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進化続けるものまね芸 “マネされる標的”にも変化が

 1月6日に放送された『爆笑そっくりものまね紅白歌合戦スペシャル』(フジテレビ系)で、お笑い芸人・おばたのお兄さんが、俳優・小栗旬のものまねを披露すると、「何回でも見たい」「ツボ過ぎる」など、ネットで大絶賛された。小栗旬と言えばイケメン俳優で、かつてのものまねの“題材”からすると微妙に枠外の人物。今やものまねは、清水アキラによる五木ひろしや谷村新司、コロッケによる美川憲一、ちあきなおみといった“特徴ありすぎ”の人物から、「そこを真似るか!?」と視聴者の意表を突いたディテールなど、“ものまねされる標的”にも変化が生じているようだ。

かつて“ものまね四天王”時代は、過剰にデフォルメしたキャラが主流

 おばたのお兄さんによるものまねでは、小栗旬の出世作となったドラマ『花より男子』(2005年 TBS系)の花沢類を連想させるオールホワイトの衣装コーディネートで登場。最近のものまね番組によくある“全員○○系(例・全員藤原竜也系)”の形で“ピコ太郎軍団登場”という流れだったが、おばたのお兄さんは衣装の上にピコ太郎のトレードマークであるヒョウ柄のストールをまとい、「I have a 花、I have a 団子、Ah、花より男子♪ I have a 信長、I have a 協奏曲、Ah、信長コンチェルト♪ 花より男子〜信長コンチェルト〜〜ポイッ、ま〜きのっ」とやったわけである。その容姿は微妙で、似ていると言えば似ているというレベルだが、おばたのお兄さんは「もし小栗旬がお笑いライブに出たら」などの別バージョンも披露しており、これら一連の小栗ネタは、特に『花より男子』を知っている層はもちろん、花沢類を知らない“新規層”でも、旬のトレンドや“あるある”系ネタとの組み合わせによって、何となく笑えてしまうという“デキ”に仕上がっているのである。

 ただ、ものまねされる人物が誰だかわからなくても、つい笑ってしまうという芸は過去からあった。コロッケのちあきなおみや野口五郎にしても、当時はオンタイムで彼らの全盛期を知る人は少なかったはずだ。しかしコロッケは、本人の原型をとどめないほどにキャラをデフォルメし、誰が見ても爆笑するものまねを確立していく。「僕の場合は模写から妄想して破壊するので、全く違う物体になっていくんです。(略)僕自身、破壊したあとに凄く大事にしたのが“余韻”なんですね。ものまねって家族で観る機会が多いと思うんです。その時、家族で『これ、似てるの?』、『フフフ、いや似てないんだけど…』、『じゃあ、なんで笑ってるの?』っていう会話をして欲しかった」(『ORICON NEWS』インタビューより/2014年7月16日)

 そして1980年代後半〜1990年代前半にかけて、ものまね四天王(清水アキラ、コロッケ、ビジーフォー、栗田寛一)が全盛期を迎えるが、ものまねされるのは大御所歌手や人気アーティスト、ルパン三世のような有名キャラが中心で、それほど“素材”への意外性はなかった。あくまでもその歌手の曲に合わせてしぐさや声をマネるのが主流で、せいぜい栗田貫一が“もしも細川たかしがセミだったら…”といったものまねをするぐらいだった。

近年はマニアックなディテールを重視 “本人”を見て納得する逆転現象も

  • (左)吉高由里子のものまねで知られる(右)福田彩乃

    (左)吉高由里子のものまねで知られる(右)福田彩乃

  • 横澤夏子

    横澤夏子

  • 前田敦子のものまねで人気を得たキンタロー。

    前田敦子のものまねで人気を得たキンタロー。

 そんな流れが変わったのは、やはりコージー冨田や原口あきまさなど、ものまね新世代が出てきてからだろう。例えば、神奈月によるプロレスラー・武藤敬司や三沢光晴、前巨人軍監督の原辰徳氏などは、ものまねとしてのレベルが高いだけではなく、一般層には知られていないはずの“武藤は膝が悪い…”といった動きも模写し、プロレスファンならずとも「あの変な動きが面白い〜」として一般層にも浸透していったのである。

 また、『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)の番組内企画「細かすぎて伝わらないものまね選手権」の影響も大きい。その名の通り、細かすぎるコアなネタが繰り広げられ、わかる人にはウケ、わからなくても何となくおかしいといったジャンルが確立したのだ。梅小鉢による“菅野美穂”や、福田彩乃による“引き笑いの長澤まさみ”などのほか、プロ野球のスター選手や外人選手のものまねなどが次々と披露され、河本準一(次長課長)、博多華丸(博多華丸・大吉)、山本高弘、キンタロー。、横澤夏子らが脚光を浴びた。バナナマン・日村勇紀による元横綱・貴乃花の幼少期のインタビュー「あのね〜、ぼくね〜」や、友近の中森明菜のものまねなどは、若年層にはわからないはずだが大ウケし、2014年に中森が『NHK紅白歌合戦』に出演した際は、“ああ、中森明菜は本当に声が小さくて、何を言ってるのかわからないんだなぁ…”と初めて納得するという“逆転現象”まで起きたのである。

一方でものまねされにくい著名人も 山田孝之や星野源をマネる猛者は現れるのか?

 こうした“ものまねされる側”の有名人には、わかりやすい特徴があるだけに笑えるのだが、逆に言えば“ものまねされにくい”有名人もいる。例えば“カメレオン俳優”の異名も持つ俳優の山田孝之などは、そのつど作品の役柄に染まり切ってしまうため、山田の本来のキャラがわかりづらく、ものまねされにくいのだ。実際、『勇者ヨシヒコ』シリーズ(テレビ東京系)の淡々とした口調をマネるのは難しそうだし、『闇金ウシジマくん』シリーズ(TBS系)の“濃い”キャラにしてもどこか単調で、これまでにも『爆笑そっくりものまね紅白歌合戦スペシャル』の「顔だけ似てる」枠で“顔が太った山田孝之”が登場したくらいである。また、昨年の大ヒットドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(同系)の星野源にしても、“塩顔系”のどこかニュートラルなイメージに加え、役柄的にも特別な“クセ”や“アク”がないだけに、やはりものまねしにくいのではないだろうか。

 それでも最近では、もはや“ものまねできないものはない”というくらいに、ネタが細かなディテールにわたって“渉猟”されている感もあり、これまで見てきたようなものまね芸人たちの努力と実績に支えられ、飛躍的なスキルアップが行われてきた。お茶の間でも長く愛され続けているものまね芸。これからも新世代芸人たちの登場や活躍とともに、決して廃れることのない“鉄板コンテンツ”としてわれわれを楽しませてくれることだろう。

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