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結成20周年のコブクロ、いま感じる「全部ひっくり返したい衝動」とは?

 今年9月に結成20周年を迎えるコブクロがシングル「ONE TIMES ONE」を発売。路上ライブからスタートした彼らは、「蕾(つぼみ)」や「桜」などが大ヒットし、2006年発売のベスト盤は累計でトリプルミリオンを記録。『NHK紅白歌合戦』への出場も果たし、一躍ビッグアーティストとなった。だが、決して順風満帆なばかりだったわけではなく、2011年には活動休止も経験。紆余曲折あった20年、黒田俊介がいま感じる「全部ひっくり返したい衝動に駆られる」とは?

運命的ではないが、「たまたまも20年続けばたいしたもの」

――コブクロは今年9月で結成20周年。そんな節目を前に、5月から2人だけのツアーを展開しようと考えたのは?
小渕健太郎 去年のツアーが終わる前に、黒田から「2人でやるのはどう?」という話が出て。今までアコースティックライブはやっているんですけど、そういうしっとりした雰囲気じゃなく、ギターをかき鳴らして高らかに歌い上げるのもありだなと思ったんです。

黒田俊介 20周年を迎えるためのステップなので、ルーティーン以外の、自分たちが一番新鮮に感じることをやりたいという話をしていて。かといって奇をてらうのも違うし、何が一番新鮮なのかを考えた結果、やっぱり2人だけで歌うことだなと思ったんです。

小渕健太郎 歌とギターと、足してもハープくらい。最小の音数で歌を届けたいという気持ちや姿勢が伝わるツアーにしたいんですよね。聴いている人の中で鳴るオーケストレーションやアンサンブルを引き出すような、実際には鳴っていないストリングスが聴こえるような歌を届けたい。そういう中で『WELCOME TO THE STREET』というツアータイトルが浮かんで、同時に“ONE TIMES ONE”という言葉が浮かんできたんです。それが今回の新曲に繋がりました。
――そうしてステージに立つカタチそのものが、“ONE TIMES ONE”なんですね。
小渕健太郎 僕と黒田が1と1で立っている。そこでの1×1の答えは1ではなくて、無限だという意味での“ONE TIMES ONE”なんです。僕と黒田は、路上でたまたま出会った。でも、そのたまたまも20年続けばたいしたもんだなと思うんです。運命的な出会いとかではないものが長続きすることほど面白いことはないなと思うし、みんなの日常生活の中でもたまたまのことが尊く感じられることがあると思う。だから歌詞的にも、歩いてきた道のりの困難さ、気づかなくなってしまったことに目を向けつつ、今の立ち位置を確認するような感じになったんです。まだまだ通過点だし、目の前の20周年に向かって「全員で大行進しましょう!」という気持ちがそのまま作品になりました。

黒田俊介 マーチみたいな曲調を聴いたとき、編成がかなり大きい曲なので、「ツアーは2人しかいないのに再現できるのか!?」と思いましたけどね。実際、レコーディングのときは、過去最大規模の人数を呼んで録ってますから(笑)。完成した瞬間、いつもはやらないんだけど、さすがにこの曲は2人だけでできるか試してみました。

映画『orange』以来の漫画とコラボ、「僕ら、怒られてんのかな?」と

――カップリングの「君になれ」は、漫画家の高野苺さんとの再タッグ。高野さんの漫画を実写化した映画『orange』(2015年)で、コブクロが主題歌「未来」を書き下ろして以来ですが、今回はこの曲をモチーフにした新連載『君になれ』がスタートします。前回とは逆パターンが成立するのはすごいことですね。
小渕健太郎 本当に。なんの打算もなく、作品から作品が生まれていく…こんなに気持ちいいことがあるんだなと思いました。しかも、「君になれ」はただただ言葉を投げつけるような、何も意識せずに書いた歌なのに、そこから物語が生まれるんですよ。実は、このコラボが決まった際、高野さんから「一行でもいいので言葉の意味を聞かせてもらえたら」という質問状が届いたんです。今までしたことないんですけど、少しでもできることがあるならと思い、1行の歌詞に対して3〜4行くらいの説明をお返ししました。

黒田俊介 打ち合わせでも「この歌詞はどういう意味ですか?」みたいに、細かく質問していただいて。だんだん、「僕ら、怒られてんのかな?」とか思い始めたりして(笑)。
小渕健太郎 最初に書いた歌詞をさらに詳しく、その背景や感情まで書き足して…僕の書いた回答は、なんだかお坊さんの説法みたいになってましたけど(笑)。

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肉体的なピークを超えても「精神的に萎えていない」

――今作で20周年へのカウントダウンが始まるわけですが、あらためてお2人にとっての20年はどんな時間だったと思いますか?
小渕健太郎 人生の半分、黒田と一緒にいるんですけど、こんなに距離感が変わらないものなんだな、と感じています。なんというか…線路のような。いろんな出来事や作品=枕木は増えていくんですけど、2本の線路は変わらず同じ幅でいる。大きくカーブはしますけど、近づきも離れもしない一定の幅の線路に、ただただ枕木を並べてきた感覚です。

黒田俊介 20周年。僕らももう40歳を越えて、プロ野球選手なら引退ですよね。僕ら自身、肉体的なピークは完全に超えていると思うんです。でも、20周年を迎える今の自分としては、まだまだやれるし、もっとやれることがいっぱいあることに自分自身で驚いているんです。ミュージシャンのピークがどこはわからないけど、まだ僕らは、伸びる余地がある。3時間のライブの中で、体力全開でやる時間は確実に短くなっていくけど、アクセルを踏んだときのスピード感は歳とともに増している気がします。これから20周年を迎えるというときに、小渕と「面白いことをやろう」と話せていることを僕は楽しんでいて。それって、新しいことに取り組もうという気持ちの表れだと思うんです。精神的に、萎えていない。

「全部ひっくり返したい」、世間でなく自分たちが驚くことを

――コブクロにとっての新しいこととは、結果的にチャレンジすることなんですね。
黒田俊介 そう。さすがに20年も経つと、どれだけチャレンジしても昔ほどのドキドキ感はないんですよ。だからこそ「もっともっと」とやりたくなるし、全部ひっくり返したい衝動に駆られる…という(笑)。全部ひっくり返しますよ、僕は! 世間の人たちじゃなく、僕らが驚くことをやりたいんです。

小渕健太郎 直感で思いつくことに、やっと実力と経験が追いついてきたからできることだと思います。昔はいろいろ計算して、そこにちょっとだけ直観を足すような感じだった。でも最近は、まず直観で面白いと感じることを押し進めたいんですよね。

黒田俊介 20年目にしてね(笑)。例えば、周りの反対を押し切って「大阪城ホールで2人で弾き語りをやる!」と。でも後ろのお客さんに全然音が届いていない…となって、コケてみたい。全員がリスクを承知でやる、そういうアグレッシブなチームでありたいんです。

――2人というスタイルで続けてきたコブクロならではの自由度の高さですね。
小渕健太郎 コブクロって、のれんに「コブクロ」と書いてあるだけの、商店街にある小さいお饅頭屋さんみたいなものだと思っていて。今もその門構えは変わっていない。例えばお客さんが1万人いるとしても、大きいショッピングセンターは作りたくないんです。そうすると、俺と黒田の「ああしよう、こうしよう」というものが薄まっちゃう気がするんですよね。僕らはのれんの内側で、「すごく並んでる! でもごめん、ちょっと待ってて!」と言いながら良いもの作る。そんな小さいお店でも、お客さんに並んでもらえている。そういうコブクロのまま20周年を迎えられるのが、すごく嬉しいんですよね。

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