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門脇麦『私にもある ポジティブさと相反するナイーブさ』
何事も動いてみた方がうまくいく
門脇 最初に台本を読んだときは、あまり海空ちゃんのことが好きじゃなかったんです。図々しくて、こんな子が近くにいたらやだなって。でもどこか憎めない屈託のなさというのか、愛嬌みたいな魅力もあって。例えば知り合ったばかりでも、自分がいいな! って思った人に、シュシュシュシュッと近づいていく思い切りのよさと図々しさ、そのサジ加減が非常に難しいと思いました。普段は現場で生まれた感情で演じることが多いのですが、今回は青森から上京してきた女の子の成長物語でもあるので、どれくらいのテンションで演じるか、シーンごとに細かく永田(琴)監督と話し合って、プランを立てて動きました。
――たしかに少々厚かましいところもある海空ちゃんですが、不思議と観客に嫌悪感を抱かせません。どのようなアプローチで、いつの間にか応援したくなるような、かわいいキャラクターに?
門脇私はすごく不器用なので、体の隅々にまで役の感覚が掴めていないと、気持ち悪くて動きづらくて。最初に体がある程度、この筋肉の、この力の入れ具合いみたいな感じを掴むまでは、頭で考えて動いてます。海空ちゃんだったら、人との距離が近いから、どれくらい近づいて話すのかな? という物理的な距離感や、声の高さはどれくらいだろう? って実際に動いたり声に出してみるんです。ひとつずつわからないことを調節していって、役の感覚を身体になじませていく感じです。脳がしっくりきたら、自然と身体が動くようになるので、撮影現場ではその状態でいられたらなといつも思っています。何事も動いてみた方がうまくいくみたいです。悩み事をしても、部屋の隅で悶々と考えるより、川べりを散歩したり、歩き回って考える方がしっくりくるんですよ(笑)。
――バレエで鍛えた身体能力を活かした、独自の役作り法ですね。津軽弁も大事なディテールに?
門脇津軽弁の独特のニュアンスが、そのまま海空ちゃんの印象というくらい、津軽弁が拠り所になりました。21年間、青森で育ってきた女の子に説得力を持たせるためには、徹底的に津軽弁を叩き込んでおく必要がありました。音楽を覚えるように、まるごとフレーズで覚えていくところから始めて、1ヶ月練習しました。覚えた音だけじゃなく、自分の言葉に落とし込んでいく作業が大事だったので、時間がかかって苦労しましたが、確実に津軽弁が助けになったと思います。普段の私が人と話しやすい距離よりも2、3歩近づいて話す海空ちゃんが、津軽弁を話すことで、押しつけがましくなく、スムースに喋れる感覚もありました。
いまは違いを気にする必要もない
門脇忙しく時間がないなかでも、毎朝みんなで集まる時間を作るということがとても素敵だと思いました。実際にヨガをする時間は5分くらいなので、体に変化が訪れるまではいかないけれど、「おはようございます」とみんなで挨拶するだけでも気持ちがよかったです。撮影の途中で“あ、海空ちゃんって永田監督なんだな!”って思ってからは、遠くから監督を観察して、役に反映させてもらいました。監督と撮影の板倉陽子さん、ふたりの頼もしい女性で成り立っているような、ポジティブな女子パワーの高い撮影現場でしたね。
――もうひとりの主人公KUMIを演じた道端ジェシカさん、ふたりを温かく見守る梅之助役の村上淳さんの印象は?
門脇トップモデルのジェシカさんと、まさか映画で共演するなんて思ってもみなかったので、新鮮でおもしろかったです。カメラが回っていないところでも、KUMIさんを重ねて見ていました。村上さんも、ずっと梅ちゃんの役割でいてくださって、現場にいてくださるとなんだかホッとする、お父さんのような存在でした(笑)。村上さん、びっくりするほど体が柔らかくて! ヨガは今回が初めてだと思うのですが、本当にポテンシャルの高い方だなって感動しました。
――完成作をどうご覧になりましたか?
門脇人間関係の構築の仕方は少し違うけれど、海空ちゃんの、細かいことを気にせずガンガン突き進んでいくポジティブさ、相反するナイーブさが私にもあるなって気づきました。それからは少し、家族といるときのリラックスモードを意識して演じてみたんです。自分の無邪気な面が映像になり、作品として客観的に観るのは初めてだったので、すごく新鮮に映りました。“明るい役、やりたい!”って(笑)。
――デビューから3年。この先も舞台『K.テンペスト』『狂人なおもて往生をとぐ』、来期のNHK連続テレビ小説『まれ』など、話題作への出演が続きますが、いま映画という場所はどんなところですか?
門脇私の経験が浅いからかもしれませんが、テレビ、映画、舞台の差があまりわかっていないんです。いまはその違いを気にする必要もないんじゃないかとも思っています。それよりもジャンルみたいなものをどんどん飛び越えていける人間でありたいです。やってみたい役もありますが、敢えて決め込まず、柔軟に対応できる姿勢でいたいと思います。自分のなかで視野を狭めると、思いも寄らぬものがポンと来たときに弾いてしまいそうなので。このタイミングで海空ちゃんという役に出会えるなんて、思いも寄らなかったことですし。そういう素晴らしい出会いが重なっていくことを楽しみにしたいと思っています。うん、軽やかにいきたいなと思います。
――“軽やか”。演技の幅をぐいぐいと広げている麦さんに、ぴったりの言葉ですね!
門脇『愛の渦』まではオーディションを受けてお仕事をしていたので、ある意味、モチベーションはオーディションだったんです。(オーディションを受けずに)選んでもらえるようになってからは、不安もありましたが、現場で必死に戦っているスタッフ、キャストの姿を見て、私もがんばらなきゃ! って思うようになりました。真剣に戦う人たちと一緒に作品を作っていく楽しさが、どんなにつらいことがあっても女優を辞められない理由になっています。これからもどんどんがんばります(笑)。
文:石村加奈/撮り下ろし写真:鈴木一なり
スタイリスト:檜垣健太郎(little friends)/ヘアメイク:星野加奈子
シャンティ デイズ 365日、幸せな呼吸
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