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(更新: ORICON NEWS

自分が読みたい本を作る、幻冬舎編集者・箕輪厚介氏

見城徹氏との出会い、編集者として

――早稲田大学卒業後、双葉社に入社されましたが、もともと、エンタメ業界への就職を希望していた?
 普通の仕事を「真面目」に「淡々」と「地道」にやるタイプではなかったので、ふざけたり、めちゃくちゃなことが出来る仕事って何だろうと考えると、学生ながらにTV局のプロデューサーや雑誌の編集者は『遊んでいるような仕事』に見えたんです。だからそういった仕事は、「自分の力が発揮できる場所」という感覚はありましたね。

――入社して最初は広告営業を?
 そうですね。双葉社は「週刊大衆」というおじさん向けの雑誌がメインなのでその雑誌を担当しつつ、『EDGE STYLE』というギャル雑誌が創刊したので、それも担当することになりました。ギャルファッション誌のクライアントは、カラコンの会社やモデル会社の社長が多く、特に30代の若い社長が多かったんですよ。だから同世代の優秀な人と触れ合う機会が増えて、自分なりの商品開発をしたり、新規のクライアントをとってきたり、イベントを企画したりというのを自分発でやるようになりました。当時、秒速で1億円稼ぐ男 ネオヒルズ族「与沢翼」をテレビで知って、「面白いやつがいる」と自分からアポイント取って会いました。「イケてる雑誌を作ります」と言って3000万の制作費を出してもらったけど、社内の人間が誰もやりたがらず、広告部員ながら『編集長』に。幾多の困難な状況がありましたが、レスリー・キーに表紙を撮影してもらい「ネオヒルズ・ジャパン」を編集長として創刊しました。発売日当日に「与沢翼が書類送検」という修羅場もありましたが、結果的に3万部が完売。今では定価の数倍で売買される伝説の雑誌になりました。

箕輪厚介氏(C)MusicVoice

箕輪厚介氏(C)MusicVoice

――それから、編集部に異動に?
 そうですね。双葉社の中でも、2〜3年営業やって異動という形が多かったし、「ネオヒルズ・ジャパン」でヒットを飛ばしたこともあったので、編集部に異動しました。1冊目に企画したのが(株)幻冬舎社長 見城徹「たった一人の熱狂」です。僕の編集処女作ですね。もともと、見城さんの本を作りたいと思っていましたし、自然な流れではありました。社内では「書籍1冊目で見城さんの本なんて、まだ早い」っていう声もあったけど、意味が分からなかった。見城さんの過去の本や記事をすべて読んで記憶して、755(トークアプリ)でメッセージを送って、手紙を書いて、初対面で熱い想いをぶつけて。四六時中、見城さんの事を考えて、相手の心を想像して寄り添った。結果的に、僕の執筆依頼に応じてくれ、12万部のベストセラーになりました。

――堀江貴文氏「多動力」前田裕二氏「人生の勝算」前田航陽氏「お金2・0」など、箕輪さんが手がける作品が大ヒットし続けている、その要因はなんですか?
 僕はまず、自分が読みたい本を作るし、自分が好きな本を好きな著者と作る。好きだから1冊でも多く届けようと努力しているし、どうやったら売れるかを死ぬほど考えている。最近だと、本を出す前に中身をSNS上でアップして、ムーブメントや小さいコミュニティ、出版、経済圏を作って、そこにしっかり届くようにしている。そこからコミュニティの輪を徐々に大きくすることにより、大きく空振りしないような、最低限のところを確保しつつ売っていく。いいものや本質的なものは大きく火がついて、ヒットにつながります。そういう細かな部分も考えてやっていますね。

――ヒット作品を出しながら、2017年4月に「NewsPicks Book」の編集長になられて、毎月1冊ずつ出版されている。かなり大変だったのでは?
 『月1冊出す』というのがどれだけ辛いとか、しんどいとか、これだけ部数を売らなければとかは最初は考えずに、「とにかく面白そう」「やったことないからやってみよう」とか、そういう「好奇心」を大事にしてやっただけですね。その瞬間は「がむしゃら」で「夢中」で楽しい。振り返ったら色々あったな、疲れたなという感じです。もちろん、大変だなと思いましたけど、そう言ってもしょうがないんで、「ただただ夢中になるだけ」という感じです。

――「NewsPicksBook」の著者には、多くの起業家がいます。一緒に仕事をして特に感じることはありますか?
 (株)SHOWROOM社長 前田裕二や(株)メタップス社長 佐藤航陽、落合陽一とかは『旗を立てる』のが本当に上手いですよね。みんながそこに向かって走りたくなるような「ビジョン」「世界観」をうまく言語化して、社員も、年長者も、メディアも巻き込んでいく。そういうのが上手い人がある種、活躍している。特に5年前と違うのは「今、ゲームが儲かるよ」とか「〇〇の業態がめっちゃ金になる」とか、金銭的に大きいかどうかで、若い人がそこに飛び込んでいく傾向があったと思います。それは悪いことではないけど、優先順位が「『金』『ビジネス』として儲かるか」というのが5年前の流れだった。でも今は、目指しているものが「面白い」か「ワクワクする」か、自分がやっていて「楽しい」かというのが重視されているし、それをピュアにやっている人に好循環が生まれて結果的にお金になる。会社やプロジェクトは、どれだけ優秀な人を集めるかなので、今の起業家は「儲かる」「儲からない」というより、「こういう世界が実現したら幸せだよね」と言える人、共感を呼び、人を巻き込める人が強くなっていると思いますね。

箕輪厚介氏(C)MusicVoice

箕輪厚介氏(C)MusicVoice

――箕輪さんにとって、仕事の活力、これがモチベーションだというものはなんですか?
 仕事の活力は『仕事』、的な話になりますね。「お金」や「評価」みたいなものをモチベーションにして仕事を頑張るというよりも、それをやってること自体が楽しい。もちろん、そんなに楽しい仕事ばかりではないけれど、「報酬」をモチベーションにするよりは、単純にこれが好きだからやってるんだという風に思い込む感覚でいますね。目の前の仕事が「嫌」だと思ったら、なんで「嫌」なのかを考えて、それでこの「嫌」なことは、こっちの「良い」ことと繋がっているのかなという発想をする。逆に、どう考えてもその仕事が嫌でやる意味がなければ、自分の収益にマイナスがあったとしても、人間関係が崩れても「どこかで捨てなければいけない」という覚悟を持って、その仕事は「やらない」ようにしています。できるだけ、好きの純度が高く、やりたいことだけをやっている状況を保てるようにしていますね。

――最後に、著書『死ぬこと以外かすり傷』を、こういう人に読んで欲しいというのはありますか?
 あります。明確に、『若い人』です。あえて読者を狭めてもいい。『若い人』と言っても、年齢ではなく、いわゆる、『変化を望む人』『新しいことに挑戦しようと思う人』です。本の中でも、「こっちの世界にきて革命を起こそう」とか「今こっちは盛り上がっている」と書いています。あえて「こっち」という表現をしたのは、良くも悪くもあらゆる世の中において『旧世代』『新世代』で別れてきているから。ホリエモンの世代までは新しい世代が何かを成し得ようとすると、上の世代を倒さないと無理だったけど、今は若い人が「勝手にこっちで楽しむから」と思えば、新しい世界が実現できる。仮想通貨でもそうですけど、銀行を覆す必要もなく、自分自身で勝手に楽しんで、勝手に儲かる奴が出てくる。だから、その新しい変化に敏感な人たちに読んで欲しいし、もっと言うと、あまりベストセラーになっても意味ないなと思っています。三万部とかでも、深く心に届いて、結果として、そのうちの何割かが僕のオンラインサロンに入って、実際の仲間になってくれたらいいなと。変に広くせず、分かる人がすごく深く、分かるように。そういう想いを込めて書きました。

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箕輪厚介氏(C)MusicVoice

箕輪厚介氏(C)MusicVoice

 忙しい合間を縫って、インタビューに答えてくれた。時間がなかったので、前半はタクシーの中から電話インタビュー。著書発売前でテレビやイベントに引っ張りだこの中、慌てた様子で会議室に現れた箕輪氏は、とても気さくで丁寧な方だった。締め切り前は、朝3時に会社に行ってゲラのチェックをする。サラリーマンでありながら、多くのプロジェクトをこなし、編集長として毎月本も出す。箕輪氏の行動を近くで見ている人や「箕輪編集室」の仲間は、箕輪氏に自然と背中を押されすぐに行動し、日々の生活の中で「やりがい」や「楽しさ」を感じているのだろう。誰よりも「結果」や「数字」にこだわり、誰よりも努力する。『今すぐ動け』『熱狂しろ』そう言って「旗を立てる」箕輪氏の存在は、出版界だけではなく、私たち働く30代にとっても「大きな存在」になっていくはずだ。

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