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大泉洋、おもしろさを期待される堅実な男…『普通じゃない感じを出そうとする必要はない』

NHK大河ドラマ『真田丸』での好演も話題の大泉洋が、最新主演映画『アイアムアヒーロー』ではZQN(ゾキュン)と呼ばれる謎の生命体に襲われた世界で、特別なヒーローではない“普通の男”の主人公を演じた。自らを“堅実な普通の男”“おもしろい人に憧れる”という大泉に“普通”について聞いた。

リアルなひとりの男が結果的にヒーローに見えるといい

――街にZQNがあふれ、パニックに陥った日本をサバイブしてゆく等身大の主人公・鈴木英雄を演じられました。撮影前、佐藤信介監督とはどんなやりとりをされましたか?
大泉英雄がラストシーンで、最後にひとりで立っている姿がサマになっていなくてはいけないという話はありました。でも、カッコよく見えるように演じてはいけないというのが僕の中にはあって。この映画って、英雄という男が、銃を撃つまでの話のような気がしたんですよね。世の中がパニックになっても、銃を持っているのになかなか撃てない。彼女にも言われていたけど、至って“普通”なんですよね、この人は。荒廃しきったアウトレットモールの、誰もいないお店で服をもらったときにも、ちゃんと自分の連絡先を置いていくしね(笑)。そういった、うだつの上がらない男が、最終的には銃を撃って、比呂美ちゃんだったり、薮だったり、自分にとっての大切な人を守る男になっていくという話だと思ったので、あくまでリアルに泥臭いけど一生懸命なひとりの男がそこに居るだけで、結果的にその男がヒーローに見えるといいなと思っていました。

――ヘタレの主人公を、どのように演じようと思ったのですか?
大泉普通の人が、普通じゃない状況に置かれていく物語ですからね。英雄に対して、普通じゃない感じを出そうとする必要はないと思っていました。とんでもないことに勝手に巻き込まれていきますからね(笑)。それよりも、彼がどうして強くなっていくのか? という部分を持っていれば、違和感はないのかなと。だから僕の中ではやっぱり、有村架純ちゃん扮する比呂美とのシーンが大事でした。たまたまタクシーで出会った女の子だけど、その設定もすごくリアルな気がしたんですよね。あんな危機的状況に陥って、周りに誰もいなくなって、いま一緒にいる比呂美ちゃんしかいないってことになったら“この人を守らなきゃ!”と思うだろうなと。(英雄は)ダメなヤツだけど、この子を守るためだったら、変われたというか、変わらざるを得なかったというか。
――比呂美役の有村さんとは、本作が初共演でしたが、英雄を変えてしまう存在感を感じましたか?
大泉それはもちろん、有村架純ちゃんが演じる比呂美がタクシーに乗り込んできたから、英雄も必死で守ろうとしたんでしょう。太ったおじさんと一緒になってたら、途中で「それぞれで行きませんか? じゃあ、僕はこっちに行ってみます」って言っていたかもしれないです(笑)。英雄じゃなくて僕だって、架純ちゃんが隣に乗って来たら守りますよ!

“普通”をいい言葉だとは思っていなかった

――愚問でした! もうひとりのヒロイン、薮役の長澤まさみさんとは久しぶりの共演ですね? 英雄の泣き言をときに優しく受け止め、ときには厳しく叱咤する、母性的な女性像が新鮮でした。
大泉薮に泣き言をいうシーンは、英雄にとって非常につらいシーンでしたね。比呂美ちゃんがいよいよやられてしまうという瞬間にも、引き金を引けなかったので。自分が情けない男だとはわかっていたけど、改めてああいう形で自分の無力さを見せつけられたというのは、本当につらかった。この作品のまさみちゃんは、大人の女性というか、架純ちゃんと一緒のシーンが多いから、余計に大人っぽさが際立ったんだろうし、本人もそういうつもりで演じていたんだと思いますけど、強くて美しい女性で、カッコよかったですよね。まさみちゃんときちんと共演したのは久々でしたが、またひとつ大人になったなあと思いました。最初に共演したときの彼女は10代で、性格はそのときから全然変わっていなかったですね(笑)。10代のころと変わらず僕をイジって遊んでいました(笑)。

――原作ファンの間では、大泉さんふんする英雄が、漫画から抜け出たようにそっくりだと話題になっていますが、『ビッグコミックスピリッツ』で連載中の花沢健吾さんの原作漫画はお読みになりましたか?
大泉リアルな漫画だなって思いました。タイトルは『アイアムアヒーロー』だけど、本当にヒーロー感があって、カッコいい漫画かというとそうじゃない。わりとどうでもいいようなシーンを長く描いていたりとか、そういうところもおもしろいなと思いました。パニック描写なんかもリアルです。原作ではパニックに乗じて、ネットの世界から凶暴になっていく人間がいたりするじゃないですか。“あり得るな!”って感じします。よくわからない情報に振り回されて、みんなが同じ方向に向いてしまう感じとかも“俺も家族と富士山に登るかも!?”って思いました(笑)。
――どこにでもいそうな、だからこそ共感を集める主人公が、戦いが終わって「ただの英雄です」と薮に名乗るラストシーンは、どのように解釈されましたか?
大泉“普通”という言葉に対しては、いろいろな考え方があると思いますが、英雄は普通をいい言葉だとは思っていなかったんですよね。「僕はただの普通の人間なんだ」って。ただ、いちばん最後の「ただの英雄です」という言葉には、彼の中でどこか吹っ切れた部分があったのかなと。普通だとか、普通じゃないとか、どうでもいいんじゃないの? という思いもあっての「ただの英雄です」という。そこまでのコンプレックスはなくなったのかなって気がしました。

窮地に陥っている感じが、三谷幸喜の思う大泉洋らしさ!?

――本作の英雄をはじめ、いわゆる普通の主人公に、強烈な個性を与えてきた大泉さんご自身は“普通”という言葉をどのように捉えていますか?
大泉誰が普通で、誰が普通じゃないかって、主観でしかないと思うんです。僕は自分のことを堅実な普通の男だと思っているし、普通であることにコンプレックスもあるけれど、じゃあ僕が「この人、すごいな!」って思っている人は、果たして自分のことを普通じゃないと思っているのかといえば、そうじゃないのかもしれない。だから普通だとか、普通じゃないってことにこだわる必要はないのかなと。少なくとも、普通だからといって、自分を卑下したり、落ち込む必要はまったくないと思いますね。

――普通であることに、コンプレックスをお持ちなんですか!?
大泉役者としては、もっと変わった男でありたいと想うことはありますよ。役者の中にも「なんて破天荒なことをするんだ、この人は!」という人、いるじゃないですか。“無茶するなー”って人を見ると、おもしろいなって思うし。やっぱり僕は、モラルだったり、倫理観みたいなものに縛られていて。おもしろいと言っていただけることもありますけど、僕にはできないってことをやる人、たくさんいますからね。人間的にはそういう人の方が魅力があるなって思うことはあります。
――主人公の兄・真田信幸役を好演中のNHK大河ドラマ『真田丸』でも、大泉さんにしか出せない個性が、じわじわとスパークしてきた印象も受けますが?
大泉この役に関して言えば、三谷幸喜さんの書く脚本が、僕のシーンで遊ぶことが多いんですよ! 僕のシーンを撮った後で現場では爆笑になることがありますが「本当に要るの、このシーン?」みたいなシーンがあるんですよね。本を書きながら、ニヤニヤしている三谷さんの顔が思い浮かびます(笑)。冗談交じりに、以前「真田信幸と言えば“信濃の獅子”と呼ばれた、非常に硬派で真面目な男のイメージがあるんだから、全国の信幸ファンをがっかりさせるようなキャラクターにはしないでください」って、三谷さんに言ったことがあるんです。でも、そのときも「だって仕方ないよ、僕が君を書くんだから。どうしてもおもしろくなっちゃう」って(笑)。後に信幸の義父になる本多忠勝役に、藤岡弘、さんが決まったときにも「藤岡さんと君が、同じ画に映るシーンを書くのが楽しみで仕方ない」というメールをいただきました。やっぱり三谷さんが僕を書く上で、どうしても三谷さんのイメージする“大泉洋らしさ”が出てしまうってところはあるんじゃないでしょうかね(笑)。

――三谷さんのイメージする“大泉さんらしさ”というのは、どういう部分だと思いますか?
大泉やっぱり、三谷さんにとっての僕のおもしろさじゃないですかね。そこはかとないおもしろさだったり、困っている感じだったりっていうのが、周りがイメージする僕らしさなのかなって思います。なぜだかはわからないんですけど、窮地に陥っている感じが僕らしいのかなって(笑)。
(文:石村加奈/撮り下ろし写真:逢坂 聡)

アイアムアヒーロー

 平凡な毎日を送る35歳の漫画家アシスタント鈴木英雄(大泉洋)。彼の恋人が突然、凶暴に変貌させるウイルスに感染して襲い掛かってきた。待ちに出ると、謎の感染によって人々が変貌を遂げた生命体『ZQN(ゾキュン)』で溢れ、日本中は感染パニックに陥る。出会った女子高生・比呂美(有村架純)と元看護師・藪(長澤まさみ)とともに生き残りを賭けた極限のサバイバルが始まった……。

監督:佐藤信介
出演:大泉洋 有村架純/吉沢悠 岡田義徳 片瀬那奈 片桐仁 マキタスポーツ 塚地武雅 徳井優 長澤まさみ
2015年4月23日(土) 全国ロードショー
(C)映画「アイアムアヒーロー」製作委員会 (C)花沢健吾/小学館
【公式サイト】(外部サイト)

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