| 坂本龍一がエイベックスグループと始める新レーベル「commmons」 合言葉は「think global, act local」 昨年11月、坂本龍一をはじめとするアーティストが、エイベックスグループと共同で、新レーベルcommmons(コモンズ)を設立したことが発表された。「think global, act local」を合言葉に、新しい音楽コミュニティーとして、社会・文化貢献を目指し、アーティスト、音楽産業、ユーザー間のよりよい関係を作るための「共有地(commons)」となることを目的とする。その中心に音楽(music)が存在しつづけることを願い、3つの「m」を持つ「commmons」と命名された。運営に関しては、従来のメジャーとインディーといったカテゴリーに収まることなく、また、ビジネスとアートの一方にも偏らない、理想的なバランスを目指していくという。 commmonsが掲げる音楽ビジネスは、主に5つの視点を軸に成り立つ。そのひとつが“持続性(サステナビリティー)”。「発売直後のヒットを目的とするのではなく、ユーザーに長く愛される音楽を制作することが理想です。さらに小規模の売り上げしか期待出来ない内容でも、多様なカタログを持つことでロングテールビジネスを標榜することが可能です。参加条件として、スタジオワークを基本的には自分たちでできることと、世界に通用するアーティストであるという2つを掲げているので、クオリティの高さは重要です」。 |
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| 加えて、エコバックの使用やCDリサイクル、エコロジカルパッケージなど、環境面での持続的発展も念頭に起く。現在はグリーン電力証書を購入してグリーンレーベルとして出発したが、将来的には風力発電での運営も考えていきたいという。 また“パッケージ×ダウンロード”にも注力する。「ダウンロード時代になると言われますが、実際には、伸びてはいるけどそれほど順調ではない。事実、ダウンロードができない音源があるわけですし、心理としてもモノへの愛着はなくならないのではないのでしょうか。パッケージとダウンロードの両方の展開も考えていきますし、メールでの注文やインターネット販売も展開します」。 3つ目はアーティストが音楽に専念しやすい環境を作るとともに、新しい才能の発掘・育成を行う“クリエイティブ環境開発”である。「マイクのセッティングやフルオーケストラの録音方法などを熟知していないエンジニアも出てきました。昔は録音部などがあり、そこで学ぶことができましたが、今はそういう動きも縮小気味です。commmonsに関わるアーティストを講師としてワークショップを開催、それを収録して、何らかの形で販売するなり番組にするなり、音楽関係者の育成まではいかなくても、その辺を文化として残していきたい」。 4番目が“マーケットの創出”。従来の性別や年齢に縛られた音楽制作のほか、常に本物を求め、未来の可能性を指向する全ての人に向けた、新しいマーケットを開拓・創出していくことが重要になってくる。 そして音楽業界とのコラボレーションだけでなく、他業種やリスナーを巻き込むようなビジネス展開を模索する“ボーダーレスなコラボレーション”、これが5つめに掲げる視点である。「我々は共有地を目指しているので、参加の形は限定していません。アーティスト単位、レーベルや事務所単位で参加していただくことも可能です。また、関わっていくのは音楽業界だけではありません。エコロジーに関する視点は外せませんし、そういう面ではcommmonsという小さな枠組みだけの展開ではなく、他業種を絡めた展開も必要」。 こうしたビジネスプランのもと、11月29日には第1弾アーティストとしてコトリンゴ「こんにちは またあした」が発売された。彼女のほか、現時点の在籍メンバーは、坂本龍一を筆頭に、BOREDOMES、口ロロなど、個性的なアーティストばかり。「海外レーベルとライセンス契約をするための動きも始めています。坂本が気に入ったアーティストしかやらないのか? と聞かれますが、そんなことはありません。まずはcommmonsのコンセプトに賛同してくれるアーティストやレーベルを増やしていくことが先決です」。 現在のスタッフは総勢9名。彼らの肩書きはA&Rではなく、A&Dというもの。Artist & Developmentとしての自覚を持ち、日々発展や開発に励んでいくことを意味とする。「現時点では理想として提唱している部分もありますが、特別なことをしようとしているのではありません。まずは音楽を受け入れてもらい、環境面についても、出来ることから着実に実践し、徐々に大きな組織にしていくつもりです」と話す中城氏の言葉からは、未曾有のプロジェクトに向けて一歩一歩挑んでいく姿勢が感じられた。常に新たなビジョンを模索している音楽業界全体にとって、commmonsの指し示す視点と、将来に向けての展開が、最大の関心事となってくるのではないだろうか。 | |||
2007/01/31