ORICON NEWS
ドキュメンタリー手法がバラエティで重宝されるワケ
“時代の映し鏡”であったドキュメンタリー作品の反映と衰退
だが、80年代になるとドキュメンタリーが衰退傾向に。当時の視聴者はドキュメンタリーが“実際に起こった出来事”、“リアルな世界”という認識をしてきた。しかし、カメラの前で行われる出来事は少なからず脚色があり、出演者も過剰な演出を行っている。この衰退は“作りあげられたリアルな世界”であることに気付いた視聴者の落胆から生まれたともいえるだろう。
バラエティ番組に見事にフィットした“ドキュメンタリーフォーマット”
「現在放送中の『あいつ今何してる?』は、芸能人のかつての親友や初恋の人といった“思い出の人”を登場させて、視聴者目線で共感させる“親近感”がウリ。『世界の村で発見!』も、未開の地で生活する知られざる日本人を千原兄弟の兄・せいじさんが持ち前の適応力とずうずうしさで、現地人とコミュニケーションするといった内容です。いわばドキュメンタリータッチの内容に、バラエティでは昔からあった“素人イジリ”の要素を加味したような手法ですね」(バラエティ番組制作会社スタッフ)
ドキュメンタリーに求められる“リアルな物語”が実現
「今や素人もテレビ慣れていますし、SNSの普及で自己演出や自己アピールも面白くなってきている。でも、やはり素人ゆえの“お約束”ではない想定外の出来事や、地味だけど心温まる話などがウケているんです。テレ東さんの『家、ついて行ってイイですか?』などは、終電後の駅前で面白そうな素人さんを捕まえて、家までのタクシー代を出すという条件で本当に家についていく。そして今までの人生を赤裸々に聞き出します。それを見ているMCのビビる大木さんやおぎやはぎ・矢作(兼)さんのいる収録会場も、スタジオではなく本物の素人の家。“ガチ”な素人ドキュメンタリーなんですが、しっかりバラエティに昇華させているんですね」(前出・スタッフ)
確かにSNSの爆発的普及によって他者とつながることが容易になり、それだけ他人(=一般素人)に対する関心も高まっているという背景もあるだろう。加えて、パブリックイメージや事務所の規制もある芸能人よりは、素人のほうがよりスキャンダラスで過激な内容を表現できるということもあり、よりリアルなものを作ることができる。場合によっては、芸能人以上の“物語”があるのだ。当たり障りのない話題で“バカ騒ぎ”するバラエティ番組よりも、ごく普通に暮らす市井の人々の等身大のドキュメンタリーのほうが、親近感も湧くし、切実に共感もできる。つまり“面白い”のである。これからもバラエティにおける“素人ドキュメンタリー”の手法は、形を変えながらも進化し続け、時代時代に合ったバラエティのフォーマットとして確立し、放送されていくことだろう。