(更新:)
ORICON NEWS
野村周平 『特別なことはなくて……それがいい』
やってみたかったことを形にした作品
野村僕も高校時代を思い出したんですけど、今回は役が自分の経験に左右されないというか、自分の経験が役立たなかったんですよね。どちらかというと、こんな青春を過ごせて(演じた)チューヤはいいなぁと。
──というのは?
野村高校1年まで実家のある神戸の高校に通っていたんです。その後は、芸能活動のために東京に引っ越してきたので、そんなに楽しい高校生活ではなかったんですよね。でも、中学のときは楽しかったし、高校1年のときは神戸で恋愛もしたし、友だちとケンカもしたし……東京に行くことが決まって送別会をしてもらったりして、それはいい思い出です。
──そうだったんですね。そのぶん、今回は映画のなかであの3人と高校の青春を疑似体験できたんじゃないですか?
野村ですね。しかも、僕のやってみたかったことを形にしたような作品でした。
──どんなことをやってみたかったんですか?
野村ケンカをした後にわかり合ったり、元カノをめぐってもめたりしてみたいなぁって(笑)。僕の元カノが映画のようにああいう職業に就いているわけじゃないですけど(笑)。
──(笑)映画の冒頭では、昔の彼女の写真を燃やして過去にしようとするシーンもありますが、それはどんなふうに感じましたか?
野村僕はわりと過去は過去って割り切るタイプなんです。もちろん、最初は落ち込むけれど、もう会うことはないって思ったら、思い切って(思い出は)捨ててしまいます。
──男性はなかなか思い出を捨てられない生き物だとよくいいますが、野村さんは思いきりがいいんですね。そして、今回は初主演です。オファーがきたときの感想も聞かせてください。
野村嬉しかったですね。吉田(康弘)監督とは『江ノ島プリズム』に続いてなんですが、またこうして呼んでもらえたのは嬉しかった。それも主役で。だからこそ、しっかりとその期待に応えたい、また次も呼んでもらえるようにがんばりたいと思いました。
──吉田監督は30代と若手の監督ですが、現場ではどんな監督でしたか?
野村僕らの話をしっかりと聞いてくれて、ダメなところはダメとはっきりいってくれる、兄貴的存在の監督です。監督と話しているなかで印象的だったのが「どの映画もどの作品も青春映画だ」という言葉。なるほどなぁって思いました。
いい意味で普通だから目立っている
野村楽しかったですよ。男だけの世界を邪魔されていなくて(笑)。ストーリー上、たまに恋愛が入ってくるシーンもあるけれど、ほとんどが男だけのシーン。バカな話も下ネタ話もしたし、ほんとに楽しかったです。最初に脚本を読んだときは、青春ものだけれど、決して特別なことは描いていなくて、それがいいなぁと。4人の男友だちの仲の良さをどうやって出していったらこの感じになるんだろう……とか考えたりして。事前に会っておかないとそれは出せないと思ったので、リハーサルをたくさんしましょうって話しました。時間は限られているけれど、そのなかで時間をかけて絆を作っていこうと。撮影前に仲良くなっていたので、現場に入ってからも自然と4人のいい関係が出せたと思います。
──本当に“いい仲間”でしたよね。野村さんが演じたチューヤについてはどうですか? どんな青年で、どう演じようと思ったんでしょう?
野村チューヤは個性がないんです。そんな個性がない男がなんで4人の真ん中にいるのか……。それは、ほかの3人の個性が豊かだからなんですよね。個性ある3人のなかだとチューヤはいい意味で普通。普通だから目立っているという(笑)。なので、チューヤが主役ではあるけれど、僕ひとりの力で中心にいるわけじゃなくて。実際、チューヤはキャラクター作りは必要のない役でしたから。ただリアリティのあるセリフをいえばいいだけだった。僕よりも3人のキャラ設定の方が大変だったはずです。
──誰が強烈でしたか?
野村町田役のサーターアンダギーの松岡(卓也)くんかな。
──その理由は?
野村常にうるさかったんですよね(笑)。空気の読めない感じが町田っぽかったというか(笑)。松岡くんが4人のなかでは一番年上なんですけど、どんなに朝早くてもテンションが高いんです。僕は朝が苦手で……。しかも、この映画は8日間で撮っているんです。
──えっ! たったの8日で全部撮ったんですか?
野村そうなんです(笑)。短い期間だったからこそ、良い表情も出たと思うんですよね。36時間起きてるとかざらにありましたけど、現場にピリピリした感じはなかったんです。4人の楽しさがちゃんと映像に反映されているし。あとは、田舎の男の子たちなので服装とか髪形、セリフもダサいかもしれないけれど、それがちゃんと似合っているというのが格好いいと思う。そういうところを気にして作っていきました。
──完成した映画を観て何を思いましたか?
野村やっぱり、ラストシーンは感動しました。自分でいうのもなんですけど、すごくいい映画になったなと思っていて。ふだん自分の出ている作品は自分の演技のダメなところをチェックしたりしてしまうので、客観視できなくて。純粋によかった、おもしろかったとはなかなか思えないんです。でも、今回はいち観客としてこの作品を楽しめました。
──それは新しい変化でしたね。観客もチューヤたちを通じて、見送られる人と見送る人、出会いと別れ、そんな切なさと温かさを感じるはず。野村さんは高校1年のときに見送られて東京に出てきたわけですが、この世界で生きていきたいと思ったのはどういうきっかけで?
野村ほかにやりたいこともなかった時期に、事務所のオーディションに(家族が)応募して受かったのがきっかけなんです。それが良かったのかどうかはまだわからないけれど、東京という街を知ることができて、東京で友だちができて、それは良かったと思っています。ただ、俳優が自分にとっての天職だとは思っていなくて。でも、演じていくなかで同じ役というのはないので、自分とは違う人生をいくつも送ることができる、それが役者の醍醐味ですね。
──では、20歳を迎えたいま現在、今後どう生きていきたいのか目標を聞かせてください。
野村天職だと思ってはいないといいましたけど、いまは役者としていろんな役をやれるようになりたいと思っています。経験あるのみ! なので、とにかくいろいろな役をやって経験を積み重ねたいです。
(文:新谷里映/撮り下ろし写真:片山よしお)
クジラのいた夏
関連リンク
・『クジラのいた夏』公式サイト