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世界最大デジタルイベントでサザン「東京VICTORY」がこだました

 サザンがSXSWの会場にこだました。去る3月12日から15日の4日間、アメリカはテキサス州オースティンで行われた“SXSW2017(サウス・バイ・サウスウエスト2017)”に「8K:VR Ride featuring “Tokyo Victory”」というコンテンツが出展された。

MADE IN JAPANの技術が集結!! 世界初の“8K:VR”がお披露目

 SXSWは毎年3月に同地で街を上げて開催される、音楽、映画、インタラクティブのコンベンションを組み合わせた、クリエイティブ・ビジネスの一大複合イベントだ。例年アメリカを中心に各国から様々な企業やアーティストが参加していて、かのtwitterが世界中で注目を集めるきっかけ(2007年)となった、言わばスタートアップのイベントとしても有名だ。今年のインタラクティブ部門は、有名どころではYouTube、NASA、Levi’sほか、日本からもNTT、SONY、資生堂、Panasonic 、MAZDAなどが出展した。

 本稿で紹介する「8K:VR Ride featuring “Tokyo Victory”」は、NHKエンタープライズ、NHKメディアテクノロジー、レコチョク・ラボ、WONDER VISION TECHNO LABORATORYの四社が共同で出展したプロジェクトである。ざっくり言うと、縦3,4m×横5.2m×奥行き2.6mのドーム型ワイドスクリーンに映し出される8K映像と5.1chサラウンドというハイスペックな映像と音を、何とVRと言えばお馴染みであるゴーグル状のヘッドマウントディスプレイを着用することなく、モーションライド(=乗って遊動する)で体験するという、世界初の「8K:VRライド」コンテンツだ。そしてその上映BGMに抜擢されたのが、サザンオールスターズが2014年にリリースしたシングル「東京VICTORY」だった。
 筆者は現地で体験したのだがこれが見事なクオリティだった。まず6軸の電動サスペンションが支えるシートに座り、ベルトで胴が固定されると“♪〜Wow”という桑田佳祐によるあの高らかな歌い出しと共に映像がスタートする。まるで東京の上空に浮いているような感覚を覚えるオープニングから、視界はすぐに首都高速へ。実際に首都高のトンネル内を高速で走っているように吹き出る風と速度に圧倒される。

1964年の東京五輪から現代まで一気にタイムワープ!

 するとスクリーン左脇に表示された1964を記しているカウンターが回転して2017を刻み、眼前にレインボーブリッジが雄大に広がる。日付は2017年2月13日。つまり首都高を滑走路に、前回の東京五輪が行われた1964年から一気に現代までタイムワープしたのだ。

 そして筆者は新宿高層ビル街、渋谷駅前、上野アメ横、浅草雷門など東京の名所を次々と巡っていく。風を受け、映像とシンクロしながら細かくなめらかに可動するシートの乗り心地は、さながら遊園地やテーマパークにあるアミューズメント機器の高級エディションといったところか。だがこのコンテンツがジェットコースターと異なるのは、眼前に広がる時々のシチュエーションによって、その乗り心地が、車に乗っているような、または飛行機に乗っているような、さらには再び東京上空に舞い上がると、自分が鳥かスーパーマンにでもなって、自ら空を飛んでいるような、そうした様々な感覚に変わっていくという点にある。
 映像と楽曲のマッチングも秀逸だ。「東京VICTORY」のMV映像が要所で効果的に差し込まれる。〈川の流れのように〉というリリックの箇所では上空から隅田川を俯瞰で望み、〈時が止まったままの/あの日の My Hometown〉という、作詞当時、桑田が2011年に被災した東北を想って描いたリリックでは、全ての照明が消えた夜の渋谷のスクランブル交差点が映し出され、胸に切なさがこみ上げる。

 しかし曲が終盤に差し掛かると、街の照明が灯り、夜空を大輪の花火が彩る。カウンターは2020 年7月24日を指している。そう、来たる東京五輪開会式だ。そうして曲が終わると、“SEE YOU IN 2020!”の文字が映し出された。こうして同曲のフルコーラスにあたる約5分で、過去・現在・未来と時空を超えながらの東京観光を体感したというわけだ。

 体験中、序盤はその速度感とリアリティに思わず「うわ!」とか「おぉ!」といった声を何度も上げてしまった。理屈抜きに楽しく爽快なコンテンツだった。

 NHKエンタープライズの田邊浩介エグゼクティブ・プロデューサーに話を聞いた。
「映像では、実際に2017年2月10 日から13日までに撮影した東京の風景を使いました(※空撮部分などCGも併用)。反転させた8K映像を、カーブミラー(凸面鏡)を経由して、湾曲したスクリーンへと反射投映させることで、肉眼の歪みが計算された自然な映像を生み出しました」(田邊)

 会期中は6月に全米公開が予定されているトム・クルーズ主演の新作映画「THE MUMMY」(原題)のブースをはじめ、様々なVR系のコンテンツが出展されていたが、とりわけこの「8K:VRライド」の前には、英訳された機器の解説や歌詞カードを手に、常時二桁の数のメディア関係者が列を作っていた。(一度に二人まで体験できるとはいえ)一回約5分強の上映なので、仮に5組待ちなら30分待ちとなるにも関わらず、である。

伝統と革新、過去と未来…東京五輪に向けたインビテーション

 また上映中の彼らの様子は概ね筆者と似ていた。リアルな動きに声を上げ、東京の風景を凝視し、最後は笑顔だった。「すごいリアリティだった」、「ゴーグルなしで、二人で乗れるのがいいね」、「東京に行きたくなりました」、「日本の有名なバンドだって? いい曲だね!」といった感想が聞かれ、アメリカをはじめ複数の国のメディアが取材に訪れた。待ち時間に曲と映像の進行を覚えて、何と独自の振り付けで踊り出すカップルまでいた。

 「日本の技術力と東京の魅力を、何よりもシンプルに楽しんでもらえるコンテンツになるよう注力しました」(田邊)
 五輪の自国での開催は決して華やかな一面ばかりではない。しかし世界的なイベント開催が決定した以上は、ポジティブに、しかし被災地の現在も忘れずに、皆で2020年に向かって歩んで行きたい。「東京VICTORY」とは、そんな桑田がリスナーと自らを鼓舞するような想いから生まれた曲だった。

 伝統と革新、過去と未来、そしてポップカルチャーが共生する都市・東京を描いたこのコンテンツは、多くの関係者に向けた充実のインビテーション(招待状)となったようだ。今後は国内上映の実現を目指すそうなので、ぜひその日を楽しみに待っていてほしい。

(取材・文/内田正樹)

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