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傍若無人の野性爆弾・くっきーが“テレビサイズ”に収まったワケとは?

  • “グロテスクな笑い”を作り出す野性爆弾・くっきー (C)ORICON NewS inc.

    “グロテスクな笑い”を作り出す野性爆弾・くっきー (C)ORICON NewS inc.

 最近、テレビでお笑いコンビ・野性爆弾のくっきーを目にする機会が多くなった。身長180センチ・体重80キロのゴツい肉体にどこかアブない目つき、その言動自体も“不穏”そのもの。実際、視聴者によって“好き・きらいが分かれる”キャラクターであり、ファンからでさえも「テレビ向きじゃないかも!?」などとささやかれてきた。だが、今では多数のバラエティ番組で、無くてはならない“飛び道具”的な役割を担い、その存在感を高めている。“お茶の間”の笑いと対極に位置するような芸人が、なぜテレビサイズに収まることができたのか?

よくわからないけど面白い…深い芸術性の中にあるくっきーの笑い

 現在41歳のくっきーは、2015年の9月までは本名の川島邦裕で活動。得意技は顔モノマネで、トランプ大統領からX JAPANのToshi、先輩芸人の宮迫博之、蛍原徹、松本人志、そしてローラ、きゃりーぱみゅぱみゅなど、性別やジャンルを超えた顔マネを白塗りメイクで行なっており、たしかに似ているのだが、子どもが見たら泣き出しそうな怖さも同時に持ち合わせている。

 そのほか、収録中に突然フリスクを食べ出し、出演者に問いただされると「これ、母の遺骨です」(別バージョンで「親戚一同の歯です」も)と言ってみたり、絵も得意で“ピカソっぽい蛭子能収”的な画風を各所で披露している。さらに今年5月に出演した『IPPONグランプリ』(フジテレビ系)では、独自の世界観を感じさせる回答で強烈なインパクトを残した。

 中央に鬼、左上に日めくりカレンダー、右上に(ら)と書かれたカルタのイラストを見て「読み札を教えてください」というお題に対し、くっきーは「らくするな もてよノートを 宙宙宙」、「ランドセル 入れろノートを 宙宙宙」、「らしくない ツノの力で 宙宙宙」と連続して謎ワード“宙宙宙(ちゅうちゅうちゅう)”を最後に加えた珍回答を披露。意味の全くわからないこの謎のワード“宙宙宙”は、しばらくTwitterのトレンドに入り続けるなど、大きな反響を生んだ。業界内のみならず一般社会でも評価を受けはじめているのだ。

松本人志に通ずる“グロテスクな笑い”を作り出す感性

 これらのネタや活動全般からは共通して“グロテスクさ”や“狂気”が感じられる。ほかのお笑い芸人から受けた影響は全く感じさせず、自分でゼロから築いた完全なオリジナリティに貫かれているのがわかる。

 しいて言えば、くっきーのブラックな面は、松本人志が生み出す“グロテスクな笑い”に通じるかもしれない。松本には、『ダウンタウンのごっつええ感じ』(同)のコントにたびたび登場した爬虫類とも両生類とも妖怪ともつかない謎キャラや、一連の『一人ごっつ』(同)系で見せた視聴者をはるか後ろに置き去りにするようなキャラがあるが、そういった“グロテスクさ”の中から“笑い”を生み出す芸術的な能力は2人の共通点なのではないだろうか。事実、松本もくっきーを高く評価しており、『IPPONグランプリ』に出演した際には「メチャクチャやけど、どこかで期待している自分もいる」と賛辞を送っているのだ。松本を思わせるセンスや絵本の出版、個展を開くほどの絵の腕前も含め、くっきーは芸人としての幅広い才能を感じさせるのである。

“善悪”のボーダーライン上で奮闘 放送コードギリギリを“匂わせる”存在として重宝

 そんな“グロテスク”な世界を生きるくっきーがテレビ番組で重宝されているのも不思議だが、テレビの規制強化も背景のひとつとしてあるかもしれない。今のテレビは過激な内容が自主規制されがちだが、くっきーが見せる先のフリスクのネタや血のり、歯の模型など一見“グロ”っぽいネタも匂わせているだけで、ネタの内容自体は“ピー音”が入るようなNGワードもなく、放送コードには抵触しない絶妙なラインに留まっているのである。

 傍若無人に見えるくっきー自身も、素顔は真面目で挨拶も欠かさない実直な人柄であり、制作スタッフからの信頼も厚いことは芸人仲間からも暴露されている。さらに、もともと芸人仲間たちから評価されていたという面があり、先輩芸人たちと作り上げる“団体芸”などによって、くっきーのグロテスクさは奇しくも中和され、制作側としても安心して起用できる存在となったのかもしれない。

 また、くっきーをテレビで起用すること自体が、厳しさを増す規制に対する制作側の抵抗のようにも映る。そして、そんな彼の芸を見て周囲の芸人たちが腹を抱えて笑い、視聴者も快哉を上げるのだ。

 数年前までテレビに向かないと思われていたくっきー。だが、テレビ界における“善悪”のボーダーライン上で奮闘するという、本来のお笑いの姿を最も体現する存在なのかもしれない。

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