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“五輪特需”によるメディア出演の是非 “消費”されてしまう選手たち

  • カーリング女子のLS北見(左から)藤澤五月選手、吉田夕梨花選手、鈴木夕湖選手、吉田知那美選手、本橋麻里選手(C)ORICON NewS inc.

    カーリング女子のLS北見(左から)藤澤五月選手、吉田夕梨花選手、鈴木夕湖選手、吉田知那美選手、本橋麻里選手(C)ORICON NewS inc.

 平昌五輪で大活躍を見せたカーリング女子チーム・LS北見(通称・カー娘)。その可愛らしいルックスとともに中継中にたびたび聞こえてきた「そだねー」が、早くも「流行語大賞の候補に!?」と囁かれるほど話題になっており、さらには「CDデビュー」、「CMオファー殺到」、「芸能事務所による獲得合戦」などの報道が出るまでに盛り上がりを見せている。このように、五輪で活躍した選手たちがメディアに引っ張りだこになる“五輪特需”は恒例行事と言えるが、過去の事例では必要以上の盛り上がりで競技生活に支障をきたし、「調子に乗っている」、「練習しろ」などのバッシング対象に“反転”してしまうのも事実なのだ。

メダル獲得の歴史的瞬間に沸き立つメディア、五輪は名言の宝庫に

 そもそも五輪は、それぞれの選手たちが想像を絶する努力で培ってきた技術を競い合う場。そして、競技の一瞬一瞬、また結果が出たときに溢れ出る選手たちの率直な“言葉”が多くの視聴者の胸を打ってきた。その言葉は感動のシーンとともに繰り返しテレビで放送され、それが“流行語”となり、やがて語り継がれる“名言”となる。年末の風物詩『ユーキャン新語・流行語大賞』でも、第13回(1996年)はアトランタ五輪のマラソンで銅メダルを獲得した有森裕子の「自分で自分をほめたい」が大賞を受賞。有森の言葉は、前回のバルセロナ五輪選考時の騒動や自身の足のケガの克服を経て発言されただけに、多くの国民に受け入れられた経緯がある。

 その後も、シドニー五輪柔道金メダル・田村亮子(現・谷亮子)の「最高で金 最低でも金」が、過去2回の銀メダル獲得を踏まえて第17回(2000年)で特別賞、アテネ五輪水泳金メダル・北島康介の「チョー気持ちいい」も、その異次元的な強さと等身大の素直な発言によって第21回(2004年)の大賞を受賞している。

 時期が過ぎれば“時代遅れ”になりがちな政治家の爆弾発言や一発屋芸人の流行りのネタとは異なり、純粋に日本人を感動させた五輪の言葉は名場面ともに永遠に語り継がれているのである。

日本中の祝福ムードが一転、人気の独り歩きでコントロール不能に

 しかし、歴史に残る名場面のその後の盛り上がりは尋常とは言えず、かえって選手を苦しめる場合も多い。たとえば1992年バルセロナ五輪の200m平泳ぎでは、当時ノーマークだった14歳の岩崎恭子が史上最年少で金メダルを獲得。「今まで生きてきた中で、一番幸せです」という発言とともに一躍時の人となり、日本中が大フィーバーに陥った。後日、必要以上にテレビで取り上げられて有名になってしまった“戸惑い”や、その後の深刻な“苦悩”について本人自らが明かしている。

 さらには、2011年のサッカーW杯優勝を受け一躍時の人となった「なでしこJAPAN」は、競技を盛り上げるべく相次いでテレビへ出演。そこで個々のキャラクターが世間に知られ、まさに競技面だけでなくテレビ的にも注目株として翌2012年の『ロンドン五輪』を迎える。そして見事に銀メダルを獲得するのだが、表彰式の場でサービス精神たっぷりに屈託なくカメラに向かって喜びを表現したことでバッシングの対象になった例も。他にも、一方的に注目されていた故に、競技に向けた強気の発言や、競技と関係ない素の言動が切り取られ、一気に風向きが変わることもある。

 だが、元々それらは選手たちの“素の姿”を求める視聴者の需要と、それに応えるメディアがもたらしたものと言える。バラエティ番組などで一度でも活躍を見せると“タレント”のように扱われるが、大舞台で活躍しているとは言えタレント活動は当然、素人。「テレビにどう映るか」までは考えられないのが普通であり、周りにマスコミ対応面でマネージメントできる存在がいないことも多いだろう。その状態で世間から注目され、自制心を持ち続けることは容易いことではないはずだ。そして、素顔を見せたことで叩かれてしまうのだから、競技と関係ないところで精神的にキツくなることは容易く想像できる。

 五輪の度に、活躍した選手が必要以上に持ち上げられ、本人たちの手が届かないところでコントロール不能に陥る……そんな“消費”されてしまう状況は気の毒としか言いようがない。

「使えるときに使う」メディア、しっかりとフォロー出来る“受け手”の存在が重要

 もちろん、限られた現役活動期間の中でタレント性が開花し、引退後の選択肢のひとつになるケースについては、活躍の場を広げたテレビの功績であり、選手側・局側双方の“ウインウイン”関係を構築したとも言える。しかし、日本中の五輪での功績を称えるお祝いモードから一転して、「調子に乗っている」などのマイナスイメージがついてしまう原因は、「使えるときに使う」メディアが「視聴者にどう見られるか」まで考えず、最後まで責任を取らない点が大きいだろう。

 一方で、その責任を果たそうと努める存在も忘れてはいけない。『ジャンクSPORTS』(フジテレビ系)の浜田雅功や、『Going! Sports&News』(日本テレビ系)の上田晋也など、盛り上げるべきときは盛り上げつつ、持ち上げるだけではなく“突っ込む”こともでき、場の空気を読ながら“テレビ映り”や“視聴者にどう見られているか”を的確に判断するプロのタレントたちだ。テレビ慣れしていない選手たちに気も遣い、専門外のことからは“かばう”配慮も見せる。実際、SNS上では視聴者から「よくぞ聞いてくれた」、「選手への配慮が素晴らしい」といった評価もあるように、そうした姿勢にはMCとしての責任感や選手へのリスペクトも感じられる。

 奇しくも先日報道された伊調馨選手の“パワハラ告発問題”に対し、浜田の相棒であるダウンタウン・松本人志は3月4日放送『ワイドナショー』(フジテレビ系)で、「みんなメダルとってカッコよかったし、美しかったし、すばらしいんですけど、あの後の日本国中のお祭り騒ぎが大嫌いなんですよね」、「早く解決して伊調さんが集中できる環境を作ってほしいということぐらいしか言えない」と苦言を呈している。このように、明言する・しないに関わらず、“待った”をかけられる存在は必要不可欠だ。

 五輪で活躍した選手たちは、競技振興の“使命感”から最大限にサービス精神を発揮するはず。だからこそ、我々メディア側も自戒の念を込めて、純粋無垢な選手たちを“消費”せぬように配慮し、最後まで“責任”を持たなければならない。そして、メディア・視聴者関係なく、選手たちの“本業”をしっかりと応援する姿勢こそが本懐なのだ。

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