脚本家として映画『GO』『ピンポン』『木更津キャッツアイ 日本シリーズ』『舞妓Haaaan!!!』等を手がけ、2005年の初監督作品『真夜中の弥次さん喜多さん』も大きな話題となった人気クリエイター・宮藤官九郎。今年2月にはオリジナル脚本で監督第2作『少年メリケンサック』が公開され、さらに次の作品、そのまた次の作品へと期待はふくらむばかり。そのオリジナリティあふれる作風の“秘訣”やいかに!?
◆スーッと思いついた話は面白い”というジンクス
映画『少年メリケンサック』で宮藤監督自身のこだわりぬいたテーマは<パンク>。
【宮藤】「監督1作目の『真夜中の弥次さん喜多さん』はしりあがり寿さんの原作があったので、次はオリジナル脚本で撮りたいと思っていたんですけど。いくつか企画を出して、でも、なかなか先に進まなくて。いろいろ考えて、だんだん、しんどくなってきたところで、スーッと頭に浮かんだのがパンクバンドの再結成の話だった。プロデューサーに話してみたら、あっさりOKが出て。後で聞いたら、パンクのこと、よく知らなかったようなんですが」
パンクをよく知っているプロデューサーなら、一般受けしないから“やめませんか”と言いそうなテーマ。でも、物語としては自信があった?
【宮藤】「スーッと思いついた話は面白い”という、自分の中のジンクスというか、経験上の自信があるというか。今、考えていることがしんどすぎて、違うこと考えようって思ったときにフッと出てくるんですよね」
フッと沸いたアイディアはいつもどうしているのですか?
【宮藤】「別に・・・。思いつきは面白いけど、作品にはならないなと思ったらメモもしない。でも、どこか頭の中に残っていることもあって、何年か経ってから別のこと考えている時に思い出して、作品に生きてくることはありますね。思いついたアイディアを誰にどのタイミングで話すかというのも重要で。早すぎると面白さが伝わらなかったり、自分の中で寝かせ過ぎてもダメだったり」
『少年メリケンサック』のケースは?
【宮藤】「フッと沸いた勢いでシナリオを書いて、出演して欲しいなと思った役者さんに読んでもらって。そうしたら、まず、宮崎あおいちゃんの出演が決まって、ほかのキャストもどんどん決まって。役者が出たいと思ってくれるということは、自分が思っている以上にこのシナリオに面白いところがあると、思ってもいいのかなって。たぶんこの時はすごく調子が良かったんでしょうね」
◆本当に行き当たりばったり、計算していない。調子が悪いと話がつながりません(笑)
| 「ドラマの企画でずっと前からやりたいのがあるんですけど、今年はこっちやりましょうって、毎年毎年スルーされて全然実現しない。ボツになったほうがまだいいんじゃないか、そんな企画もね、あるんですよ」(宮藤) | |
どこか、人ごとですね。
【宮藤】「ここ何年か、自分の書いたシナリオをすごく面白いと思ったことがなくて・・・。いつから思わなくなったのか、わかんないんですけど。<あれ? これでいいのかな?>と自信がない作品のほうが褒められるし(笑)。逆に自分で<これは面白い!>と思った作品はスルーされたり・・・。いろいろ、ズレてきている(笑)」
「調子がいい」とはどういうことですか?
【宮藤】「テレビドラマの脚本だと、初回分から書き始めて、2話、3話と書いていくのですが、僕の場合、最終回のことなんか何も考えずに書いていくんです。なのに、最終回で第2話のエピソードが効いてうまくまとまることとか、あるんですよね。偶然なんですけど・・・」
偶然なんですか!?
【宮藤】「本当に行き当たりばったり、計算していないですね。あのエピソードが、最終回のコレにつながって・・・とか、計算してシナリオを書くのは嫌なんです。というか、僕は下手なので、明らかに<計算しています>という作品になってしまう。それが、とても恥ずかしいので、しません。シナリオを書いているのは自分なんだけど、そんな自分が「あの話は、ここにつながるんだ! へーっ」と思っている時のほうが、うまいこといきますよね。そういう時は、調子がいいんでしょうね。調子が悪いと話がつながりませんから・・・(笑)」
宮崎あおいさんは、多忙なスケジュールにも拘らず、「宮藤作品であるなら」と、出演を快諾しただけでなく、初顔合わせにして見事なコメディエンヌぶりを発揮していますが。
【宮藤】「あおいちゃんに現場で『どうですか?』って聞いたら、『毎日、すごく楽しいです』と言ってくれたので、『あっ、そうなんだ。じゃあ、何言っても大丈夫かな』と、演出にも遠慮がなくなっていきました(笑)。あおいちゃんも僕との人間関係がどうこうではなく、あくまでも作品を介していい関係を築いていくタイプのような気がして、やりやすかったですね」
印象に残っているシーンはありますか?
【宮藤】「たくさんありすぎて、一つを選ぶのは難しいのですが・・・。例えば、(宮崎演じる)かんなが、同棲している恋人・マサル(勝地涼)のライブを見に行ったんだけど、すごくつまんなそうにしていて、耐え切れず走って逃げ出すシーンを改めて見たら、僕が演出したとは思えないほど、良いシーンだなと思いました(笑)。自分の思い通りのシーンが撮れているんだけど、何でそうなったのか、全く覚えていない。そういうシーンが一杯詰まっている映画なんですよ。やっぱり、調子よかったんですね。僕も」
今後のプランは?
【宮藤】「『少年メリケンサック』は<パンク>がテーマでしたけど、<音楽>といか、<ロック>に対する自分なりの考え方というか、愛情表現は一区切りついたような気がします。いままでとは全然違う作品を撮っても、自分の中の<ロック>な部分は透けて出てきちゃうと思うので、次は敢えて、<ロック>とか<パンク>ではない作品を撮ってみたいと思っていますね」
| 宮藤官九郎 くどう・かんくろう 1970年生まれ。91年より松尾スズキ主宰の『大人計画』に参加。俳優として活躍するとともに、『ウーマンリブ』シリーズでは、作・演出を手がける。脚本家としては、TV『池袋ウエストゲートパーク』(2000年)、『木更津キャッツアイ』(02年)、『タイガー&ドラゴン』(05)等で知名度を上げる。その後も、『未来講師をめぐる』など話題作の脚本を多数担当。05年には映画『真夜中の弥次さん喜多さん』で監督デビューを果たす。また、バラエティ番組の構成や、パンクバンド・グループ魂のギタリスト“暴動”としての音楽活動などでも唯一無二の存在感を放っている。 |
| 『少年メリケンサック』 レコード会社OL・かんなが、動画サイトで見つけた<少年メリケンサック>のライブ映像。そこには凶悪な絶叫パフォーマンスのイケメンが!! 契約を取るため会いに向うと、そこにはなぜか酔い潰れた50歳すぎのオッサン!? かんなが見つけた映像はなんと25年前の物だったのだ・・・。ところが、<少年メリケンサック>の人気はネット上で大爆発! 全国のライブツアーまで決まってしまった!!! 果たして、かんなとオッサンになった<少年メリケンサック>の命運は!? 監督・脚本:宮藤官九郎 出演:宮崎あおい 佐藤浩市 木村祐一 勝地涼 田口トモロヲ 三宅弘城 ピエール瀧 峯田和伸(銀杏BOYZ) ユースケ・サンタマリア 公式サイト |
| 【リリース情報】 ●デラックス・エディション 【DVD2枚組】 品番:VPBT-13356 価格:6,090円(税込) ※特典ディスクにはメイキング映像や出演者のインタビューなどを収録 ●スタンダード・エディション【DVD】 品番:VPBT-13357 価格:3,990円(税込) ●ブルーレイ・ディスク 品番:VPXT-71075 価格:5,040円(税込) 以上、発売元・販売元:バップ |
2009/08/05