母親役に初挑戦する小西真奈美と緒方明監督(左)
“パンクな主婦”をテーマにする緒方明監督の新作で、透明感のある清楚なイメージが印象的な小西真奈美が母親役に初挑戦する。そんな映画『のんちゃんのり弁』(2009年公開予定)の撮影が7月末から1ヶ月間、舞台となる東京の下町をメインに行われ、このほどクランクアップした。今回が初のコンビとなった2人だが、撮影を通して緒方監督は小西を「女優魂をみせつけられました。ストロングスタイルのストイックな女優」と高評価。小西は、様々な演技の要素が入るハードルが高い作品としながら「30歳を過ぎたひとりの女性の必死に生きる様を描ければ」。その言葉からは作品への手ごたえを感じさせた。
■暑さのなかで自然な親子の姿に
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「初日が一番暑くて、子供たちは時間が経つに連れてとけていくような感じでした(笑)。だから逆に気合が入りました。このくらい暑いなかで、ずっとやっていくんだって」
そんな炎天下での待ち時間を含め、撮影が始まってからの約1ヶ月間、娘・のんちゃん役の佐々木りおとは自然に触れ合ってきたようだ。
「(りおちゃんは)かわいいですー(笑)。いつも一緒に遊んでいて、日に日に愛情がすごく沸いてくるんですよね。お母さん役だからとかじゃなくて、現場に来ると自然にお話したいし、遊びたいし、待ち時間はいつも何かしら新しい遊びを見つけています」
劇中の小西と佐々木の演じる親子関係は、子供が親に甘える感じよりは、心の中で通じ合っている雰囲気という。小西は「空き時間で一緒に遊んでいる空気感が、ふとしたときに劇中に出ていたりするのかな」と語る。
一方、緒方監督はそんな2人の関係について、もうひとつの側面からコメントする。
「子供は感情のコントロールがまだまだできません。いかに集中力をもたせるかですね。撮影では、こちらは子供だからといって容赦はしません。ちゃんと怒ります。それに対して小西さんがフォローするという流れが自然にできました」
■下町の主婦と小西真奈美のイメージのギャップ
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東京での長編映画の撮影は今回が初めてという緒方監督は、下町について「映画やテレビでしか見たことがなかった東京の一部分が新鮮でした。過去と未来のハザマにある町ということをつくづく感じています。僕は九州生まれの九州育ちですが、僕にとっての下町とは外国です。そういう感覚でとりました」。
そんな下町の主婦と小西のこれまでのイメージにはギャップがあるが、緒方監督は小西の女優としての振れ幅を期待して、そこを楽しんでいたようだ。
「小西さんは下町より青山といったイメージでしょう。そこが製作側の勝負で、おもしろいところ。映画は下町を舞台にしながら、人情ではなく、自由に生きるとは何なのかを、パンクに描いてみたい」(緒方監督)
一方、意外(?)にも小西は「演出のなかでチャキチャキするようにという意識はありましたが、私は基本的にサバサバしているタイプなので、下町ならではのケンカしているんだか仲がいいんだかという会話のシーンは、むしろリラックスして楽しみながらやらせてもらいました」。また、撮影の合間の地元住民との交流も楽しんだ様子。
「地元の方にすごく温かく迎えていただきました。空き時間にお話させていただくだけで、そこに住んでいる気持ちになれてお芝居にスムーズに入れました。皆さんと交流させていただいた雰囲気がスクリーンに表れていると思います」
■当初は迷いもあった母親役…ひとりの女性の生き様を
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「母親役をやるにあたって少し考えたんですけど、監督とお話させていただくなかで、いかに母親らしいかということよりは、30歳を過ぎたひとりの女性が子供を抱えながら自立しなければならない状態で、いかに生きていくかを演じられればと思いました」
そして、実際に演じてみて子供を持つ母親への印象は。
「思っていたよりも、ひとりの人間であり、ひとりの女性なんだなというところが強いですね。この作品では、母親らしさというよりは、必死に生きる子供を持つ女性の姿を描きます。生きるのって簡単じゃないし、めんどくさいことも奮闘することもいっぱいあるけど、そこに負けないだけのパワーをもっている女性です」
緒方監督は、小西の演じる母親のテーマを、下町のはじけた“パンクな主婦”とする。そして、喜怒哀楽とそのハザマの感情が入り乱れる作品になることに関して、冗談交じりに語る。
「アクション、コメディ、号泣、怒り、豪快に笑う、キス、……小西さんには何でもやってもらいました。自分でやらせながら女優って大変だなって思ってました(笑)。でも、小西さんは感情表現への要求に反応が早い。まったく演出の必要がない時もあり、いい役者に恵まれて幸せな現場でした」
子供のまま大人になったといわれる30代が、現代社会において自分のやりたいことを追求するとはどういうことなのか。緒方監督は、彼らの生き方を肯定したうえで、自由に生きることへのメッセージとエールを送る。
| 映画『のんちゃんのり弁』(2009年全国公開) 原作:入江喜和「のんちゃんのり弁」(講談社「モーニング」刊) 監督:緒方明(『独立少年合唱団』『いつか読書する日』)/脚本:鈴木卓爾、緒方明音楽:coba/撮影:笠松則通/照明:石田健司/美術:金勝浩一 出演:小西真奈美、岡田義徳、村上淳、岸部一徳、山口紗弥加/倍賞美津子ほか (C)2009「のんちゃんのり弁」製作委員会 |
2008/10/03