ドラマ&映画 カテゴリ
ORICON NEWS

工藤夕貴、楽しむことへの飽くなき追求「まさか空手にハマるとは」



 日本の俳優が海外へ進出する先駆けとなり、名実ともに国際派女優として第一線で活躍する女優・工藤夕貴。彼女が世界へ飛び出す大きなステップとなったジム・ジャームッシュ監督の『ミステリー・トレイン』(1989年)から20年ぶりに同監督と組んだ新作映画『リミッツ・オブ・コントロール』が、19日より公開される。


工藤夕貴(C)ORICON DD inc. 

工藤夕貴(C)ORICON DD inc. 

写真ページを見る

【写真】その他の写真を見る


 20年という歳月は、世の栄枯盛衰を何度も見ることができるほどの膨大な時間だ。工藤はこの20年間に、米国・ロサンゼルスに活動拠点を移し、海外作品で着実にステップアップ。映画『ヒマラヤ杉に降る雪』(1999年)ではヒロイン役を勝ち取り、国際派女優として確固たる地位を築いた。プライベートでは結婚・離婚を経験し、数年前に帰国して静岡県の富士山麓に住まいを移し、農業を始めたり、カフェをオープンさせたり。で、最近どうなの?と今の心境を聞くと、工藤は「すごく楽しいですよ。今、最高」と声を弾ませた。


◆ようやく理想の自分に近づいた生き方ができるようになってよかった


(C)ORICON DD inc.
——出演した映画の公開が間近ですが、近況は?


【工藤】 今年の年初めから空手にめちゃめちゃハマっていて。この年齢でまさかハマるとは、自分でも思ってもみなかった。たまたま縁があってやってみたら、時に、蹴られたりして痛い思いはするけど、それが悔しいから頑張るみたいなところが意外と自分に合っていたことに気づいたんです。


——えっ!? 空手ですか!?


【工藤】 練習したら練習したなりの結果が出るというのがすごく面白いんですよね。自分的には若い時より今のほうが元気。20歳くらいの時に空手をやるなんて考えられなかったですけど、そんな若い頃の自分は何だったんだろうと思うくらい、今、人生を楽しんでいるし、一つとして無駄なことはしていないと思いますね。


——それは農業とか、カフェの経営とかも含めて?


【工藤】 そう、新しいことにも挑戦しているし、もちろん女優もやっているし、最近また歌も始めているし、やれることは全部やれているんですね。しかも、この自由を誰にも邪魔されないポジションにいて、最高じゃないですか!! 結婚する前は周りからガチガチに縛られて、やりたいこともできなかったけど、結婚して、失敗して、外国に飛び出して、1人でやってみて、思い通りにいかなったこともあって。そうして今、失敗しないように生きられる強さが身について、その上で楽しむことを飽くことなく追求できるエネルギーがまだ自分の中にあって、すごく楽しいですよ。今、最高!


——足が地に着いた余裕すら感じます。


【工藤】 20年ぶりにジム監督と仕事ができるのも年齢を重ねてきたからこそ。自分が培ってきたもので勝負できるって、すごく楽しい。アメリカで勝負かけていた時は<このオーディションに受からなかったらどうしよう>というプレッシャーでいっぱいだったけど、今は受かんなくても<自分の好きなことできるからいいや>と思える心の余裕があって。自分なりに満足できるくらいやってきているので、ヘンな意味での未練もないし、ヘンな意味での決別感もないし、自然体でいられるようになっているのがいいと思いますね。


——とはいえ、海外作品にもコンスタントに出演なさっていますよね。今回の『リミッツ・オブ・コントロール』も日本代表というか、アジアの女優代表のような存在感。


【工藤】 すごくいい仕事の仕方ができているんじゃないかな。人生を楽しむ生活の糧が役者という仕事でもあり、それが自分の生きがいでもあり、今は気負うことなく、純粋に作品を楽しめる自分がいる。もともと私はすごく負けず嫌いで、それでものすごく苦しんで、自ら追い込んでいったところがあったし、そんな自分にすごく疲れていたし、嫌でもあったので、ようやく理想の自分に近づいた生き方ができるようになってよかったな、と思っているんですよね。


◆水のようにサラサラと流れていって、いろんな役に染まってみたい


映画『リミッツ・オブ・コントロール』工藤の出演シーン(C)2009 PointBlank Films Inc.
——20年ぶりにジム監督の作品に出演した感想は?


【工藤】 20年ぶりというのは、短かったようで長かったような・・・、複雑な心境でしたね。これまでもジム監督が来日した時は会っていたり。20年ぶりに会った感覚はないんですけど。『ミステリー・トレイン』では日本語で演じたのが、今作はすべて英語だったので、不思議な感じはしました。ただ、プレッシャーはあったんですよね。昔から知っているから、自分のスキル全てが見透かされてしまう。その上で、彼が私をどういう風に見るのか、すごく不安で、ものすごく緊張しました。


——しかも、役柄が『コードネーム・分子(モレキュール)』って・・・。


【工藤】 なかなか難しい役だったんですよね。思想とか音楽とか映画の話ならともかく、<分子>という感情移入しにくい題材について淡々と、でも楽しそうに話すってなかなか、ねぇ(笑)。ジムからは、買い物に行って<こんな靴を見つけちゃった>みたいな話を女友達としているつもりで<分子>について話して欲しいとリクエストされて、えー??みたいな。日本語でも難しいのに、英語でセリフを言わなくちゃならなくて、それも台本2ページ分くらいのシーンで私がひたすら<分子>についてしゃべっているという・・・。


——いかに観客を飽きさせないで<分子>の話をするかが、役者の腕の見せ所だったわけですね。


【工藤】 だから、面白かったんですけどね。ジム監督が今作で表現したかったのは、彼自身が持ち続けている思想、科学、映画、音楽などについて語りたかったことを登場人物に託して語らせ、独特の世界観を表現していくという彼の新たな試みでもあって。それが私は<分子>だった(笑)。何度見ても、見るたびに発見がある作品。相変わらずやることはお洒落だし、音楽もすごくいいし、私はすごく好きですね。決まった型にこだわらないジムの自由さ、自由な表現者としての裁量というのがこの作品の中には散らばっているような気がします。


——今後、演じてみたい役などはありますか?


【工藤】 やりたい役はいっぱいあります。作品や役の大小ではなく、面白いか面白くないかが重要な問題になってきた。それは『SAYURI』(2005年アメリカ映画/スティーヴン・スピルバーグ製作総指揮、ロブ・マーシャル監督、チャン・ツィイー主演によるゲイシャ・ムービー)が終わったあたりから感じ始めて、とにかく今はあらゆる役に、常に違う役に挑戦したいという大きな欲求がありますね。コメディもアクションもやりたいし、<えー!こんな役もやるんだ>という意外な役にも挑戦してみたい。型にはまりたくないというか、水のようにサラサラと流れていって、いろんな役に染まってみたい。新しい自分を表現していく作業が非常に面白いから、役者ってやめられないんだなって思うんです。


工藤夕貴くどう・ゆうき

1971年1月17日東京生まれ。長年に渡り日本で知名度の高い女優、歌手としても認められており、アルバムも多数発売している。相米慎二の『台風クラブ』(85年)で初めて大役を務め、今井正監督の『戦争と青春』(91年)などで若手実力派女優として高い評価を受ける。その後、渡米して語学力に磨きをかけカヨ・マタノ・ハッタ監督の『ピクチャーブライド』(94年)、クレイグ・ラヒフ監督の『ヘヴンズ・バーニング』(97年)ではラッセル・クロウと共演、スコット・ヒックス監督の『ヒマラヤ杉に降る雪』(99年)ではヒロイン役を勝ち取った。アカデミー賞3冠に輝いたロブ・マーシャル監督の『SAYURI』(2005年)、ブレット・ラトナー監督の『ラッシュアワー3』(07年)ではジャッキー・チェンやクリス・タッカーと共演をしている。ジム・ジャームッシュ作品には『ミステリー・トレイン』(89年)に出演し、この作品の演技が評価され、インディペンデント・スピリット・アワード主演女優賞にノミネートされた。そのほか中田秀夫監督の『L change the WorLd』(2008年)など国内外の作品にコンスタントに出演。
『リミッツ・オブ・コントロール』

(C)2009 PointBlank Films Inc.

【ストーリー】
過去に違法な仕事をしていた一匹狼をめぐる物語。ジム・ジャームッシュ監督の様々な記憶や体験がつながって生まれたオリジナルストーリーで、名もなき孤独な男がある任務のため様々な街を巡り、さすらう。過去、目的、計画・・・全ては謎に包まれたまま、ただ男は任務の遂行だけを目指す。ありのままの現実と、夢の中を彷徨うかの様な非現実が交錯する世界を幻想的に描く。

脚本/監督:ジム・ジャームッシュ
出演:イザック・ド・バンコレ アレックス・デスカス ジャン=フランソワ・ステヴナン ルイス・トサル パス・デ・ラ・ウエルタ ティルダ・スウィントン 工藤夕貴 ジョン・ハート ガエル・ガルシア・ベルナル ヒアム・アッバス ビル・マーレイ

2009年/スペイン・アメリカ・日本 配給:ピックス

9月19日よりシネマライズ、シネカノン有楽町2丁目、新宿バルト9、シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー

公式サイト



関連写真

  • 工藤夕貴(C)ORICON DD inc. 
  • 工藤夕貴(C)ORICON DD inc. 
  • 映画『リミッツ・オブ・コントロール』工藤の出演シーン(C) 2008 PointBlank Films Inc. All Rights Reserved. 
  • (C) 2008 PointBlank Films Inc. All Rights Reserved. 

オリコントピックス

あなたにおすすめの記事

メニューを閉じる

 を検索