スガ シカオ、独立後の葛藤を語る「ほぼゼロに戻った」

音楽を聴いたときのドキドキ感が薄れてきている

――なるほど。以前から他のアーティストが触れない領域をテーマにしてきた印象がありますが、スガさんにとって理想の歌詞とはどんなものなんですか?
スガ いちばんの理想は、歌詞を読んだときに「これってスガ シカオじゃない?」と思われるというか、他の誰も書けないものというのが理想ですよね。甘いラブソングであっても、自分にしか書けないものを書きたい。今回のアルバムの歌詞は、毒気云々を強く意識したわけではなくて、制作の最初の段階で出てきたコンセプトが「事件性」「スキャンダラス性」「日常の闇」といったものだったので、そこがブレないことは意識しました。生活しているなかでスッと闇に引き込まれる瞬間だったり、自分のなかの闇にふっと気づく瞬間だったり……。ミュージックビデオやアルバムのジャケット写真も、そのコンセプトに沿っています。アルバムの世界観に合う写真家も3ヶ月くらいかけて探しました。

――そういったテーマはスガさんならではですよね。
スガ 他の人は背中を押す応援ソングとか、もっとポップな感じかもしれないけど、僕の場合は日常の世界にある闇というか……何でもいいんですけど、聴いてくれる人をドキドキさせようっていうのが、いちばん思ってることです。楽しくてドキドキすることもあるだろうし、「これ聴いちゃマズイんじゃないか?」というドキドキ感もある。音楽を聴いた時のドキドキ感が、今、どんどん薄れてきているような気がして、そこをもう一度、みんなでドキドキしようって。俺の場合は、ヤバくてドキドキするっていうのが合ってるんでしょうね。

――“ヤバい”歌詞を続けて書いていると、暗闇に引きずり込まれそうになったりしそうな気もしますけど……。
スガ いやー、今回のアルバムのような書き方は、もう2度と無理だとは思いますね。自分の心というか内面にダイブして、そこからメッセージ性を拾ってくるっていう。ドキュメンタリーみたいな感じで作るのって、けっこう精神的がもたないんですよ。もう1回やれって言われても、出来ないでしょうね。

――そういう意味でも『THE LAST』なのかも。最初で最後のアルバムというか。
スガ “デビューアルバム”ってそういうものだと思うんですよね。『Clover』(1997年発売の1stアルバム)もそうだったけど、今回もデビューアルバムだと思ってるので。デビューアルバムにしかない1発感ってあると思うんです。

今CDが売れなくなることより、もっと先のことを懸念してる

――12月に『THE LAST』の生ライブ試聴会ということで、発売前にライブでアルバムの曲をやってしまうという試みをされましたけど、どんな意図があったんですか。
スガ それも「ドキドキしてもらおう」ということの一環ですね。最初に曲を聴くときって、配信かラジオかCDというパターンが多いと思うけど、そうじゃない場所で初めて聴けたら、すげえドキドキするんじゃないかっていう話から始まって、全く聞いたことない新曲を画面に歌詞を映しながら歌ったらドキドキするんじゃないか、ということになった。おもしろかったですよ。みんな衝撃で動けなくなって、拍手も起きないくらい。

――静かに聴き入ってるということですか?
スガ 始まる前はみんな悪ふざけとかしてるんですよ。アルバムのCMを流すと「フーッ!」って叫んだりして。でも、目の前で1曲目(「ふるえる手」)をドーン!と演奏した瞬間、シーンとしちゃって、最初の3曲は拍手もなく、硬直してましたね。多分、来てくださった方は新作の試聴会だからさらっと終わることを予想してたと思うんですけど、がっちり歌詞も出るし、CDで初めて聴くのと全く同じ環境をやるので、相当衝撃だったみたいです。ライブの後の書き込みの数もすごかったですよ。

――そういう予定調和ではないリアクションは最高じゃないですか?
スガ そうですね。予定調和ではない感じはアルバムにも出てると思うし。よく桜井(和寿)くんと飲んだときとかに話すのが、「CDが売れなくなる」とか言うけど、ミュージシャン自身はあまり気にしていなくて。もちろん生活が苦しくなる人もいるだろうけど、それよりも怖いのは、人の心から音楽のドキドキ感がなくなること、これが一番俺たちにとって恐怖だよね、って。人が音楽にドキドキしなくなったり、興味がなくなったりしていくことが一番なってはいけない状況だし、そうならないために自分たちが作る作品のレベルや姿勢に掛かってる。そういう意識を持っているアーティストは、今、すごく多いと思うんですけど。今CDが売れないっていうより、もっと先のことを懸念している人が多いと思います。伝わり方はライブでも、配信でも、何でもいいんですよ。そういうかたちを問う時代ではとうにないので。やっぱり時代とともに音楽の価値もどんどん変わっていってるし、急速にいろんなものが変わるじゃないですか。そういったときに、ドキドキ感がなくなっていくのだけは心配だなと思います。

――アーティストの作品づくりにかかっていると。
スガ まあ、曲だけではないんですけどね。例えば、仲良くしている若いバンドの連中とかは、曲というよりもパフォーマンスそのものがウリの人たちもいて、すごい心躍るパフォーマンスをする。かたちはいろいろあると思います。

従来のフォーマットにハマらないアーティストが増えている

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――音楽を取り巻く環境って、それこそスガさんが独立した頃から一気に変わってしまいましたからね。危機を本能で察知して動いたところもあるんじゃないですか?
スガ うん、まさにそうで、そういう事態に、一人だったらいくらでも対応できるんですよ。ちゃんとファンにさえ説明できれば、一人ならどこでも行けるし、なんでも出来る。でもチームプレーでやってたり、他にアーティストが並行でいたりすると、そこを置いてけぼりにしてまではできないことが多いから。その危機感はありましたね。

――同じチームで動くのではなく、たとえばアルバムごとに違うチームを編成するほうがいいんですかね。
スガ 俺自身が思うのは、アーティストの在り方は一人ひとり違うと思うんですよ。それを例えば一つのレコード会社とか、一つの事務所とかで、規則を作って何かをやろうとするから良くないんだと思うんです。例えばメジャーなら、“こういう契約で、契約金はこれくらいで、何年かでアルバム何枚出さなきゃいけない”というフォーマットでまとめようとするけど、もうそのフォーマット自体にハマらない人もたくさん出てきてるんですよ。“1アーティスト、1フィールド”みたいにどんどんなっていくべきだと思いますね。契約も違うし、活動の仕方も全部違うし。そうなるべきだと思って、一人でやり始めたんですよね。

――『THE LAST』を引っさげたツアーというのはやらないんですよね。
スガ やらないです。もう、先にやっちゃってるので。アルバムのタイトルを冠したツアーというのはないです。その代わり、ちょうどいいタイミングで、WOWOWで発売前のツアーの放映があるんです。それがアルバムの後のツアーになると思います。

――それも新しいやり方の一つですね。ツアーをやってほしいっていう声もありますよね?
スガ ありますけどね。「とか言って〜! 当然、やるんでしょ?」っていう。でも「最初のアナウンス通り、ないよ」って言ってます(笑)。

――最後にアルバム発売後の展開について聞かせてください。
スガ すぐにkokuaのアルバムの制作が始まるんですよ。11月に『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK総合)に出たんですけど、「Progress」から10年ということでアンサーソング(「夢のゴール」)を作ったんですね。その反響がすごく大きくて、早めにアルバムを作ろうということになったんです。アルバム(『THE LAST』)のツアーをやらなくて良かったかもしれない……やってたら、kokuaの制作はできなかったから。ただ、夏に向けてイベントにはいっぱい出ます。2017年は20周年なので、そこに向けて盛り上げていくための下地作りをしようと思ってます。『THE LAST』が20周年に向けたスタートですね。

(文/森朋之)

スガ シカオ『THE LAST』スペシャルサイト(外部サイト)
2月28日、WOWOWで放送 SUGA SHIKAO LIVE TOUR 2015『THE LAST』(外部サイト)
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