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(更新: ORICON NEWS

韓国ミュージカル特集:K-POP&韓流ドラマの後を追う?話題作『マイ・バケットリスト』日本上陸

『マイ・バケットリスト』稽古場レポート
和やかさと緊張感のバランスよいチームワークから生まれるクリエイティビティ
 中小の劇場が数多く立ち並び、おもしろそうな作品を調べてはチケットを求める若者たちの活気に満ち溢れる韓国ミュージカルの聖地・テハンノ。明洞などソウル中心地から地下鉄で15分ほどで行けるこの街は、日本のミュージカルファンの間でもおなじみの場所。目当ての演目を観るために訪れる人のほか、そのときの新作をチェックしに行く人など、ミュージカル観劇のために来韓するファンも多い。

 街中にあふれるのは、地元や日本からのミュージカルファンばかりではない。毎日の上映作品数が圧倒的に多いことから、クリエイターなどの関係者やスターを夢見る若手俳優たちも大勢集っており、あちこちのカフェで打ち合わせをしている姿なども見られる。そんな創作の熱気に街中が包まれるテハンノにある『マイ・バケットリスト』の稽古場を訪れた。

5人5様のキャラクターで笑い声も響く和やかな雰囲気

 同作は、人生のどん底を彷徨っていた不良少年カングと、病で余命宣告を受けた少年ヘギが偶然出会い、バケットリスト(死ぬまでにしたい100のこと)を実行しながら人生の意味に気づいていく過程を、幻想的なナンバーにのせて描いていくシリアスかつコメディ要素もあるヒューマンドラマ。全編がカングとヘギのふたり芝居になり、トリプルキャストのカング役をドンヒョン(BOYFRIEND)、キム・ナムホ、チュ・ミンジン。ダブルキャストのヘギ役をチョンジ(TEENTOP)、パク・シファンが演じる。
 日本公演まで1ヶ月を切った2月上旬、この日の稽古には、5人のフルキャストが参加していた。稽古が始まる前のスタジオに入ると、和やかな雰囲気のキャストとスタッフたちに迎えられ、さっそくメインキャストとしてチームを引っ張るドンヒョンとチョンジが日本語で挨拶してくる。ふたりはそれぞれK-POPグループのメンバーとして日本でもアイドル活動をしており、日本でのミュージカル出演経験もある。そんな日本になじみのあるふたりが、ほかのキャストを紹介してくれた。
 歌手でもあり、若手実力派俳優として韓国で人気急上昇中のパク・シファンは、スマホで翻訳した日本語で一生懸命話しかけてくる。無邪気に冗談を言ってはいじられている姿も愛らしい。気がつくと近くに寄って来ていたり、人なつっこさは人一倍。今回の初来日を前にすでに日本の彼のファンが盛り上がっているのも納得のスター性を感じさせる。

 もうひとり堪能な日本語で話しかけてきてくれたのが、キム・ナムホ。日本への留学経験があり、日本でのミュージカル出演やコンサート開催など、ここ数年で日本での芸能活動を急増させている。日本についての話を聞くと、そのエンタテインメントシーンへの強い関心を感じさせた。歌唱とダンス、演技の実力はすでに認めらているだけにこの先の日本活動への期待も高まる。

 長身でクールなたたずまいのチュ・ミンジンは、実力派として名を馳せる売れっ子ミュージカル俳優。日本での韓国ミュージカル出演も今作が3作目になるベテラン。物静かそうだが、話しかけると爽やかな笑顔を見せ、スタッフたちを気遣う姿も見られる礼儀正しい好青年。演じているときの俳優としての顔と、ふだんの穏やかな素顔のギャップが印象的。5人とも話を聞いていると、自然にミュージカルへの熱い想いがあふれ出てくる。

シーンごとにキャストの組み合わせを替えて通し稽古

 稽古はほぼ毎日のように連日行われているのだが、多忙を極める5人が一堂に会するタイミングはなかなかなく、実際の公演の組み合わせに限らず、ふだんは参加できるキャスト同士で稽古が進められてきている。この日は全キャストがそろったことから、シーンごとに実際の組み合わせのふたりが、演出家やキーボード奏者などスタッフがならぶデスクの前に立ち、演技に入る。そのシーンが終わると、次のシーンでは別のコンビと入れ替わり、キャストが代わりながらストーリーの流れに沿った通し稽古が行われていた。

 キャストたちは、これまでに重ねてきた稽古で歌も演技もほぼ仕上がっている状態。ふたりがシーンを演じ終わるごとに演出家からは「OK!」という声が飛び、別のふたりが次のシーンに入る。袖に下がっている俳優たちは、別のキャストによる同じ役の演技にじっと見入り、歌い方のニュアンスにまで神経を尖らせている様子。そんな一連の流れが区切りのいいところまで行くと、全員が演出家のもとに集まって、ダンスなどの動きの細かい調整や芝居の演出が入り、キャストそれぞれも確認事項を話しあい、再びシーン稽古に入っていく。そんな流れが続いていった。
 ふたり芝居という俳優にとって歌にも演技にも負荷の大きい作品になるため、稽古場には緊張感が張り詰めているのかと思いきや、若い俳優たちだけでなくスタッフの笑い声も飛び交う和やかな雰囲気。そんななかでも締めるところは締めるというメリハリのある心地よい空気に包まれていた。稽古期間も後半に差し掛かっているタイミングなのだが、順調に進んできていることの現れなのかもしれない。

稽古の合間に話しかけてくるキャストたち「いまからドキドキ」

 キャストたちは、稽古の合間など空き時間に気さくに声をかけてくる。今回が3作目の日本公演になるチュ・ミンジンは、「最初は日本での韓国ミュージカル公演がどう受け止められるか不安もあったのですが、いざフタを開けてみるとみなさん本当に楽しんでいただいていました」。同じく日本での公演経験があるキム・ナムホは「今作での日本公演をずっと楽しみにしていました。とにかく演技に集中して、なにをどう伝えていくかということを大事にして稽古に臨んでいます」。初来日を楽しみにしているというパク・シファンは「日本のステージに立ったときに自分がなにを感じるのか、とても気になっています。いまからドキドキしています」と笑顔を見せた。
 そして、K-POPアイドルとしての音楽活動やミュージカルでの日本公演を経験しているメインキャストのふたりも、「日本公演ということで特別になにかを意識するということはなく、演技的なところに集中して仕上げていっています」(チョンジ)「役に集中してキャラクターに成りきった自分の気持ちを引っ張りだすことがよい結果につながると思います」(ドンヒョン)と自信をのぞかせる。

 先鋭的な作品が数多く生み出される聖地・テハンノから、新たな作品を海外に発信しようとする若きクリエイターと俳優のチームからは、ゆるくもキツ過ぎることもない穏やかなクリエイティブのエネルギーが満ち溢れていた。

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