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女性アイドル界から減少する「解散」 「卒業制度」がもたらした変化とは?
脱退に「卒業」という言葉を用いたおニャン子クラブ
とはいえ、おニャン子クラブが当時(1980年代半ば)、他の追随を許さない女性アイドルグループだったことや、また87年にはおニャン子そのものが消滅、さらにその後のアイドルグループに“国民的”な存在が誕生しなかったことも重なって、その後、マスメディアを通してアイドルシーンにおける「卒業」が喧伝される機会は一気に減少してしまう。
グループ名を“ブランド”にして継続 モー娘。が築いた新しいアイドル形態
ただ、大きく異なったものがある。「クラブ活動」からの卒業という言葉の置き換えに過ぎなかったおニャン子に対し、モーニング娘。のそれには「グループの存続」、もっと大げさな表現をするなら「ブランドの存続」というもう一つの命題があった。メンバーは出ていくけれども、“モー娘。”というグループは続いていくということを打ち出すための「卒業」であったと思われる。事実、1997年に第1期のメンバーによって結成されたモーニング娘。だが、現在のメンバーの大半はその時に生まれていない者ばかりである。卒業を重ねることでグループの新陳代謝を図る――この構図はAKB48にも受け継がれ、いまや多くの女性アイドルグループがそのシステムに倣っている。
2〜3年でアイドルと共に卒業したファンにも変化 アイドル界の活動歴が長期化
ところが、モーニング娘。のように、メンバーが次々と交代しながらもグループは継続し、ファンもまた彼女たちを応援し続ける例が生まれ始めると、その後は「推し変」「ハコ押し」するファンが当たり前になってきた。背景にあるのは「情報収集」の多様化だ。かつて、芸能誌やテレビ番組がアイドル情報を得るわずかな方法であったのに対し、インターネットの普及以降は、いつでも最新の情報を入手することが可能になった。少しでも気になったならそれらの情報を手に「推し変」することは格段に容易になった。
ましてや、握手会などアイドルと直に接してその人となりを実感する機会も増えている。大人数のグループが増え、個々のメンバーの個性が明確になってくると、70〜80年代のアイドルシーンを支配していた「メンバー固定」「変更不可」という価値観は崩壊していく。アイドルの活躍するフィールドが広がることで、あらゆる方面からの新規ファンを導入することも可能になった。もちろん、そこにも「情報収集」が容易に行えることは大きな影響を与えている。かつて、2〜3年と言われたアイドルの活動歴は、いまや5年、10年が不可能ではなくなった。ファンの「推し歴」が長くなっている現状を見ても、現在のアイドルシーンは、この後も続いていくのではないだろうか。
(文:田井裕規)