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お泊りから“お試し”需要へ コロナ禍でコンビニコスメに変化、ECサイト発のアイテムで難局打破なるか

 先月、化粧品ECサイトを運営するノインが、ファミリーマート限定の新たなコスメブランド『sopo (ソポ)』を発足。これまでもコンビニで急なお泊り対応向けコスメは各社から販売されていたが、コロナ禍で緊急需要は大幅に減少。しかし、同商品が発売されると、他カテゴリーはいまだ苦戦する中、メイク売り場の売上は初週で昨年比140%を記録した。ノインが今回開発したアイテムは定番とは異なるミニサイズのカラーコスメ。そのねらいと、コンビニコスメの可能性をノイン、ファミリーマートの各担当者に聞いた。

コロナ禍で壊滅したお泊りコスメ需要 コンビニ決済多い若い世代囲うECサイトに着目

 今回、ファミリーマートが同店限定のコスメブランドを販売するに至ったきっかけには、新たな客層を取り込みたいという狙いがあった。「ノインさんは常にECサイトやSNSを通じて、消費者と積極的なコミュニケーションを取っており、“求められていること”をタイムリーに認識されている。それを反映した商品開発ができるのではないかと思いプロデュースを依頼しました」(ファミリーマート・友定裕美さん/以下F担当)

 ファミリーマートをはじめとするコンビニ店舗にそもそもコスメ商品はあった。それらは主に緊急需要対応用で、化粧水や乳液など基礎化粧品のミニサイズのものが多かった。コロナ禍でコンビニメイク売り場の売上は急激に落ち込んでおり、そのテコ入れとしてノインに白羽の矢が立った形だ。コンビニ利用客は比較的男性客が多い。若い女性の層はなかなか取り込めてないのが現状だ。ファミリーマートとノインはそこにも着目した。
「今までは遠くのスーパーやデパートまで買いに行けていましたが、外出自粛によりその機会は激減。これまでコンビニは、間に合わせの緊急需要アイテムとして、とりあえず買えればいいといった意識があったかもしれませんが、これからは、家の近くのコンビニできちんとほしいものが手に入るということが重要になってくるのではないかとも考えました」(F担当)。

 ノインのECサイトを利用する若い世代が、クレジットカードを持っておらず、決済をコンビニエンスストアで行う人が多かったのも狙い目だった。

「ついで買いなどではなく、女性が『sopo』を買いたいからファミマを探す…そんな商品にしたかったのです。お客様の中には、都心になかなか行けない方々も多くいらっしゃいます。ですが、ファミリーマートさんは全国約1万6千店舗を展開。気軽で、身近に売り場があるということも魅力ですし、購買層が広いということも魅力でした」(ノイン・後藤麻希子さん/以下N担当)

リップよりアイメイク? データから見る“今求められている”コスメとは

 要となるアイテム開発は、ノインが抱える最新のマーケティングデータを駆使して、敢えて定番を排除。マスカラやアイライナーは黒を除いており、ユーザーが“試したかったけれども、買うにはハードルが高かった”カラーを取り揃えるなど、攻めたラインナップに。パッケージデザインも、シンプルでオシャレ。それでいて求めやすい価格設定もポイントだ。「値段に関しては、コンビニの店舗数があってこそ実現できたコストパフォーマンスです」とN担当者は説明する。

 アイメイク中心に絞ったのも、理由がある。ノインのECサイト上で、コロナ禍で消費者行動の変化があったからだ。マスクをして過ごす時間が増えたため、マスクがない部分…つまり、リップまわりにかける金額が減り、目元で遊ぶ傾向になった。両社はそこに力を入れた。「少々挑戦的なカラーコスメではありますが、40代女性にも受け入れられるような日常的に使える色味を追求しました。ユーザーと近い距離でコミュニケーションが取れるECサイトを展開する弊社だからこそ、根拠とねらいを持って実現できたラインナップです」(N担当者)

 「コンビニでカラーコスメが変える時代が来た」――。『sopo』の発売が発表されると、販売前から大きな反響があった。

「発色をよくするために色によって筆とフェルトを変えるなど、アイデアを出し合い、さらにクオリティも追究。アイブロウにしても、眉ペンシル、マスカラ、チップが1本になっている商品はなかなかないのではないでしょうか。高品質高機能、これまでにない付加価値を。これを体現するために何度も試作を行いました」(N担当者)
 キーワードは“ひとくちコスメ”。これはコンビニにかけて、「お菓子をつまむみたいに気軽に色を試してもらいたい」という思いで付けられた。カラーコスメは買っても全部使い切ることは少ない。そのため、小さくても求めやすいサイズと価格が大事なのではないかという目論見だ。そしてミニサイズのため、ポーチに簡単に入れられるという副次的効果も。「自粛で家にいると沈みがちに。そこで、気持ちを上げるためか、まつげ美容液を使ったり、カラーマスカラを使ったりするお客様が増えたんです。今、求められているのはそんな商品だとの思いもありました」(N担当者)

コスメお試しサービス停止も追い風に? 発売初週売上140%を達成

 満を持してsopoの発売日を迎えると、寂れていたコンビニのメイク売り場に早速光が差した。SNSには「どの店舗に行っても売り切れで入手できない」「何種類も買って色々なカラーを試してる」「これまでのコンビニではなかったクオリティ」などの声が。メイクカテゴリーでは発売初週売上140%(昨年比)を達成。ファミマが目標に掲げた「新顧客獲得」は「まず第一段階は、達成できました」とF担当者は喜びの声を上げる。
 背景には、デパートコスメ需要の縮小傾向もあるかもしれない。各店舗から化粧品テスターが消え、各デパートでもお試しサービスが停止。そんなところに、お試しコスメ『sopo』が消費者の乾きを癒したところもあるだろう。しかも、『sopo』はカラーコスメであることから、コンビニに従来からあった化粧品商材との共食いも起こしていない。競合しないまま、ファミマのコンビニコスメを「ほしいものを揃えることができるメイク売り場」へと価値観を変えることに半ば成功した。

 さらに、インターネット社会である現代らしさも後押ししている。インフルエンサーやYouTuberが『sopo』に目をつけ、自発的に取り扱いを行ったのだ。話題になり、しかもその話題に負けないようなクオリティの商品を出すことができれば、ネットで自然発生的なムーブメントが起こり、若い客層を得ることができる。これにも、ファミマ・ノインともにうれしい悲鳴を上げている。

 「化粧品を買うとき、まずは試してみたい、自分に合うかどうか確かめたいという願望が皆さんあると思います。でも今は、お店で試したくてもテスターとためらってしまうこともあるかと思います。そんなお客様に、いつもとは違った遊びアイテムとして気軽にソポのコスメを手に取っていただき、気分を上げたりおしゃれを楽しんだりしていただけたら嬉しいです」(N担当者)

 いつ終わるともしれないコロナ禍。多くの人がビジネス面含め、日常や生活を変えざるを得ない苦しい状況のなかにいる。だがそこから見いだせる活路もある。ホンダの創業者、かの本田宗一郎は「人間がいろんな問題にぶつかってはたと困る、ということは素晴らしいチャンスなのである」と遺した。改めてこの言葉を噛み締めつつ、“今”を生き直してみたい。 


(文=衣輪晋一)

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