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星野源“恋ダンス”、欅坂46“サイマジョ” 振付師の地位向上の理由とは?

 アイドルグループ欅坂46のデビュー曲『サイレントマジョリティー』は、拳を突き上げ、クールな眼差しで踊るダンスが楽曲とともに注目を集めた。この印象的な振付は、マドンナのワールドツアーにも同行した世界的コリオグラファーTAKAHIRO(上野隆博)氏が手掛けている。また、ドラマのエンディングダンスが“恋ダンス”として社会現象にまでなった星野源の『恋』は、リオの五輪の閉会式の演出にも参加したMIKIKO氏が担当。この振付師なら間違いないとユーザーから期待される存在でもある彼らの需要が高まっている背景とは?

モーニング娘。を育成した夏まゆみ、ラッキィ池田、KABA.ちゃんなどタレント並みの活躍も

  • モーニング娘。の振付け、育成を担当した夏まゆみ

    モーニング娘。の振付け、育成を担当した夏まゆみ

 メディアに登場することも多く、現在のエンタテインメントシーンを支えるクリエイターとして注目されている振付師たち。彼らの存在がクローズアップされたのは、1990年代のことだった。そのきっかけになったのはモーニング娘。の振付け、育成を担当した夏まゆみ。彼女たちを輩出したオーディション番組『ASAYAN』(テレビ東京)にて、時に厳しく叱咤激励するダンスレッスンの様子を放送することにより、振付師の存在をお茶の間に知らしめた。さらに南流石(PUFFY『アジアの純真』など)、ラッキィ池田(テレビアニメ『妖怪ウォッチ』主題歌『ようかい体操第一』など)、KABA.ちゃん(SMAP『世界にひとつだけの花』など)といったタレント性の高い振付師が積極的にメディアに露出したことも、要因のひとつ。その背景にあるのは、ダンスミュージックの流行、そして、アイドルカルチャーの盛り上がりだろう。ユーロビート、テクノ、エレクトロなどの要素がJ−POPのなかに取り込まれ、モーニング娘。のブレイクをきっかけにグループアイドルが数多く生まれたことで、ダンス、振付の需要が急激に高まったのだ。その流れを決定づけたのがAKB48。『ヘビーローテーション』(2010年)『フライングゲット』(2011年)といった代表曲が広く受け入れられたのは、キャッチ―で覚えやすいサビの振付の効果も大きい。特にパパイヤ鈴木が担当した『恋するフォーチューンクッキー』(2013年)では数多くのダンス動画が投稿され、大きな話題となった。

両者の信頼感が肝、アイドルと振付の化学反応はこうして起こる

 10年代以降、振付師の重要性はさらに高まっている。アーティストと振付師の密接な関係性から、質の高いパフォーマンスが生まれる――その代表的な例が欅坂46とTAKAHIRO(上野隆博)だ。デビュー曲『サイレントマジョリティ―』から最新曲『不協和音』まで、すべてのシングルの振付を担当。一糸乱れぬ統制力とメンバー個々の自由な動きをバランスよく取り入れたダンスパフォーマンスはまちがいなく、欅坂46の魅力のひとつとなっている。そのポイントとなっているのは、歌詞。今年4月に放送された『SONGS 欅坂46 〜平手友梨奈15歳・その舞こそが、心の叫び〜』(NHK総合)における「振付けは私が付けるんじゃなくて、平手(友梨奈)だったり、メンバーが持ってるものが、引き出されるのがきっと正解」「引き出される鍵が歌詞」というコメント通り、メンバーに歌詞を深く理解させ、そこから出て来る表現を積極的に取り入れているのだ。また同番組でグループのセンターを務める平手友莉奈は「(欅坂46のダンスの魅力は)1曲1曲にストーリーがあること」「(歌詞の意味を共有して踊るほうが)私的にも想像しやすいですし、その方がメンバーもそうだねって納得がいく」と発言。TAKAHIRO(上野隆博)が提示する振付のコンセプトがメンバーにしっかり浸透していることが伝わってくる。

星野源が指名する人気振付師。“恋ダンス”現象の裏側は?

  • 『逃げ恥』で星野源が歌う「恋」に合わせて踊る「恋ダンス」が話題に

    『逃げ恥』で星野源が歌う「恋」に合わせて踊る「恋ダンス」が話題に

  • 爆発的に流行った“恋ダンス”の振付師・MIKIKO

    爆発的に流行った“恋ダンス”の振付師・MIKIKO

 ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)の“恋ダンス”が爆発的な流行も記憶に新しい。この振付を手がけたのは、Perfumeのダンス、ステージングをプロデュースしているMIKIKO。星野源自身が「Perfumeのダンスが大好きだったからMIKIKOさんに依頼した」という“恋ダンス”は、ドラマの人気とともに幅広い年齢層に浸透。膨大な数の“踊ってみた”投稿をはじめ、一大ブームを巻き起こした。この振付についてMIKIKOは「すごく難しい。プロのダンサー用に付けた振りをドラマのキャストが踊ってくれているんです」「ダンスの大事なところは、身体の動きをそろえるだけでなく、心をそろえること。“逃げ恥”の時も、出演者キャストの方々が熱心に練習してくれて、キャスト・スタッフの皆さまの気持ちが一つになって、ああいうダンスができあがったのだと思います」とコメント(昨年12月に行われた『第4回 全国小・中学校リズムダンスふれあいコンクール』での発言)。“逃げ恥”のキャストの魅力、そして、“がんばって練習しないと踊れない”というレベルの高さも、“恋ダンス”人気の要因だったと言えるだろう。ご存知のようにMIKIKOはリオ五輪閉会式のフラッグハンドオーバーセレモニーの企画・演出を担当。ダンサー、振付師からキャリアをスタートさせた彼女が、日本を代表するクリエイターとして活躍しているという事実も、振付師の重要性を示すひとつの証左と言えるのではないだろうか。

マドンナも認める世界レベルへ。ダンサーの質向上が振付も高める

 今や振付師は、アーティストのパフォーマンス、ステージングに欠かせない存在。ダンスのクオリティが楽曲の拡散、ヒットを生み出す大きな要因となっていることはまちがいないだろう。さらにマドンナのツアーに参加したTAKAHIRO(上野隆博)、マイケルジャクソンにも見初められクリス・ブラウン、アシャ―などのツアーに参加しているケント・モリなど、世界レベルのダンサーが次々と登場しているのも、ダンスに対する注目度を高めている。振付師、ダンサーの存在は日本のエンタテインメント・シーンのおいて、さらに大きな役割を果たすことになりそうだ。
(文:森朋之)

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