を言えば…人助けしたり、優しいお父さんとか、学校の先生とか、一番は正義の味方を演じたいです!まぁ学校の先生やっても悪い先生になっちゃいそうですけど(笑)。
(取材・文=鈴木ゆかり)