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ドキュメンタリー手法がバラエティで重宝されるワケ

  • 『家、ついて行ってイイですか?』に出演している(左から)矢作兼、ビビる大木、鷲見玲奈アナウンサー (C)ORICON NewS inc.

    『家、ついて行ってイイですか?』に出演している(左から)矢作兼、ビビる大木、鷲見玲奈アナウンサー (C)ORICON NewS inc.

 先月にライブ活動を無期限休止した氷室京介の6年間を追った作品や、佐村河内守氏のゴーストライター騒動を描くなど、ここのところドキュメンタリー映画が話題になっている。同時に、芸能人や有名人ではない一般人、いわゆる“素人”の日常を面白おかしく、ときに感動的に描いた『家、ついて行ってイイですか?』(テレビ東京系)、『あいつ今何してる?』(テレビ朝日系)、『世界の村で発見!こんなところに日本人』(同)など、ドキュメンタリーの手法を取り入れたバラエティ番組が年々増えている。ごくごく普通の人々の普通の日常を淡々と追いかけた “素人ドキュメンタリー”が、なぜバラエティ番組として人気を集めているのだろうか?

“時代の映し鏡”であったドキュメンタリー作品の反映と衰退

 ドキュメンタリー番組とは「演出なしで、ありのままに人物や事件を記録する番組」のことで、1960〜70年代には“時代の映し鏡”として社会に大きな衝撃を与えてきた。いわばドキュメンタリーは、社会に問題提起する“テレビ局の良心”でもあったのである。 特に60年代はドキュメンタリーの最盛期で、NHKでは『日本の素顔』、日本テレビでは『ノンフィクション劇場』といった番組が放映されていた頃、当時テレビ東京のディレクターだったジャーナリストの田原総一朗氏は、『ある学生運動家のゆくえ』や『オレはガンじゃない〜片腕俳優高橋英二の一年半〜』などの問題作を世に送り出し、大きな影響を与えた。当時の田原氏のスタッフでもあった映画監督・原一男氏は1987年になって、国内外で高い評価を受けたドキュメタリー映画『ゆきゆきて、神軍』の監督・撮影もしている。

 だが、80年代になるとドキュメンタリーが衰退傾向に。当時の視聴者はドキュメンタリーが“実際に起こった出来事”、“リアルな世界”という認識をしてきた。しかし、カメラの前で行われる出来事は少なからず脚色があり、出演者も過剰な演出を行っている。この衰退は“作りあげられたリアルな世界”であることに気付いた視聴者の落胆から生まれたともいえるだろう。

バラエティ番組に見事にフィットした“ドキュメンタリーフォーマット”

 視聴者のテレビに対する認識も深まって来た90年以降、素人がアイドルになる過程(モーニング娘。等)を追いかける『ASAYAN』(テレビ東京系/前身は『浅草橋ヤング洋品店』)や、『進め!電波少年』(日本テレビ系)の“アポなし突撃”など、筋書きの中にリアルを盛り込んだ番組が登場してくる。さらに、2000年代に入ると『あいのり』(フジテレビ系)や『テラスハウス』(同)のような“リアリティショー”という新ジャンルが生まれ、バラエティにドキュメンタリーの要素を入れるという流れが出始めた。このような流れによってバラエティ界にドキュメンタリーがうまく重なり合い、視聴者もどこまでがフィクションでどこまでのノンフィクションなのか、その曖昧な境界線に一喜一憂することとなった。

 「現在放送中の『あいつ今何してる?』は、芸能人のかつての親友や初恋の人といった“思い出の人”を登場させて、視聴者目線で共感させる“親近感”がウリ。『世界の村で発見!』も、未開の地で生活する知られざる日本人を千原兄弟の兄・せいじさんが持ち前の適応力とずうずうしさで、現地人とコミュニケーションするといった内容です。いわばドキュメンタリータッチの内容に、バラエティでは昔からあった“素人イジリ”の要素を加味したような手法ですね」(バラエティ番組制作会社スタッフ)

ドキュメンタリーに求められる“リアルな物語”が実現

 ドキュメンタリーフォーマットがバラエティ番組に上手くフィットしたとは言え、かつては“引き出し”もないし、普通すぎて面白くないと言われていた素人を主役とする番組が、今なぜ成り立っているのだろうか?

 「今や素人もテレビ慣れていますし、SNSの普及で自己演出や自己アピールも面白くなってきている。でも、やはり素人ゆえの“お約束”ではない想定外の出来事や、地味だけど心温まる話などがウケているんです。テレ東さんの『家、ついて行ってイイですか?』などは、終電後の駅前で面白そうな素人さんを捕まえて、家までのタクシー代を出すという条件で本当に家についていく。そして今までの人生を赤裸々に聞き出します。それを見ているMCのビビる大木さんやおぎやはぎ・矢作(兼)さんのいる収録会場も、スタジオではなく本物の素人の家。“ガチ”な素人ドキュメンタリーなんですが、しっかりバラエティに昇華させているんですね」(前出・スタッフ)

 確かにSNSの爆発的普及によって他者とつながることが容易になり、それだけ他人(=一般素人)に対する関心も高まっているという背景もあるだろう。加えて、パブリックイメージや事務所の規制もある芸能人よりは、素人のほうがよりスキャンダラスで過激な内容を表現できるということもあり、よりリアルなものを作ることができる。場合によっては、芸能人以上の“物語”があるのだ。当たり障りのない話題で“バカ騒ぎ”するバラエティ番組よりも、ごく普通に暮らす市井の人々の等身大のドキュメンタリーのほうが、親近感も湧くし、切実に共感もできる。つまり“面白い”のである。これからもバラエティにおける“素人ドキュメンタリー”の手法は、形を変えながらも進化し続け、時代時代に合ったバラエティのフォーマットとして確立し、放送されていくことだろう。

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