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『脱力タイムズ』に“逆オファー”が続々、独自路線バラエティーに俳優・女優が出演望む理由
報道ベースのコント番組、ベッキー、矢口、MC有田とローラの熱愛までいじる破天荒ぶり
木村拓哉が出演した1月18日放送回では、「日本のホテルが抱える問題点」をテーマに議論。ホテル事情に詳しい芸人の解説で進行するはずだったが、スタッフが呼び込んだのは映画『マスカレード・ホテル』主演の木村拓哉。ただ一人、それを知らされていなかったお笑いコンビ・和牛の川西賢志郎が、テンパりながらも木村に台本どおりの暴言を吐く…という展開だった。さらに木村は、“あすなろ抱き”や名セリフ「ちょ、待てよ」も再現。サービス精神旺盛に番組を盛り上げ、平均8.1%という番組最高視聴率を更新した。
ほか、ベッキーや矢口真里の出演回では不倫ネタや下ネタに触れ、松坂桃李にはIKKOになりきって進行させるなど、その傍若無人ぶりが話題になることもしばしば。また、かつて有田との熱愛が報じられたローラが出演すると、2人はスクープ写真を再現。「ローラと有田のフライデー再現、笑った」「これこそ神回」「企画した有田もオファーを受けたローラもすごい!」など、その都度SNSはお祭り騒ぎになり、破天荒な内容にファンも多い番組だ。
蒼井優、北川景子、佐藤健らもファン公言、田中圭も熱心な収録準備に勤しむ
昨年10月に出演した佐藤健も、「番組を観ていた」というファンの一人。「ほかのバラエティー番組は、どれも意識的に“テンションを上げていく”ところが多いと思うんですけど、この番組は違いますよね。ほかの番組にはない、その違いに惹かれた」と、『脱力タイムズ』へのリスペクトを語った。
一方、俳優陣の収録に臨む姿勢も熱い。土屋太鳳(昨年9月出演)は、「打ち合わせの時から、頭の中でずっと『この役柄でいこう!』とか、『お芝居のときみたいにいこう!』とイメージトレーニングして臨んだ」とコメント。「他に読まなきゃいけない台本があったのですが、とりあえず置いておいて、“脱力”の台本に専念しました」と、本業そっちのけで事前準備に勤しんだのは田中圭だ(昨年12月出演)。「ひとつキャラクターというか、変に自分を出さず出演した方がいいのかな」と、同番組ならではの自身のスタンスも見出したようだった。
俳優陣の『脱力タイムズ』出演は、演技の腕の見せ所であり好感度アップのチャンス
番組総合演出の名城ラリータ氏は、ORICON NEWSのインタビュー(17年10月)で「本当にその人(出演者)が思っていない、台本でやっているということを視聴者の皆さんもわかっているので、逆にやりやすいのかもしれない。作り手側からすれば、バラエティーとドラマを分けて考えるんですが、演者さんにとってはあまり関係がないのかなと」と、出演陣の心情を分析。
前出の衣輪氏は、「俳優陣が視聴者の1人として番組自体の面白さに魅力を感じていることは大前提」としつつ、「昨今は視聴者が“テレビ的な嘘”を嫌う傾向にありますが、同番組にはきっちりした台本があり、番組側も隠していない。視聴者もそれを知っているため、逆説的に安心感と面白みが生まれるんです」と、番組の特異性を語る。
また、「ゲスト俳優陣は番組の仕掛けにのっとり、真顔でふざけた演技をすることになりますが、唯一芸人だけは収録内容を知らないため、そこから生まれるツッコみなどにアドリブで応える必要もある。つまり演技面での腕の見せ所であり、ある意味、舞台にも近い。さらに、他では見られない面白さや、こらえきれず笑ってしまうような素の部分も見せられることで、視聴者からの好感度も上がるのでは?」と、俳優側のメリットも分析する。
プライベートの切り売りをせずに、“単なる番宣”以上の効果をもたらす
番宣として俳優たちがバラエティーやトーク番組に出演することは珍しくないが、そこではどうしても“プライベートの切り売り”になる危険性があり、本業に良い影響をもたらすか、悪い影響をもたらすかは、時間が経ってみないとわからない。だが、『脱力タイムズ』ではプライベートを明かす必要がなく、なおかつ“単なる番宣”以上の効果や印象を残すことができるのだ。番組の面白さもさることながら、出演することで得られるものも多いだろう。俳優陣からの『脱力タイムズ』への“逆オファー”は、ますます増えていくのではなかろうか。
(文/西島亨)