昨年6月5日に公開され、賛否両論を巻き起こし興行収入38億円の大ヒットを記録した映画『告白』。見る人によって鑑賞後に抱く感情の振れ幅が激しいことで話題騒然となったことからも、同作が投げかけるものの大きさを感じずにはいられない。中島哲也監督は「ご覧になった方からいろいろな意見をもらいました。肯定否定含めて多種多様な意見が出たのは幸せなことだと思いました。そういう映画になってほしいと思っていました」と冷静に受け止める。

【写真】その他の写真を見る

　原作は『2009年本屋大賞』に輝いた小説家・湊かなえの同名のデビュー作。とある中学校の1年B組、13歳の生徒たち37人の前で、担任教師の森口悠子が語り出す。「私の娘が死にました。警察は事故死と判断しましたが、娘は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」。物語はこの『告白』から始まり、彼女の衝撃的な復讐劇が登場人物たちの“告白”によって語られる。

　この小説を映画化しようと思ったのは、「小説を読んで、登場人物がすごく興味深かった。その人物が魅力的だと、もっとその人のことを知りたいと思う。映画を撮ることで、もっと彼らに近づきたいと思った」と中島監督。

　主人公の森口悠子は女優・松たか子が演じた。肉体を得た森口先生は、中島監督の前に立ち、話し、歩きだした。「撮影していくうちに小説を読んだ時、脚本を書いていた時には気づかなかったいろいろな発見がありました。と、同時にさらに謎も深まった。実は、映画を撮り終えた今でも、登場人物たちがどういう人間なのか、よくわかっていません」という。

　登場人物たちはすごい勢いで「あの時私はこうだった、どうだった」と“告白”していく。「原作小説を読んでいても感じたんですが、どうもここに登場する人たちは正直に自分のことを語っていない。言葉というものがものすごく軽いものに思えたんですね。皆、自分に都合のいいことしか話さないし、本人すら気づかない嘘もある。たくさんしゃべっているけど、誰の、どの言葉も重要ではないと思った」。登場人物たちが発する、それも膨大な言葉の真偽を推理しながら脚本化したが、「はっきりと結論づけて撮ったところが一ヶ所もない」と明かす。すべての判断を観客に委ねた極限のエンターテインメント。

　「この映画について話し合う機会があった時に、人によって感じていることがそれぞれ違うと気づく。それで相手の人間性みたいなものがちょっと見えてくるというか、その人が自分とは違う感じ方をする人だということがわかるというか…。普段、自分がどんな観点から世の中を見つめ、どう感じているか。この映画を見て感じたもの、それこそが今の自分の精神的な場所を顕にしている、そんな気がします」。

　中島監督にとって、映画づくりは「自分より若い世代の人とのコミュニケーション」と言い切る。これまでに監督した作品『下妻物語』『嫌われ松子の一生』『パコと魔法の絵本』にも一貫する姿勢だ。「10代、20代の子たちが何を考えているのか興味があるし、彼らに面白いと思ってもらえる、いろいろ感じさせる映画が作れれば、自分にとっても幸せなことだと思う。だからといって、若者に媚びるような映画作りはしない。媚びてもバレますから。子供たちはすごく敏感に感じ取る。だから面白い」。

　『告白』では平均して13歳の子役37人と、“1年B組”というクラスを作っていく過程がことさら「面白かった」という。「撮影に入る前に子供たち一人一人と話し合いました。自分だったらどう思うか、クラスの中でどういう行動をとるか、真剣に考えてもらい、その意見を反映させました。彼らのリアルを映画に中に取り入れたかったんです」。

　中学校の教師と生徒の物語であるにも関わらず、劇場公開時は衝撃のストーリー、過激な描写などによりR-15指定となった『告白』。15歳になったらぜひDVDかBlu-rayで観て欲しい1本だ。

　『告白』DVD特別価格版（税込：2940円）、DVD完全版（税込：4935円）＆Blu-ray完全版（税込：5,985円）は1月28日（金）東宝より発売。DVDレンタル中。

【動画】新作続々！映画予告編⇒


◆映画情報　最新映画ニュース一覧｜インタビュー バックナンバー