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木梨憲武に筋書なんていらない、“予定調和を破壊”するタレントとしての凄み

  • 木梨憲武 撮影/RYUGO SAITO

    木梨憲武 撮影/RYUGO SAITO

 とんねるず・木梨憲武が、バラエティーやイベント出演で暴れまわっている。場の空気を完全無視、共演者に言いたい放題&やりたい放題、さらにはスタジオに一般人を同伴…。その多くが主演映画の宣伝での出演だが、そんなことはお構いなしと言わんばかりに自由奔放な姿を見せ、日々のネットニュースを騒がせた。その姿は、久しく見なかった若手時代のとんねるずのよう。芸人が誰よりも空気を読むこの時代、木梨にしかできない爪痕を残していく様に、タレントとしての“凄み”が感じられる。

“ジジイ150人”を招集!“その場のノリ”が結果として愛される稀有な存在

  • 映画『いぬやしき』の“ジジイ選抜”上映会イベントに出席した木梨憲武(C)ORICON NewS inc.

    映画『いぬやしき』の“ジジイ選抜”上映会イベントに出席した木梨憲武(C)ORICON NewS inc.

 今年の春は木梨の暴れっぷりが各所で見られた。5月1日、都内で公開中の主演映画『いぬやしき』の60歳以上男性限定のイベント「『いぬやしき』ジジイ選抜上映会 in ギロッポン(ルービー付き)」が行われ、木梨憲武が観客の“ジジイ”約150人と交流。同イベントは以前に、高校生を集めた試写会イベントを行った際に木梨が発した「高校生やるならジジイも集めようよ」というコメントが発端で実現し、完全なる“その場のノリ”の提案で六本木にジジイ150人が集結する運びになった。5月5日は都内の映画館に登場。木梨がまさかのLINE LIVEに初降臨というゲリラ的な生配信を行ったが、その中で共演者の佐藤健や本郷奏多、さらには映画に全く関係のない笑福亭鶴瓶やLiLiCoに次々と生電話。「結婚、おめでとう!」とLiLiCoの旦那の近況を聞く様子に、「これ何の番組?」と思わずツッコミたくなってしまう展開に。

 また、4月18日にTBSラジオ番組『ジェーン・スー 生活は踊る』にゲスト出演した際は、「映画の仕事に興味がある」という22歳の男性リスナーに「才能よりも人との出会いが大事」とアドバイス。「20日に映画の舞台挨拶があるから。そこに(彼を)来させます」と、夢を追いかけるリスナーと映画会社の人間を引き合わせる仲介人的なこともサラリとやってのけた。悪ノリ系から感動系まで一連の木梨の“その場のノリ”がネットニュースを席巻したのだ。

冠番組以外のバラエティーで大暴れ! 久しく見られなかった姿にファン歓喜

 テレビのバラエティー番組でも同様だ。映画の宣伝で、『ノンストップ!』(フジテレビ系)の設楽統、『さまスポ』(テレビ東京系)のさまぁ〜ず、『ウチのガヤがすみません!』(日本テレビ系)のヒロミ、『チマタの噺』(同)の笑福亭鶴瓶、『1億人の大質問!?笑ってコラえて!』(日本テレビ系)の所ジョージなど、親交のあるタレントの番組に次々とゲスト出演。無関係の話を連発したり、映画ではなく実家の木梨サイクルを宣伝したり、収録スタジオに一般人のカップルと連れてきたり、鶴瓶に無理やりマッサージをして絶叫させたり、ヒロミにピンポン玉マシンガンを至近距離で撃ち込んだり…と、徹底的に暴れまわった。

 4月18日の『スッキリ』(日本テレビ系)のVTR出演では突然映画のパネルに突撃し転げまわり、「どこを強く強打したか」がプチクイズにもなった(答えはヒジ)。4月21日の『おかべろ』(関西テレビ系)では、木梨家の隣人の一般人・林さんを番組に出演させるという離れ業を披露。このように番組の扱いの大小に拘らず、徹底的に予定調和を許さずに全てを“壊す”自由さを見せつけた。この無茶苦茶な木梨のノリに多くの視聴者が「えぇw」「憲さん最高!」「まさにとんねるずって感じの流れだなぁ」「もう毎週やってほしい」と盛り上がりを見せたのだ。

筋書ナシのとんねるず流“破壊衝動”はゲスト出演してこそ映える

 大物タレントとしてのとんねるずは、近年はゲストを迎えるホスト役つまり“受け”がメインだったが、冠番組外のステージでの芸人と絡み、ハチャメチャに暴れる姿はもう何年も見られなくなっていた。そんな中で一連の木梨の活躍は、場や周囲を攪乱する“攻め”の姿勢を見せつけた。過去、とんねるずは新人時代にタモリから「意味なんていらない、そのままでいい」とアドバイスを受けたエピソードが知られているが、近年の番組出演ではまさに筋書やオチがない、元々のとんねるずの“破壊屋”的芸風を存分に発揮していると言える。

 かねてからギャラの高騰でレギュラー出演は難しいと言われていたが、木梨はゲスト出演で“神回”を演出するための実力をいかんなく発揮したのだ。むしろこの姿こそが、木梨憲武本来の“自然体”なのである。往年のファンにとっては「待ってました」「いいぞ木梨もっとやれ!」「やっぱ憲さんにかなう芸人はいない」と若かりし頃のとんねるずを懐かしむように歓喜し、若い層にとっては「こんなに体張れるなんてすごい!」「最近の芸人さんにはこういう場の空気を無視する人っていないよね」と類のないキャラクターが新鮮に映ったことだろう。

天性の“人たらし”がなせる業、愛されるが故に全てを壊しても許される

 かつて、お笑い界について「西のダウンタウン、東のとんねるず」と言われた時代があった。「松本人志のような天才と同じ時代にお笑いをやっているなんて人災だ。でもとんねるずには木梨憲武がいる」と石橋貴明が言ったというエピソードがネットで独り歩きをしているが(実際に発言した記録はなく、雑誌の対談記事の発言に尾ひれがついて広まった)、これは木梨憲武の特異性について表した良い例だ。とんねるずの2人の印象はまったく異なる。その存在感や声・体格から石橋貴明の暴れっぷりが目立ってしまうが、実はメチャクチャやっているのは木梨というケースは多い。アドリブで好き放題に暴れるときの破壊力では、木梨は石橋にも引けを取らない。

 それを支えているのが木梨の人としての魅力だ。木梨憲武は天性の“人たらし”。誰彼構わず、垣根を作らずに懐に飛び込んでいく。先述の“ジジイ150人”招集イベント然り、大物であるにもかかわらず拘らず素人にもどんどん絡んでいく。木梨は器用なタレントで、お笑い、歌、モノマネ、演技、アートなど多彩な活動によりスマートな印象がある。そして、タレントからも「憲さん」と愛されるキャラクターゆえに仕掛けられた共演者もつい笑って許してしまう。

 これらのエピソードのように、現場でアドリブを発揮し、それを“笑顔で楽しく”やってのけるのが木梨の真骨頂。先述の『1億人の大質問!? 笑ってコラえて!』では視聴者から「永遠の小学生」というイメージがあると言われている場面も紹介された。どんなにメチャクチャやっても成立してしまうのは、木梨自身がその場を心から楽しんでいるのが見る側にも伝わるからだろう。まるで子供のように無邪気に振る舞い、それに翻弄される構図は純粋に面白いし、視聴者を引き付ける。いわば、木梨憲武は“笑顔で予定調和を破壊する”一種の天才なのだ。

 ORICON NEWSの木梨本人へのインタビューでは、30年間続けてきた秘訣を聞いたところ、次のように明かした。「つらいことなんてなかったですね! ずっと楽しく続けてきました。つらいことは、前日に飲み過ぎてやばい〜!くらいしかない。現場は面白いし、好きな場所なんで、飲みすぎ注意ってことだけですかね」。コンビの冠番組は終わり、ある意味大いなるしがらみから解き放たれた木梨憲武という“天才”は、今が一番面白いのかもしれない。

(文/Kanako Kondo)

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