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GRAPEVINE・田中和将 ひねくれた表現の裏にある流行への“違和感”

 今年デビュー22年目を迎えるロックバンド・GRAPEVINEが、2月6日に16枚目のオリジナルアルバム『ALL THE LIGHT』をリリースした。前作から1年5ヵ月ぶりとなった本作は、ブラスサウンドが印象的な先行シングル「Alright」、バンド初のアカペラ楽曲「開花」など、バラエティに富んだ10曲が収録されている。今回、田中和将(Vo, Gt)への初となるインタビューを実施。それを機に、新譜の話題からは少し離れ、オーバーグラウンドでもなければアンダーグラウンドでもない、独自のポジションを築いてきたGRAPEVINEへの素朴な疑問、ここまでバンドを「転がし続けてきた」意味を語ってもらった。

これまで「売れたい」という思いはあったか

「ランキングを気にしていたのはデビュー直後とか、まだ自分たちの行く末を気にしていた時期ぐらいです。僕らの場合、セカンドアルバム(1999年発売の『Lifetime』)が時代的な追い風もあってちょっと売れて、初登場3位とかだったかな。周囲もそれを気にしていたときだったので、お祝いしてくれて」

 これは「セールスは気にするか?」という単刀直入な質問に対する田中の回答だ。過去には「ポストMr.Children」と称されることもあったが、そこに影響されることなく、自分たちが素直に良いと思うものを生み出してきた。

田中和将“売れる”っていうことは世の中の時流みたいなものに自分たちが乗っているっていうことですけど……想像できないですね(苦笑)。ポップな音楽は好きですけど、自分たちはそこに“いびつさ”を加えて作ろうとしているわけですし。それでも今年22年目になって、本当に周りに支えられているといいますか。こういうタイプのバンドマン、ミュージシャンが増える世の中になってほしいとは思いますね。
 長く続けていけば、他のミュージシャンからの支持も増えてくる。特にGRAPEVINEは、GLIM SPANKY、Suchmos、ストレイテナーのホリエアツシ(Vo,Gt)、UNISON SQUARE GARDENの斎藤宏介(Vo,Gt)など、若手からのリスペクトが多い。

田中和将ありがたいですね。僕もたくさんリスペクトするミュージシャンたちがいて「好きだ、好きだ」と言っていると夢が叶って、何らかの形で会えたり、同じステージに立てたりした。それは全然描いていなかった出来事です。

 その発言に端を発し、そもそもGRAPEVINEは「明確な目標」を定めていたのだろうか。

田中和将もともと野心がそんなになかったのか、デビュー当時も漠然とした目標しかもってなかったんですよ。それもCDの売り上げではなく『これぐらいの規模の会場でライブをやりたい』というぐらいの目標。恵比寿に移転する前の新宿LIQUIDROOMなんですけど。デビューして1年くらいでそれをクリアしてしまって、そこからは途方に暮れています(笑)。

 “ライブ会場”ということであれば、多くのミュージシャンが目指す場所のひとつ、「日本武道館」を一度は考えてもおかしくない。

田中和将イベントで何度か出演したことがあって、演奏した感触は悪くないんですよ。だから武道館でワンマンもやってみたいとは思うんです。でも、やるからにはスペシャルなものを期待されるというか、たとえばアニバーサリー記念ライブだったり“意味合い”を持たせなければならないのが少々煩わしいなと。だからそのハードルを下げるために、去年はライブのMCで『21周年ツアーです』とか言って、節目の意味合いを薄めてたという(笑)。

「わかりやすいものへ流れていく風潮」に抵抗していきたい

 抽象的な歌詞、Aメロとは異なる曲展開、そしてここまでの発言からもわかるように、GRAPEVINEの作品を形容するとき「ひねくれた」という言葉が多々用いられることがある。もちろん、それは本人も自覚しているところだ。

田中和将わかりやすいものへ流れていく風潮にどうにかして抗いたいと思っています。それはもう昔からですね。

 ここまでオリジナルアルバムは16作と、22年の活動で、コンスタントに作品を発表し続けてきた。レビュー機能の付いたオンラインストアでは、それぞれに歌詞や楽曲に細かい感想が書かれている。“語りたくなる”作品があることの裏返しでもある。

田中和将それがすごい正しいあり方な気がしています。人によって好きなアルバム、好きな曲も違うでしょうし。個人的には、初期の作品を聴き直すと未熟だなと思います。それは至極当然のことであって、だからといって悪い作品というわけでもないですけどね。

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