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中田ヤスタカインタビュー「前例のない新しいルールを敷きたい」

海外でも注目を集める中田、「海外で勝負しに行く感覚はない」

――昨年、中田さんは『関ジャム 完全燃焼』(テレビ朝日系)に出演されていました。バラエティ番組に出るのは珍しいなと思ったんですが。
中田ヤスタカ 勧められたから出ただけなんですけど(笑)。テレビに出たいか?と聞かれたら、僕はどちらかというと出ない方がいいです(笑)。

――(笑)あの番組で中田さんが音楽作りの秘密を公開していましたよね。その中田サウンドの秘密の1つが、「原宿いやほい」には入っています。イントロに、のちにサビの後ろで流れるフレーズが使われているっていう。
中田ヤスタカ そうですね。そういうことは普通にやってますけど、ポップスのフィールドでは考えられなかったと思うんですよ。だって、楽器による音のサビはあるけど、歌が乗ってるメロディのサビはない曲だから。もしもこれがコンペだったら、絶対に落ちますから(笑)。でも、自分がきゃりーぱみゅぱみゅをプロデュースする立場にあって、出せるのであれば、こういう曲をやった方がいい。やっぱり前例のない……新しいレールを敷いていきたいというのもありますね。

――きゃりーは海外人気も高いですが、プロデュースにおいて世界を意識することは?
中田ヤスタカ 世界基準とかワールドワイドっていう感覚はまったくないですね。それよりは、その国っぽい曲を書きたい。世界に勝負しに行こうという感覚はまったくないです。

――自分らしい曲をやる中で、それが東京を代表するサウンドになったらいい?
中田ヤスタカ そうですね。ただ、自分がやってるようなサウンドが“東京”だと思われるためには、僕と似たことをやる若い人たちがたくさんいてくれないといけないですけどね(笑)。自分1人だけでは東京サウンドにはならない。これからいろいろ見えてくるのかなという気はします。

日本人が“通用する”判断基準に疑問、東京五輪への展望は?

――東京サウンドを確立していく上で、その第一歩となるのが、中田さん名義での新曲「Crazy Crazy feat. Charile XCX & Kyary Pamyu Pamyu」ですよね。チャーリーと一緒にやることになったのは?
中田ヤスタカ チャーリーの曲をプロデュースしているようなアーティストが、僕の曲を聴いてくれていて、しかもめっちゃ詳しかったんですね。そんなイギリスのオタクが(笑)、いろんなところで活躍してて。なるほど、こういう状況もあるんだと思いました。そんなところでの話が広がって、今回一緒にやることになったという。

――海外の音楽クリエイターは、中田さんが作った曲を普通に聴いてる状況なんですよね。
中田ヤスタカ 日本人が“海外で通用するかしないか?”を判断する基準って、海外でCDが何枚売れたとか、チャートに入ったとか、そういう話しかしないじゃないですか。でもたとえば僕の場合なら、ロンドンのPC MUSIC(チャーリーに続き、アメリカではカーリー・レイ・ジェセプセンの楽曲も手がけている)や、フランスのマデオン(エレクトロポップアーティスト。レディー・ガガやColdplayの楽曲を制作およびプロデュースしている)とか、いろんな国の人が僕の曲を聴いていいと思って、「影響を受けて曲を作ってるよ」と言ってくれる。僕はそっちの方が楽しいし、それが海外に通用するということだと思ってるんです。

――ケイティ・ペリーがきゃりーをお気に入りだとツイートしたり、日本の80年代のポップスをサンプリングネタとして使っている海外クリエイターも出てきてますし。
中田ヤスタカ そうなんですよ。日本人は、日本のクリエイターは洋楽のフォロワーだと思ってるんですけど、そうでもないんだということを、自分の活動を通して伝えていけるようにしたい。自分の曲を聴いて影響を受けたという声が、いろんな国や地域のプロのクリエイターから出てくることが僕は嬉しいし、海外でこれからプロになろうとしている人たちの参考になるような曲を出していくことが、自分の成功だと思ってます。

――チャーリーとの第1弾を経て、今後はどう考えてますか?
中田ヤスタカ 彼女は、僕が今までいろんな曲を作ってきた中でも、最大レベルで声が強かった。これまで使ってきた音色とは違ったアレンジができて、新鮮で楽しかったですね。だから、これからソロ活動を通じて、縁がある人はもちろん、まったく接点がない人とも関わってみるのも面白いかなとも考えています。例えば、あるシンガー・ソングライターの、声の音色や歌い方のセンスだけが欲しいと思ったとしますよね。その人が、「自分のジャンルとは違うけど、声だけ貸します」と言ってくれるなら、そういうこともやってみたい。それこそコラボレーションの醍醐味だし、“中田ヤスタカ”名義じゃないとできないことだと思うんです。そういう意味では、僕がやってるような音楽が得意じゃない人でも全然いいし、どんなコラボができるのかいろいろ楽しみです。

――ちなみに2020年、東京五輪に向けては何か考えていらっしゃいますか?
中田ヤスタカ 健康でいます(笑)。関わるかどうかは、自分で考えてもどうにもならないし、わからないですからね。僕はそんな権力を持ってないので(笑)。
(写真:西岡義弘 文:永堀アツオ)

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