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ハンドメイド地位向上に一役の『minne』 一方、“楽して稼げる”イメージには危惧も…
2015年に大規模投資 今年、サービス開始後初の黒字に
阿部氏が力を入れたのは、作家と購入者が共に使いやすいサイト作りだ。「とにかく“シンプルで分かりやすい”を心掛けました。特に作家さんは、作品づくりに費やす時間が大きい。そのため、出品時の手間が少しでも省けるよう、ブログを更新するような感覚で、作品を登録できるサイトを構築しました」(阿部氏)
また同社は15年、ハンドメイド市場の拡大を図るため、大規模な投資を遂行。大々的にテレビCMを打ったため赤字幅は広がったが、阿部氏は「『minne』がハンドメイド市場を引っ張っていくんだという気概のもと、積極的な先行投資として行った。結果、市場を大きく広げることにつながった」と振り返る。
「現在、『minne』の収益の大部分は販売手数料の売り上げです。作品が売れると10%(税抜)が『minne』に入る仕組みですが、今後は企業と作家さんを繋ぐ役目として、企業のマーケティング支援やコラボ商品を展開するなど、収益の多層化を進めたい」(阿部氏)
テレビ番組の「楽して稼げる」で問われるハンドメイドの価値、価格破壊の危険性も
それに対し、作家らは「ハンドメイドが全部簡単に儲かると思われる」、「デザインの価値を無視してお金のことばっかり」などとSNS上に相次いで投稿。実際、販売イベントで「原価いくらなの? 安いんでしょ?」、「材料安いんだから値下げできない?」と言われ困惑した作家もいるという。
「ハンドメイドは安いという価値観が広がってしまうことは、作家活動に良い影響を及ぼさない。たとえ材料費を抑えられたとしても、アイデアを生み出し、形にするまでの月日や、作家さんの作業時間代なども価格には含まれる。その旨を考えず安価で販売してしまうと、ハンドメイド市場の中で価格破壊が起き、マーケットが縮小する危険性もある」(阿部氏)
パンモチーフの帽子で人気の『KENT HAT』のデザイナー・KENTさんは、もともと『アバター』を制作するイラストレーターだった。しかしブーム終焉とともに担当していたサービスが終了。退職後、帽子専門教室で2年間基礎を学んでから、“パン帽子”の販売を開始。帽子の売り上げだけで生計が立てられるようになるまで、数年の月日がかかったという。
ミニチュアフードのアクセサリーで話題の主婦作家の『すまいる*工房』さんは、子どもの頃から食品サンプル好きで、家事の合間に制作を始めた。自宅作業のため、時間の融通はきくものの、子どもの学校行事が多く、合間をぬって制作するなど多忙な日々を送っているという。
目標は『Amazon』 気軽に買い物に来てもらえるサイトに
ライバルのECサイトが増える中、阿部氏は「『minne』は売れるマーケットであることが重要」と指摘する。
「『minne』がスタートする前も後も、作家さんにとって販売方法はいろいろあった。店舗に卸して売る人もいれば、複数のECサイトに出品して売る人もいる。その選択肢を狭めることは、僕らにはできない。ただ僕らができることは『minne』が売れるマーケットであり続けるために努力すること。多くの人にハンドメイドの魅力を知ってもらい、『ここで買い物したい』と思ってもらえるサイトになることが重要ですね」(阿部氏)
目標は『Amazon』や『ZOZOTOWN』のような、男女問わず利用するECサイトだ。阿部氏は、「『minne』の作家さんは、それぞれ一つのブランドのように成長し始めている。『Amazon』のように、誰もが気軽に買い物しに来るサイトになることが『minne』の目標です。『minne』を通して、好きな作品、そして作家さんに出会ってほしい」と語っている。