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“クッパ姫”のイラスト合戦に見る「オタクカルチャー肥大化」の功罪
一方、加熱する“クッパ姫”ブームに対して、他のクリエイターからは注意を呼びかける声も挙がっている。“クッパ姫”ブームをはじめ、二次創作はどこまで許されるのか? 肥大化するオタクカルチャーがもたらす功罪とは?
スーパーマリオシリーズのキャラクターを二次創作 ネットで騒ぎに
そもそもは9月19日、マレーシアのTwitterユーザーであるhaniwa (@ayyk92)氏がイラストを投稿したことがきっかけとされ、多くの類似イラストが登場し、「キングテレサ姫」や「ヨッシー姫」などの派生キャラクターも誕生。『ワンパンマン』作画の村田雄介氏や『ポプテピピック』大川ぶくぶ氏などの人気漫画家も参入し、日本はおろか海外でもクッパ姫に関する投稿や関連ワードが一週間ほどTwitterの人気ワードになった。
そもそも同人活動とは? 一部のファンがこっそりと楽しんでいた“非公式作品”
同人活動には、「あくまでも一部のファンがこっそりと楽しむもので本家には迷惑をかけない」といった最低限のマナーのようなものがあり、特に二次創作物に関しては、元ネタのファンや他人に不快感をもたらす可能性があることを自覚する必要がある。しかし、昨今のSNSの普及によって二次創作を公開することのハードルが低くなり、ルールを守らない一部ファンたちの自己中心的な問題行動が目立ちはじめ、同人活動の根幹をなす「オリジナル作品をリスペクトする」という基本概念も揺らぎ出したのだ。
公式キャラ化への署名活動が勃発、一方で創作主がルール遵守の注意喚起
きっかけとなった先述のhaniwa氏も、「ピーチ姫を悪役風に描きクッパの要素を足したものでファンアートのテーマとして長年存在していたもので、私自身はここから収益を上げるようなことはしていません。求められていないところでクッパ姫の話題を振らないでほしい」など、同人ルールを守っていることを表明している。
『FAIRY TAIL』で知られる漫画家の真島ヒロ氏も「若い作家さんに少し覚えていてほしいのは、自分の立場、版権元、自分と契約中の会社、他者との関係などを考慮して、最悪自分以外の誰にも迷惑がかからないという担保を得てから好きな活動をしてほしい」とツイートしている。
二次創作のルール崩壊は、同人活動崩壊に至る場合も
このゲームに対し、故・手塚治虫さんの娘でありコンテンツ展開の監修を手がける手塚プロの取締役・手塚るみ子氏は「手塚作品の全ての企画を私が監修してるわけではありません。また取締役とはいえ社長ではありません。各事業にはそれぞれ営業がいてビジネスとしての判断をもって契約しています。理解を越えるものがあっても多様性は必要だと思うようにしています」と慎重なコメントを発表。
過去には恋愛シミュレーションゲーム『ときめきメモリアル』(コナミ)のように、黙認と思われていた状態から突然、法的手段の行使に至る場合や、『しまじろう』(ベネッセ)のようにいったん許諾したものの急に取り消し、結果としてファンダムによる同人活動が事実上崩壊に追い込まれたケースもある。こうした“最悪の事態”を恐れ、低くなりすぎた二次創作へのハードルやマナー意識に対して、創作者側も危機意識をつのらせているのだろう。
本来はキャラクターを応援するはずだったファンの行動が、安易で自己中心的な意識から逆にオリジナル作品を傷つける可能性は多々ある。同人活動全般が禁止されたり、法的な制裁に発展すれば、これまでの日本のオタクカルチャーを支えてきた二次創作活動が衰退・絶滅することだってあり得るのだ。今後は、同人活動や二次創作に関わる人たちのリテラシー能力(作品を適切に理解して表現すること)の向上があらためて求められるだろう。