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東京五輪の先も見据えた、愛のあふれる街づくりを掲げる"KISS TOKYO"
東京を盛り上げる「キスマーク」
千原徹也僕の作ったロゴマークひとつで、人の気持ちをどこまで動かせるのかというのに興味があります。というのも、グラフィックデザインの仕事は、早さと安さで仕事を取り合うような状況に陥りつつあり、この状況を改善していきたいなと考えているから。
東京五輪のロゴ問題は記憶にも新しく、グラフィックデザインが良くも悪くも注目された事例だと言えるでしょう。佐野さんのパクリ疑惑であらゆるメディアが持ち切りでしたが、ある意味あんなにグラフィックデザイナーやロゴマークが注目されたことはなかった。五輪のロゴに対する期待値みたいなものを感じましたね。
そんな時にお話をいただいて、規模は五輪のロゴ案件ほどではないにせよ、「東京を応援しよう、みんなで東京を好きになろう」というメッセージを、自分ならロゴに込められるんじゃないかなと思ったんです。フォーマルさを求められる五輪のロゴとは違い、今回のキスマークはオシャレで親しみが湧くし、洋服の柄などにも取り入れやすい。いろんな可能性が生み出せるなと感じています。
──そもそも、プロジェクトが始まった経緯はなんだったのでしょう?
千原徹也スタートは2年ほど前。「I♥NY(I love New York)」のような東京が盛り上がるきっかけとなるロゴマークを、東京五輪を見据えて作成しようと働きかけたことがきっかけです。私自身は、会社も4年目を迎えてさらなる飛躍を考えていた時期でもありました。このKISS TOKYOの仕事は、業界的にも個人的にも来るべき時に来た、グラフィックデザイナーという仕事の地位を上げるのに絶好の依頼だったと思っています。
日本人は愛情表現がうまくてできない。だからこその“キスマーク”
千原徹也唇の質感をなくし、無機質でフラットなデザインにしたことです。キスマーク自体が持つエロティックな印象を排除する点にはこだわりましたね。おちょぼ口のようなフォルムを採用し、中央の穴の部分の開き方を試行錯誤して今の形までたどり着きました。
制作の流れは、まずネーミングを考えるところから。「I♥NY」の「♥」に変わるものとしてコピーライターから提案されたものが「キス」という言葉です。「概念」・「アイコン化できる」・「分かりやすさ」という特長に引かれてキスマークを採用しました。
また、KISS TOKYOには日本人の団結の意味合いも込められています。外国人に比べて、日本人はキスやハグが苦手ですよね。愛情表現を大きく表現できる国って、国民一人ひとりの団結力につながるように感じるんです。
でも、日本人は奥ゆかしいと言えば良く聞こえますが、愛情表現を表に出さない。また、何かが定義づけられないと団結できないという国民性があると感じています。例えば、同じ野球チームのファンだと、知らない人同士でも一致団結して優勝に向かって応援できるような。
だから、KISS TOKYOのロゴを通じて、表現下手な日本人にも、みんなで団結して何かを楽しんだり助け合ったりする気持ちがあるんだよ、ということを示していきたいです。
──どういうプロダクトやサービスとコラボしてみたいですか?
千原徹也オシャレなロゴだから何にでも合わせられる自信があります。サイト(http://kiss.tokyo/(外部サイト))ではアイテムイメージとして東京名物の"おこし"を紹介していますが、コラボすることでどのような商品でもポップになって、違った方向性が生まれてくる。唇の形でリンクさせて化粧品を作ってみたり、掲載広告募集中の空き広告に入れて普通では入らないところに隠れているみたいな仕掛けを作れたりしたら面白いかなと思っています。
KISS TOKYOが東京の街に与える効果
千原徹也キスマークから「愛情」というメッセージを感じてもらうこともできると思っています。ボランティアや福祉などの社会貢献活動のロゴとしても使っていただきたいです。KISS TOKYOのバッジをつけている人が目印となり、困った時には助けを求められるなんて社会が実現したら最高ですよね。東京五輪の際には、海外からきた人たちの目印になるとか。東京オリンピックの招致の際や、Act Against AIDSの活動の際にもバッヂをつけて活動されていたケースはあるので、実現できたらすごいなと思います。
──なるほど。オリンピックがきっかけとなり、多くの人に浸透するといいですね。
千原徹也はい。最終的には、東京駅や羽田空港などの日本の玄関口に必ずあるお土産として定着していくような動きを作りたいです。コンセプトとしてもプロダクトとしても可能性を持っている。ブームとして一過性では終わらないと確信しています。
(取材・執筆: 田中利知+YOSCA)
(写真:栗原洋平)