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“本の装丁”の世界を描き反響、人気ラノベ絵師が語るイラストの役割

 三嶋くろねさんのイラストは、テレビアニメ化もされたライトノベル『この素晴らしい世界に祝福を!』や『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』など、繊細な色使いと柔らかみのある質感が特徴で、多くのファンから支持を得ている。そんな三嶋さんがイラストを手がけた『すべては装丁内』は、これまであまり取り上げられることのなかった“ブックデザインの世界”を描いたストーリーで、主人公の新米編集者など登場人物をいきいきと描き、作品を盛り上げている。

原作は、「本のデザインはこんな感じで決まっていくんだ…」と、新鮮な気持ちで読んだ

――今回『すべては装丁内』のイラストを担当するにあたり、どのタイミングで原作を読まれたのでしょうか?
三嶋くろね 本作に限らず、お仕事としてイラスト制作を引き受けた場合は、本格的に作業に取り掛かる前に読ませていただいています。「編集さんやデザイナーさんは、こうしたやり取りを何度も繰り返して、ひとつの作品を生み出しているんだな…」ということがすごく丁寧に描かれていて、感銘を受けました。

――特に印象に残っているポイントはありますか?
三嶋くろね 著者の木緒なち先生がデザイナーでもあるので、主人公の編集者と、相対するデザイナーのやり取りがリアルに描かれているのが印象的でしたね。私自身も、これまで何度かライトノベルのお仕事はさせていただきましたが、デザイナーさんと直接やり取りをする機会はなかったので、「本のデザインはこんな感じで決まっていくんだ…」と、新鮮な気持ちで、最後まで一気に読ませていただきました。

――主人公の新人編集者・甲府可能子と、ドSで偏屈な装丁デザイナー・烏口曲のキャラクターデザインは、どのようにして思いつかれたのでしょう?
三嶋くろね 木緒先生からいただいた設定資料をもとに、デザイン案をいくつか考えて。そこから決めていきました。可能子の場合は「髪型はセミロングで髪留めをつけている。いつもはスーツか高校生のような服装。目は大きく丸く、愛嬌がある」という指定でしたので、髪型のパターンもいくつか出して。それ以外は指定通りに…といった感じです。烏口は、容姿についてがっつり指定があったので描きやすかったですね。私の場合、異世界もののイラストを描くことが多いんですけど、今回はそうした特徴は極力抑えて。現代の日本が舞台の物語なので、日常系作品の雰囲気が出るように、意識してデザインを起こしました。

――表紙で描かれている可能子のパンツスーツ姿は、フレッシュ感もあり、彼女のイメージにぴったりな衣装ですが、ファツションや髪型などは、どのようにして思いつかれたのですか?
三嶋くろね 本作の場合、最初に原稿をいただいた時点で、可能子の容姿や性格はほぼ決まっていたんです。ですので、その要望に合いそうなスーツや髪型をインターネットで検索して。しっくりくるものにアレンジを加えて、デザインに落とし込んでいった…という次第です。

ファンの方たちに、どうして私の絵だと分かるのか理由を聞いて回りたい(笑)

――三嶋先生ご自身は、ライトノベルにおける表紙イラストや挿絵を、どのような存在だとお考えでしょうか?
三嶋くろね 小説そのものを際立たせるための一要素だと考えています。イラストから想像を膨らませて、新しいストーリーを思いつかれる作家さんもいらっしゃいますが、あくまでも文章があってこその表紙や挿絵ですし、それがなければキャラクターそのものが成立しないので、作品をよりおもしろいものにするためのお手伝いができれば…という気持ちで、毎回、取り組ませていただいています。

――ご自身のイラストについて、こだわられているところや、ここが自分の特徴だと思われるポイントがありましたら、教えてください。
三嶋くろね 作家仲間と話すと、よくその話題になるんですけど、自分の絵の特徴って、自分ではよく分からないんですよ。強いてあげるなら「白髪のキャラクターが好き」というくらいで…。むしろ、応援してくださるファンの方たちに、どうして私の絵だと分かるのか、理由を聞いて回りたいです(笑)。

――ファンの方たちの方が、本人よりも絵の特徴を熟知していると(笑)。キャラクターのポーズに関しても、こだわられているポイントはありますか?
三嶋くろね こだわりと言えるかは分かりませんが、キャラクターが活き活きとしているように見せたいので、そこを意識して描いているつもりです。キャラクターがひとりなら、そのキャラは今、何をしているのか? 何を思っているのか? 読者に対して何を訴えたいのか?…といったことを考えますし、複数名なら、このキャラクターたちはどういった関係性なのか? どんな会話をしているのか?…といったことを考えつつ、絵に起こしています。

――そうした表情や仕草からキャラクターたちの感情を読み解くことも、ライトノベルを読むうえでの楽しみと言えそうですね。ちなみに、『すべては装丁内』の表紙イラストは、どういったイメージで描かれたのでしょう?
三嶋くろね あらかじめ木緒先生から「こんな感じにしたい」というご意見をいただいていたので、そちらに私自身のアイディアも盛り込む形で、ラフを何パターンか作成しました。それを見ていただきながら微調整を加えていくことで、現状のデザインに落ち着いた…というのが大まかな流れです。具体的に言うと、「烏口の事務所は明るく暖かい雰囲気にしたい」とのことでしたので、色合いは全体的に暖色を強めにしてみました。

――キャラクターの仕草には、どういった感情が込められているのでしょう?
三嶋くろね 可能子は明るく前向きなだけでなく、作品のことも真剣に考えているキャラクターなので、それを表現するために、原稿の入った紙袋を大事に抱えさせました。烏口は、ことあるごとに可能子とぶつかるものの、心の底ではちゃんと彼女のことを認めているはず…なので(!?)、やさしい笑みを浮かべつつ、後ろにたたずませてみました。

(文/ソムタム田井)

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