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イラストレーター描く”痴漢”の事例一覧に反響「触るだけじゃないのか…」
イラストは無機質を意識「被害者も加害者も年齢性別は関係がないことを現した」
【なご】大阪に住むフリーランスのイラストレーターです。企業パンフレットの漫画や挿絵、書籍の表紙などのお仕事をしています。
――痴漢被害を描いたイラストがたくさんのRTやいいねを集めましたが、どうしてこのようなイラストを描くことにしたのでしょうか?
【なご】SNSでも色んな被害を発信する人が増えましたが、私の周りでも痴漢被害を人に話しても信じてもらえないことが大半です。被害を受け側にもかかわらず、親に伝えて「恥ずかしい」「はしたない」と叱られた子もいますし、勇気を出して被害を伝えても、「大げさだ」「嘘だ」「被害妄想だ」「それって自慢?」などと穿った見方をする方もいるようです。家族、友人知人、職場の人など、身近な存在から否定される辛さは計り知れません。だからまず信じる信じない以前に、「こういう被害もある」という事実を知ってもらうことが第一歩だと思いイラストにしました。
――まずは知ってもらうこと。と考えた理由も教えてください。
【なご】相談しても否定される、だから被害者は口を閉じる。そして被害者でも加害者でもない方々は存在を信じずに否定する。その負のループに少しでも切れ目を入れるためには、まず認知の乖離を減らすことだと考えたからです。
――知ってもらうこと、の大切さをどのように感じますか?
【なご】「自分は知らないから嘘」という考えになってしまうのはさみしいことだなと感じます。せめて身近な方から聞いた話や相談に対しては、親身に耳を傾けてもらえたらなと思います。否定される、笑われる、軽んじられる、詰られる、こういった反応を返されれば、相談もできず信頼も失うかもしれません。
――イラストを描くうえで気を付けたことはありますか?
【なご】出来る限り無機質さを心がけました。初めに描いたイラストは被害者を女性にしてしまいましたが、被害者も加害者も年齢性別は関係がないことを現したつもりです。
――フォロワーからの被害体験を見て特に驚いたことはありますか?
【なご】小学生のころに初めて痴漢に遭ったという方がとても多かったことに驚きました。「気持ち悪くて怖かったけど、あの頃はあれが痴漢だと分からなかった」そう続ける方も少なくありませんでした。
被害後の相談すらままならない現状「まずは知ってもらうことが第一歩」
【なご】正直なところ、そこまで深く考えての行動ではありませんでした。絵が描けるから絵にした、それに尽きます。遭いたくもない被害にあって、更に心無い言葉で傷付けられるということから減らしていけないかと考えました。大人でさえ怖くて不快な思いをするのに、幼い子供や学生の方々がより多くの被害に遭っているのはとても悲しいことです。
――まずは周囲の方に理解していただけるのが“第一歩”ということですね。
【なご】そうですね。また、幼い子供が初めて被害に遭ったとき、それが迷惑行為だとわからないこともあります。イラストにしたことが全てではありませんが、自衛する側も知っていれば防げることがあるかもしれません。
――いいねやRTの数で、たくさんの方々の目に触れた実感もあると思いますが、逆にそれだけの共感がえられているということでもあると思います。反響を見ての感想を教えてください。
【なご】男性が「触るだけが痴漢ではないと知った」と教えてくださって印象に残っています。知っていただくことが第一歩だと考えていましたし、伝わったことが特に嬉しかったです。「助けたいけれど本当に被害にあっているのか判断がつかない」そういう声もあったので、被害に遭わないことが一番ですが、被害にあってもきちんと助けを求められる環境になればなと思います。
――イラスト投稿後、どのような声がありましたか? 印象的なものを教えてください。
【なご】「駅にポスターとして貼って欲しい」といってくださる方が多くて、人に伝わるイラストになっていたことにほっとしました。また、「どんな被害があるのか初めて知った」「今受けている行為が迷惑行為であるとわかった」「子供への注意喚起に役立つ」などという声もいただき、描いた甲斐があったと感じました。イラストで全ての被害を網羅することはできませんが、私の要イラストが少しでも役に立てたことが嬉しかったです。