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マーベル、LGBTQヒーロー登場で非差別への動き活発化

  • 映画『デッドプール2』で共演、デッドプールを演じたライアン・レイノルズと、レズビアンキャラを演じた忽那汐里 (C)ORICON NewS inc.

    映画『デッドプール2』で共演、デッドプールを演じたライアン・レイノルズと、レズビアンキャラを演じた忽那汐里 (C)ORICON NewS inc.

 映画『アベンジャーズ』『アイアンマン』などを手がけるマーベル・スタジオの社長ケヴィン・ファイギ氏が先日、女性の監督も積極的に登用していく考えを発表。またマーベル映画にLGBTQのキャラクターを登場させることにも言及した。現在のハリウッド映画を牽引しているといっても過言ではない“マーベルヒーロー”による非差別化の動きが活発化している。

ハリウッドが抱える性差別問題や人種差別

 現在、ハリウッドは様々な差別やハラスメントの問題を抱えている。昨年、ハリウッドを揺るがしたのは、敏腕製作者ハーヴェイ・ワインスタイン氏のセクシャルハラスメント。セクハラ被害をSNSで告発する「#MeToo」運動が大きなムーブメントとなる火付け役となった。

 またアカデミー賞など華やかな賞レースで近年問題視される「ホワイトウォッシュ」。いわゆる黒人差別問題で、黒人がノミネートする確率が低いのは差別があるからとする考えだ。ほか、映画『グレイテスト・ショーマン』で知られる俳優ザック・エフロンがイメチェンでドレッドヘア姿をインスタグラムにアップした際に「ドレッドヘアは黒人のもの」「文化の白人化であり侮蔑」など批判の声が多数挙がった例もある。

 そんな非差別化への背景もあってだろうか、昨今マーベルでは、これに呼応した多くの動きが見られるようになった。

そもそもマーベルのコミック原作にはLGBTQヒーローが多数

 マーベル・コミックの“顔”ともいえる存在の一つ『X-MEN』。X-メンとは、突然変異によって超人的能力を持って生まれたミュータントの集団で、その世界観は独特だ。この物語の人類は、ミュータントの特異な能力から「将来主導権を取って代わられるのではないか」と危惧しており、差別・迫害を強める。そこに超人的能力で人間を支配しようとするテロリスト・マグニートーが出現。人間を守りミュータントに対する偏見を払拭しようとするプロフェッサーXと対立。様々な差別問題を暗喩として取り込んだこの『X-MEN』は、「20世紀フォックス」から映画化、人気を博している。

 「コミック『X-MEN』が誕生したのが、アメリカで公民権運動が盛んだった1960年代。黒人差別などの人種差別撤廃の動きに影響されて描かれたコミックです」と話すのはメディア研究家の衣輪晋一氏。「マーベル・コミックは差別撤廃などの社会問題では先駆者的な存在でもあり、LGBTQのヒーローも多数登場。例えば『デッドプール』は全性愛者とライターが明かしていますし、『X-MEN』のミスティークはバイセクシャルであることが物語から感じ取れます」(衣輪氏)

 映像の方に目を向けてみても、昨今の例では「20世紀フォックス」配給の『デッドプール2』で、忽那汐里とブリアナ・ヒルデブランドが、マーベル映画史上初となるレズビアンキャラのロマンスを好演。映画『ブラックパンサー』はマーベル初となる黒人ヒーローの単独映画で、黒人俳優がメインキャスト。当事者の黒人だけでなく、世界的にも評価されている。

 今後も、マーベル作品初の女性監督(男性との共同監督)にして、初の女性ヒーロー単独映画『キャプテン・マーベル』や、イスラム教徒の女性ヒーローを描く『ミズ・マーベル(仮)』の公開も控えていたりと、非差別への動きがより顕著になって来ている。

マーベルの親会社ディズニーでもLGBTQや人種差別批判への動きが

 そして現在、マーベルの親会社「ディズニー」でもこれらの動きが活発だ。実写『美女と野獣』ではル・フウがゲイと伺えるシーンが。『アナと雪の女王』のエルサもディズニーのプリンセスたちのなかで唯一、男性に対する愛が描かれておらず、ネットを中心にエルサに同性の恋人を求める動きが加熱。これにエルサの声優イディナ・メンゼルは「こうした会話がなされること自体が素晴らしい」とコメントした。

 また『アンディ・マック』ではディズニー・チャンネル史上初となるゲイキャラが登場。アニメ『ズートピア』の多種多様な動物が登場する世界観は、多民族国家アメリカがモデルと言われており、人種・女性差別、多様性について深く考えさせられる内容に。アメリカのディズニーリゾートではLGBTQの象徴の色であるレインボーカラーのグッズを展開。ミッキーのヘッドアクセサリー「レインボーラブ」が話題となった。

日本人が感じる、露骨な非差別への違和感

 だがこれらが順風満帆であるとはいえない。「前出の『ブラックパンサー』では、描かれる登場人物や文化などが、アフリカの黒人に対する“ステレオタイプ”で差別とする動きも。このようにどこからか批判の声が噴き出してしまうことは多々あるのです。また『美女と野獣』は、ゲイ描写が要因でマレーシアは公開中止(後にPG13指定で公開)。ロシアでは16歳禁指定。市場の大きい中国もLGBTQ文化に対して批判的ですから興行収入面でのリスクも」(衣輪氏)

 一方で日本だ。「多民族国家ではない日本とアメリカとでは差別の意識に乖離があります。例えば『攻殻機動隊』では日本人の主人公をスカーレット・ヨハンソンが演じたことで本国では“ホワイトウォッシュ”と問題に。日本では寧ろ、米映画なのだから白人が演じるだろうという意識があり、騒動になったことに驚いた人も多いのでは。また『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』ではアジア系女優ケリー・マリー・トランが槍玉に。確かに脚本や必然性に問題はあったかもしれないが、彼女がインスタグラムを全削除するまで追い込まれたのは“なにもそこまで”でしょう。ですがこれはアメリカでは人種差別が未だ根強い証左です」(同氏)

 ハリウッドを牽引するマーベルやディズニーの動きは「LGBTQ差別や人種差別などを批判していく意味でも良い流れ」と衣輪氏。だが「差別する人と反対する人の対立軸ばかりが目立ち、実際に被害に遭っている人が置いてきぼりにされる“守られるべきものの不在”が起こることもある。対立は対立を生み、目的と手段が逆転する本末転倒も多々あるのです」と現状を危惧している。

 昨年末からディズニーの20世紀フォックスの主要事業の買収が進んでおり、『X-MEN』が『アベンジャーズ』と合流する可能性が出てきた。『X-MEN』など差別を暗喩的に扱う作品がマーベルと融合することで、より違和感の少ない“非差別の正義“を訴えた作品が今後、増えていくことを心から望みたい。

(文・中野ナガ)

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