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『おっさんずラブ』あえての“公式裏アカ”戦略 公式アカウント超えるフォロワー数に
放送終了後もフォロワー35.3万人、ドラマSNSが新たな経済効果を生む
『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系)のインスタフォロワー数は約24.2万人(5月25日時点)。ドラマでは石原さとみ演じるファッション誌の編集者を夢見る主人公・悦子のファッションチェックコーナーが見どころの一つとなっており、インスタでもファッションコーデを確認できる画像が投稿され話題となった。
「このように、ドラマの独自性を盛り込んだSNS投稿でユーザーを引きつけている例が多数見られる」と話すのは、ドラマ『FINAL CUT』(関西テレビ制作)などの公式HPライターを務め、ドラマの宣伝にも詳しいメディア研究家の衣輪晋一氏。「“みくり飯”の盛り付けがきれいできっちりしている料理写真には、みくりというキャラの性格が表れていました。“逃げ恥”では関連食品が売れたほか、平匡(星野源)のキッチングッズもネットユーザーから次々と紹介され話題に。“地味スゴ”の石原さんのファッションコーデの投稿も、着用アイテムがネットでバカ売れ。類似品すら完売するほどの人気でした。これらのことから、ドラマのSNSは新たな経済効果を生み出しているといえます」(同氏)
『おっさんずラブ』“直球”の公式に対して“ストーカー目線”つらぬく裏アカ
裏アカはどうか。投稿内容は、アカウントの主である部長・黒澤武蔵目線の「隠し撮り」写真が主で、投稿文やタグには「〜だお」「天使マジ天使」「存在が神〜」など、部長のキャラクターにあった乙女な言葉遣いが。例えば5月9日には、「何者かと待ち合わせをするはるたん(田中圭)を街中で発見( ̄^ ̄)ゞ 何者って、まぁお客様だよね。普通にね」と投稿。タグには「ついつい嫉妬だお」「寒くて寒くて震える?」「後ろからハグしてあげたい」「お前が俺をホッカイロにしたんだ」との文言となっている。
隠し撮りというある種の“ストーカー的”な投稿でありながら、ユーザーからは“部長がかわいすぎ”“つい部長に味方してしまう”などの声が。こうした投稿が結果としてドラマに登場するキャラの印象を良くし、SNSアカウント自体のヒットにつながっているのはなぜか? 衣輪氏は「もちろん吉田さんの好演や、物語に沿ったものであることもありますが、一番の要因はアカウント主である部長とユーザーの間に、“秘密”を共有する“共犯関係”が築かれていることにあるのでは」と話す。
“隠し事”や“秘密”のある存在は、人の心をざわつかせ、興味を惹かれるという人の心理がある。若い世代ではSNSの本アカと裏アカを使い分けることが常識になりつつありるが、裏アカの場合は“鍵アカウント”で、人に見られたくない内容を投稿するクローズドなアカウントであるケースが多い。裏アカの投稿内容は、本来なら信頼している人にしか見せない“秘密の投稿”なのだ。
「隠し撮りなどの“秘密の投稿”をあえて公式でやるということは、SNSにおける裏アカの役割をパロディしているということでもあり、その分親近感もある。結果、部長やドラマへの好感度・親密度アップに貢献しているのです」(衣輪氏)
“裏アカ”という手法が、番組宣伝のいやらしさを払拭
『おっさんずラブ』の公式と裏アカのフォロワー数を合わせると66.7万になる。これは今期のドラマで最大級のSNSアカウント。物語が進むにつれ、この裏アカでさらなる部長の秘密も明かされていくだろう。今後のテレビ界の宣伝方法の発展とともに楽しみながら見守っていきたい。
(文/西島享)