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五輪落選マスコットの去就は? 担当者に聞く落選キャラの“その後”

 2020年東京五輪・パラリンピックの公式マスコットが2月28日、日本伝統の市松模様と近未来的な世界観から生まれた「ア案」に決定した。最終決定については、全国の小学校20万クラス以上からの投票で決着をつけたこともあり、結果については概ね好意的に受け入れられていた。一方で、落選した「イ案」と「ウ案」のクオリティも高く、ネットユーザーからは「このままお蔵入りはもったいない」「サブマスコットとして使えないのか」といった声が続出。そこで、東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会の広報担当者に、気になる落選マスコットの“去就”について聞いた。

海外と日本全国の小学校約1万7千校による“小学生の総意”でマスコットを決定

 東京五輪のマスコット決定に際し、最終決定を小学生の投票に委ねた理由について東京五輪組織委員会の広報担当者は、「子どもたちに愛される東京五輪・パラリンピックを目指し、マスコット選考検討会議という有識者会議で議論しました。その結果、子どもたちに選んでもらうのがもっともベストの方法だという結論となりました」と、子どもたちの意志を尊重したかったと語る。

 具体的には、全国の小学生の意見を集めるため、小学校など合計21,500校に対し案内のはがきを送付。全国の小学校約2万1,200校や海外の日本人学校などのうち計1万6,769校、20万5,755クラスが投票に参加しており、まさに日本全国の小学生の意見が反映された結果に。

 票数は1位の「ア案」が109,041票、2位の「イ案」が61,423票、「ウ案」が35,291票となっており、落選案の票数も決して低いものではない。実際、ネットの声を集めてみると「イ案、何度見てもダントツでかわいい」「ウ案の五輪マスコットに癒される」「イ案、ウ案のデザイナーが誰だったかは公表して欲しい」といった具合に、どのデザインも評価が高く、落選案にも一定数の支持があったことが伺える。

落選マスコットの厳しい現実 「今後登場することはありません」

 そんな声に交じって、「落選キャラは今後どんな扱いになるのか?」「彼らに別の職が与えられるのか?」といった風に、落選案の今後を心配する声も聞かれる。そこで、落選案の転用案は考えられているのか担当者に聞くと「『イ案』と『ウ案』については、東京五輪・パラリンピックの大会マスコット候補として登場しました。今回、残念ながら選ばれなかったデザインということで、今後登場することはありません」と衝撃の事実。

 仮に、企業などが「イ案」と「ウ案」を使用したいと要望した場合はどうなるのか。その点についても、「著作権、商標権等の権利は東京2020組織委員会にあるため、ご使用いただくことはできません」と担当者は回答。となると今後、彼らの姿を見ることは二度と無いということに…。

 ただ、今回の3案については組織委員会としても思い入れが強かったようだ。「ア案」に決定した後、落選案への高い評価や、その後を心配する声を聞き「涙が出るほど嬉しかった」と担当者は振り返る。とはいえ、ルールに則り大会マスコットは「ア案」に決まった。「これからは、決定した東京2020大会マスコットの活躍を全力でバックアップしていきます」と決意を語ってくれた。

 「ア案」の今後について、ネーミングを含めた正式発表は2018年7〜8月頃に予定。ネーミングは、「商標登録等を見据えつつ専門的見地からプロに提案をもらい、マスコット審査会で議論した上で、作者・谷口亮氏の意見も参考にしつつ決定」するそう。

 「今後、等身大マスコットが登場するようになれば、イベントなどで多くの皆さんとお会いする機会を作っていきたいです。その他具体的には検討中ですが、ライセンシンググッズ、アニメーション等の展開をしていくことになると思います」と担当者は展望を語る。アニメ制作が進むのであれば、アニメーションの制作会社はどこか、キャラクターの声優は誰が担当するかなど、ネット上での盛り上がりが期待される。

破天荒、それとも天然系!? マスコットの成否を分かつ“キャラ設定”

 投票を経験した小学生たちにとって思い入れ深いものとなった「ア案」。実際にキャラが動き出せば高い人気を得るのは確実。こうした認知度を生かし、組織委員会は「ア案」をどう有効活用するのか力量が問われている。その点、日本には“ゆるキャラ”をはじめとするマスコット文化の成功体験があり、大いに参考となるはずだ。

 実際、マスコット界の大先輩・くまモンを例とすれば、商標権を持つ熊本県はPRにつながるものは国内企業の使用を原則無料にし、知名度アップに繋げた。さらに、個人がSNSでイラストを使ったり、営利目的でない使用ならば利用申請も不要にしていたりと、柔軟な対応で世界的な人気マスコットに育てた実績を持つ。

 また、プロ野球球団中日ドラゴンズのマスコット・ドアラは、コアラをモチーフにした“カワイイ”風体と、自由奔放な“キャラ設定”で高い人気を誇っている。ドアラほどの個性はともかく、マスコットに血を通わせることができる“性格付け”についても、大いに検討の余地があるのではないだろうか。

 その点について担当者は、「おっしゃる通り、可愛いルックスだけでは支持は得られません。名前と一緒に、『ア案』の人格設定も今後進めていく予定になっています」とコメント。今後のスケジュールとして、ネーミングと共に性格など“キャラの肉付け”を担当する会社も選んでいくという。

 世界に誇る日本のマスコット界に大本命キャラとして登場した東京五輪・パラリンピック公式マスコット。“日本全国の小学生”に選ばれたというバックボーンは、強力な武器であると同時にプレッシャーとしても重くのしかかるだろう。となれば、本キャラの成功は “ネーミング”や“性格”などキャラの肉付けにかかっているとも言える。落選した「イ案」と「ウ案」の思いを背負い、「ア案」がマスコットとしてどんな成長や進化をするのか見守っていきたい。

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