スティーブン・スピルバーグから直々の指名を受け、『イーグル・アイ』の監督を務めたD・J・カルーソ
テーマは最先端テクノロジーの脅威。スティーブン・スピルバーグが10年前から構想を練り、製作総指揮を務めるアクション・サスペンス大作『イーグル・アイ』(10月18日公開)。その監督としてスピルバーグから直々に指名されたのが、映画やテレビ番組の監督、製作総指揮者として活躍するD・J・カルーソだ。「これほどの大作は初めて」とするカルーソだが、激しく緊張感あふれるアクションシーンをふんだんに盛り込み、個性豊かなキャラクターのバランスを取りつつ、複雑なストーリーを見事にひとつにまとめあげた。
■スピルバーグからの直々のご指名に「怖い」
「最初、怖いなという気持ちとともに、自分を選んでくれたことを誇らしく思いました。私のこれまでの作品を観て、何かぴったりくるものがあったのでしょう。スピルバーグはいつも『これは君のDNAにある作品だから』という表現をしていました。脚本通りにただ撮るのではなく、私のスタイルをこの映画にもたらすことを期待してくれたのだと思います」
これまでにも数々のサスペンス作品でヒットを生み出してきているカルーソ監督だが、今回は大掛かりなアクションシーンの演出も手がける。そのアクションへのこだわりは、過去のスピルバーグ作品からの影響があった。
「観客に映画の登場人物と一緒に、アクションシーンを経験してもらおうと心がけていました。スピルバーグは『プライベート・ライアン』でものすごく高いハードルを設定してしまった気がします。オープニングで、トム・ハンクスが船を下りた瞬間から映画のなかに巻き込まれてしまうあの感覚です。私にとって、登場人物と同時に映画の世界を本当に体感した、初めての瞬間でした。それを観てから、アクションではいつもその瞬間を求めて撮っています」
そして、その体感を求めるための撮影におけるポリシーを語る。
「現在の映画はCGが多く、観客が慣れすぎています。観客はそれを見分けることができ、CGとわかることどこかで引いてしまう、静観してしまう部分があると思います。そうしたなか、いま映画界では、実写で物理的に撮るという方向に戻ってきています。私は、観客が体感できるように、できる限りリアルに実写で撮ることをポリシーにしています」
■ラブストーリーを描かなかったことへの満足感
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「『ディスタービア』の時は“やりたい盛り”の10代の男の役で、彼自身も生意気盛りの才能あふれるティーンエイジャーという感じでしたね(笑)。シャイアは個人的には今、大学に行くべきか、このまま俳優を続けるべきかとか、この先の人生を悩んでいる時期でもあります。俳優としては、どんなシーンでも表情などの表現をすごくリアルに演じることができますし、仕事熱心で、夜中12時に撮影が終わって翌朝7時集合と聞かされると『それはムリです』といいながら6時半に来ています。仕事のパートナーとして最高です。キャリア的には『イーグル・アイ』の成功が、彼のムービースターとしての確固たる位置を築いた気がします。この先、スピルバーグの名前がない作品でもしっかりとヒットを出すことができるでしょう」
一方、今作のヒロインは、ミシェル・モナハン演じる30代のシングルマザー。ミシェルに惚れ込んでいたカルーソは、シャイアとのケミストリーを楽しみながら、よくありがちなベタなラブストーリーは描かず、リアリティのある姿を映し出した。
「『キスキス、バンバン』(2005年)でミシェルを観て以来、いつか仕事をしたいと思っていましたが、今回のシャイアとのコンビネーションはまさにぴったりでした。ラブストーリーにしなかったのは、80年代後半〜90年代始めの多くの映画のラブシーンに違和感を持っていたからです。『イーグル・アイ』での2人も、抱き合ってキスしてという状況ではありません。実はシャイアは、ミシェルに人間的に惹かれているという演出はしたのですが、大きな恋愛として描かなかったのは、監督としてすごく開放感を得られたことでした。映画のラストが濃厚なキスシーンで終わらなかったことに満足しています(笑)」
テレビ演出家として活躍後、ヴァル・キルマー主演『THE SALTON SEA』(2002年)で映画監督デビュー。ネオ・ノワール・スリラーの傑作として評価を得て、一躍人気監督の仲間入りを果す。その後、アンジェリーナ・ジョリーとイーサン・ホーク主演『テイキング・ライブズ』(2004年)、アル・パチーノとマシュー・マコノヒー主演『トゥー・フォー・ザ・マネー』(2005年)を監督。大ヒットした『ディスタービア』(2007年)では、今作『イーグル・アイ』(2008年)と同じくシャイア・ラブーフを主演に迎えている。
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2008/10/17