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ORICON NEWS
森高千里は低迷するフジテレビを救えるのか?
大御所から若手までアーティストたちを魅了する森高は、新しい音楽番組に不可欠
デビュー25周年(2012年)に活動再開後、夏フェス出演など新たなチャレンジを精力的に展開。その森高が初めてMCを務め、しかも生放送。「正直、なぜ?」という疑問が浮かばないでもない。若い世代からするとただの“オバサン”ではないか、という捉え方もあるだろう。しかし、その見解はまだ早い。近年の活動実績を考えると、今“旬”なアーティストのひとりであることに疑いはない。また、吉田拓郎や泉谷しげるをはじめ、大御所から若手まであらゆる世代のミュージシャンやアイドルたちが森高をリスペクトし、「渡良瀬橋」などの作品群が現役アイドルや実力派シンガーにカバーされている。45才になった今でも“ミニスカ”で観る者を魅了する、変わらぬスタイルや容姿の美しさも特筆ものだ。つまりは、時代を飛び越えて新境地を切り拓いている“旬”なアーティストである一方、多くのアーティストたちをも魅了する才能を持った彼女こそ、新しい音楽番組に不可欠なピースなのではないか、という思いさえ湧き上がってくる。
良質な音楽番組を制作してきた“実績”はあるフジテレビ
生放送という枠を外せば、『ミュージック・フェア』や『僕らの音楽』などの良質な音楽番組を手がけ、『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』や『LOVE LOVEあいしてる』(後に『堂本兄弟』→『新堂本兄弟』)といった成功例もあるが、『ミュージック・フェア』以外の番組はそれぞれの役目を果たし終え、その後は別のスタイルの音楽番組が模索されてきた。しかし、それらが必ずしも確かな成果を上げたとは言い難い。もちろんそこには、音楽の試聴スタイルやテレビの視聴スタイル、人々の生活スタイルの変化がある。しかし、人気ドラマやスポーツが人々を喜ばせたり感動させるように、音楽にも人々を動かす力がないわけではない。でなければ、いくら年末の恒例行事とはいえ、日本中の4割もの世帯が『NHK紅白歌合戦』にチャンネルを合わせるわけがない。
“救いの女神”が真価を発揮するには中長期的な目線が必要
新番組『水曜歌謡祭』は、その『FNS歌謡祭』で長年にわたり演出を手がけてきた板谷栄司氏らがチーフプロデューサーとして名を連ねている。スーパーバイザーは『ミュージック・フェア』を育て上げた石田弘氏。いわば、両番組の遺伝子を併せ持ったプログラムということになる。そこに未知の魅力を宿した森高という才能が加わる。森高の華やかさとミュージシャンの愛され度から推し量ると、豪華で明るくも、音楽の本質に迫る内容が期待できそうだ。だからといって、勝負は下駄を履くまでわからない。フジが森高に求めているものと、彼女自身の音楽への価値観にズレが生じてしまえば、生放送という“取り返しのつかない”演出空間が手伝って大惨事を招いてしまう可能性だって否めない。SNSが発達した現代では、一度の“賛辞”も次は“惨事”へと容易に変容してしまうことから、良くも悪くも注意が必要だ。
音楽番組が育ちにくい時代に、敢えてゴールデンタイムで生放送というスタンスを打ち出したフジの“期待”を一身に背負い、森高が初めてのMCに挑む。願わくば、送り手側も受け手側も、過度なプレッシャーをかけることなく、音楽番組をここから育てるという観点から、長い目で彼女のチャレンジを捉えてほしい。その時、“救いの女神”は真価を発揮することだろう。
(文:田井裕規)
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