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(更新: ORICON NEWS

宮藤官九郎 SPECIAL INTERVIEW 脚本家ではなく映画監督としてのおもしろさ―― 照れずに自分を出してみようと思った映画

日本の朝を明るく盛り上げるNHK連続テレビ小説『あまちゃん』の脚本家・宮藤官九郎の、3本目の監督作となる映画『中学生円山』がついに公開される。さわやかな朝ドラから一転、映画館の暗闇に映し出されるのは、中学生男子のくだらない妄想をアクションと絡ませた、抱腹絶倒の異色コメディだ。『あまちゃん』ヒロイン・天野アキを熱演中の女優・能年玲奈から「じぇじぇじぇ!こんな作品見せるなんて!尊敬する宮藤さんをセクハラで訴えたいと思います(笑)!」というコメントが届いた本作への意気込みを、監督に直撃した。

        なかなか成長できない思春期を真っ正面から大真面目に

――まずはタイトルの“中学生”に込められた意味から教えてください!
【宮藤】 自分の中学生時代を思い返すと、誰それの息子ではなく、そろそろ一人前の男として見てほしいという理想と、とはいえ自立した大人では決してない、という現実とのギャップにモヤモヤイライラしていました。そんなやりきれなさを僕の場合は友だちやアイドルが救ってくれたけど、本作の主人公・円山克也には何もない。そこに正体不明の男・下井(辰夫)さんが現れて、つまらない妄想でも許容してくれる相手ができたことで、ようやく克也は平凡な暮らしから一歩外に出る。でもやっぱり現実はうまくいかなくて……。というただ妄想するだけで、なかなか成長できない思春期を、真っ正面から大真面目に取り上げた映画が作りたかったんです。

――大人の階段を昇り始めた実感のないまま、子どもじみた妄想を爆発させるのに日々忙しい、中2男子・円山克也のエネルギッシュな特大妄想劇。CGやアクションを駆使して、バカバカしい妄想と現実のドラマを交差させる手法で紡ぎ出された無防備な世界には、懐かしい開放感を覚えました!円山役の平岡拓真くんは、撮影当時リアル中学生だったとか?
【宮藤】 (克也には)脱ぐシーンが多かったんです。撮影中、平岡君には「恥ずかしがってんじゃねーよ!」って怒鳴り散らしていましたね、部活ノリで(笑)。そんな克也を翻弄する、下井役の草g(剛)君の演技は、作りすぎず、ハマりすぎず、ハプニング感あふれる絶妙な存在感で素晴らしかった。草g君は“果たしてこの映画は成立するのか?”と不安だった最初の段階で、脚本を読んで「おもしろい!」と言ってくれて。その言葉は僕の支えでした。彼なしではきっと、この映画は成立しなかったと思います。

――青春あり、LOVEあり、韓流ドラマもヒーローも、笑いも涙もてんこ盛り!!エンタメ界の常識を飛び越え続けてきた、宮藤監督らしい本作。宮藤印のバカ炸裂妄想ワールドを、映画というリアルな形に落とし込むにあたって、どんな不安があったんですか!?
【宮藤】 前作『少年メリケンサック』のスタッフが再結集してくれたこともあり、シナリオライターとしての自分が、初めて映画監督としての自分を信用してもいいかなって思えたんです。それでシナリオで保険を打つのを止めました。セリフにギャグが入っていないので、読みものとしては、さほど面白くなかった?と思います(笑)。そのぶん、撮影前にスタッフと何度も打ち合わせを重ねて、僕の頭のなかにあるイメージを共有し、それをいかに具体化していくか、シミュレーションした上で撮影に臨みました。言葉ではなく、克也の悶々とした表情、「……」という行間をどう演出するか?僕にとってはチャレンジでした!

            案外俺って品の良い人間なんだなって(笑)

――俳優、脚本家、ミュージシャンなど幅広く第一線で活躍し続ける宮藤さんにとって、映画監督のおもしろさとは?
【宮藤】 シナリオライターとして映画に携わると、完成作を観た時“このセリフ、こんなに大きな声で言うんだ!?”“このシーンをこんなに長く撮るんだ!”とか、監督の(シナリオに対する)誤解が新鮮で嬉しい。人にはいろいろなものの見方があるんだって改めて気づかされて。自分で監督すると、誤解のないぶん、意外な驚きはない。でもいちばん理想には近い。何より(監督の)僕が“まいった!”って言わない限り、いつまでも映画は完成しないので、どこまでもこだわれる。そこが楽しいですね(笑)。本当のことって恥ずかしいんで、エッセイにもほとんど書かないんですけど、この映画に関しては、照れずに自分を出してみようと思っていました。年を取って丸くなったとは言いたくないけど、あの頃の自分を客観視できるようになったというのか。たぶんいろいろな角度から物事を見られるようになったんでしょうね。“中学生の頃なんて、みんなこれくらいバカなんだよ!でも大丈夫。今は楽しい大人になってるよ”って(笑)。

――なるほど。監督のあったかい眼差しに包まれたせいか、劇的な成長こそないものの、最後には克也の変化がちゃんと感じられる、映画らしい映画になったんですね!
【宮藤】 映画館で映画を観ている間は個人になりますから、(映画が)直接その人個人に語りかけている感じになると思うんですよ。そこがテレビとは違う気がする。例えば何かをズームで見せる時“これを見ろ!”という意味が、映画の方が強いんじゃないかな。映画を観て“あ、この監督と喋ってみたいな”と僕が思うときも、作品の善し悪しというより、スクリーンから滲み出る監督の眼差しがすごくいいなって感じるからで。自分で自分のことはわからないけれども、映画を観てくれた人から“宮藤ってこういう人間なんだろうな”って思われることも含めて、映画にはすごく人間性が出ると思います。今回は下ネタをど真ん中に据えて作った映画にも関わらず、お客さんが引いていないということは、結果的に品の良い映画になっちゃったなって。案外俺って品の良い人間なんだなって、最近時々思ってます(笑)。
(文:石村加奈)

映画情報

中学生円山

団地と学校を往復するだけの中学2年生の円山克也。思春期真っ盛りの克也は、頭の中ではエロいことばかり考え、ある目的のために自主トレと称して身体を柔らかくする努力をしている。ついに、限界まで背骨を折り曲げて妄想の世界にトリップするようになってしまう。その頃、上の階に下井辰夫という男が引っ越してくる。シングルファーザーで、妙に団地の主婦たちの間に溶け込んでいる。そんなある日、団地の近所で殺人事件が起こり、克也は謎が多い下井が殺し屋ではないかという妄想に取りつかれてしまう……。

監督:宮藤官九郎
出演:草なぎ剛 平岡拓真 遠藤賢司 ヤン・イクチュン
2013年5月18日(土)全国ロードショー
(C)2013「中学生円山」製作委員会

OFFICIAL SITE

関連リンク

映画『中学生円山』公式サイト
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