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オリコンニュース

米で大ブーム、マイスペースって?

ポップ・カルチャーにおいてMTV以来の力を持つメディアと評されたMySpace

 日本では連日mixiに関するニュースがメディアで報じられているが、同じようにアメリカではmyspace.comの影響力が論じられ新聞雑誌等々のメディアをにぎわせている。mixiと同じSNSながら、こちらは音楽専門、にもかかわらず、全世界で1億人が登録しているという。今や音楽プロモーションにおける最大メディアとして位置づけられている。日本上陸も噂されるなか、アメリカでの人気と影響力を現地からレポートする。

ディラン全米1位の背景にあったmyspace.comの影響力

 ボブ・ディランが76年『欲望』以来30年ぶりにアメリカのチャートで1位を獲得したことが大きなニュースになった。いまや衛星ラジオ局でDJまで務めるディランだが、長い間ラジオで曲がオン・エアされることすらなくなっていたアイコン。

 
 彼が新作『モダン・タイムス』でこの快挙を成し遂げたのには、iTunesのCMに登場したり、スターバックスでCDの販売を行ったり、またスカーレット・ヨハンセンを起用したビデオがYouTubeで即日1万5000回再生を記録したり。65歳の彼が最新のメディアを使ったプロモーションを展開し、より若いオーディエンスを開拓したことが大きな要因と言われている。

 なかでも、周囲を驚かせたのは、彼がmyspace.comにページを作ったことだった。10代〜20代の加入者が圧倒的であるこのサイトで、彼がサイトを作ると「ミスター・タンブリンマン」が70万回も試聴されたそうだ。新譜の初週売り上げ19万3000枚のうちダウンロードによる売り上げは2万枚にも上った。いかにMySpaceによる新しいオーディエンスの獲得に成功したのかをうかがうことができるし、ディランほどのアーティストが注目するMySpaceの力を改めて確認させられたような気がした。

 myspace.comとは、アメリカを拠点としたソーシャル・ネットワーク・サイト。音楽の試聴、ダウンロード、ビデオの再生が簡単なため、元々音楽ファンの間で急成長したサイトだ。06年7月11日に、Hitwiseの統計によると、アメリカを拠点とするウェブ・サイトで、アメリカ国内からの訪問者数で、Yahoo!、Google、Ebayを抜いてシェアのナンバーを記録してしまったのだ。

 ワイアード誌は「ポップ・カルチャーにおいてMTV以来の力を持つメディア」として位置づけているし、実は現在、iTunesに代わるデジタル配信サイトして大きな注目を集めている。イギリス版はすでに開始し、中国でも今年中にオープンするらしい。日本上陸も間近との噂もあるので、改めてこのMySpaceについて簡単にご紹介したいと思う。

 現CEOのクリス・デウォルフ(USC卒40歳)と、現社長のトム・アンダーソン(UCLA卒30歳)他エンジニア計7人が、myspace.comを立ち上げたのは、03年7月だった。当時SNS、Friendsterなどのコミュニティ・サイトが急成長するのを見て、SNSのフォーマットに、音楽、ビデオ、写真が簡単にアップできるサイトにしたら人気がでるのではと思い、現在のフォーマットで立ち上げた。ティーネージャーの間で即座に人気になり数百万人もの加盟者を記録した。開始してから2年後、05年には30代以上にはほとんど知られていないサイトだったが、加盟者はなんと2700万人にもなっていた。

 音楽、ビデオが簡単にアップできるフォーマットで、ページを開けた瞬間に曲が流れるシステムになっているため、開始当時から特にレコード契約のないバンドがプロモーションとして使いだした。そのため、このサイトは、音楽系サイトとして人気が定着。ティーネージャーたちは、自分の好きなバンドのサイトを作っては、コミュニティを広げていった。

 当初は、インディー・バンドなど口コミで人気を獲得していくタイプのバンドがHPを持っていたが、2700万人という加盟者にメジャー・バンドも目を付けないわけがなく、04年10月にはウィーザーが、そして05年3月にナイン・インチ・ネイルズがMySpaceページを立ち上げた。それがきっかけでMySpaceが一気にメジャーな音楽サイトとして認知された。そして、05年7月、メディア王のルパート・マードックが5億8000万ドル(約600億円)で買収する。

 元々音楽ファンのコミュニティができているため、音楽を配信すればネットワークは付いてくることが最大の魅力。ウィーザーや、ナイン・インチ・ネイルズは、MySpaceでどこよりも先にアルバムの試聴をできるようにし、ビデオもこのサイトで真っ先に見られたり、ツアーの予定、メンバーの日記などもアップされるため、バンドのオフィシャル・サイトよりもMySpaceをチェックするのが当たり前となった。

 レッド・ホット・チリ・ペッパーズもMySpaceで真っ先に新譜の試聴を開始したし、例えばフランツ・フェルディナンドなどは、MySpaceの加盟者にだけにシークレット・ギグの告知をしたりした。アークティック・モンキーズ、リリー・アレンなどの新人は、MySpaceありきで人気を獲得したミュージシャンたちだ。登録すればバンドと「友達」になることもできるため、バンドとファンが直接コミュニケーションできる親近感が、このサイトを急成長させた理由でもあると思う。

 メジャー、インディ、アマチュアを問わず、ミュージシャンとしての登録されているHPは、現在なんと300万件。このサイトにHPのないバンドはほとんどいない、というのがアメリカの現状だ。また、バンド側だけでなく、レーベル側も新人バンドの発掘に利用しているとのこと。現在の会員者数はなんと1億人! すでに、30歳以下のものではなくなっている。

 ただし、個人情報が細かく掲載されているため出会い系のサイトとして利用する人たちも急増し、犯罪が起きはじめたという問題も抱えている。紹介者も必要なく、年齢をごまかすことも可能で、未成年による犯罪を阻止できないでいる。どのようにシステムを改善すればいいのか検討されているところだ。

 また、マードック氏は、インターネットのビデオ部門において急成長を遂げ、ビデオだけでいうとトップを走るYouTubeを60日以内に追い越す、と今年の9月半ばに声明を発表している。ビデオのやりとりがよりスムーズに行えるよう強化を図るらしい。

音楽配信もスタートさせ、米での音楽産業のあり方を大きく変えるMySpace

 さらに、音楽産業が今いちばん注目しているのは、MySpaceがiTunesに変わるデジタル配信の場となるのではという点だ。9月1日、MySpaceは、ナップスターの創設者ショーン・ファニングが開始したSnocapと提携して音楽のダウンロード販売を開始すると発表したのだ。しかも、この秋にもオープンする予定のMySpaceストアでは、現在アップルの1曲99セントに対抗して、それぞれのバンドが自分たちの好きな値段で楽曲を売ってよい、という規定にするとのこと。

 しかし、現在のところMySpaceで販売される楽曲はMP3フォーマットでiPodでも聴けるのだが、コピー・プロテクションがないため、メジャー・レーベルはこのサービスに加入するかどうか決めかねているそうだ。MTVによるとデウォルフは「現在MySpaceを利用する“ミュージシャン”には4形態ある。ユーザー、インディー・バンド、メジャー・インディー・レーベル、そしてメジャー・レーベル。この4形態に共通するサービスを確立したいと思っている」と語っている。

 メジャー・レーベルは、iTunesが3年前に開始した時から、1曲99セントという固定した値段設定について抗議を続けてきた。レーベルとしては、新譜はより高い値段で、旧譜はより安い値段で売るという方針を貫きたいらしいのだ。MySpaceでは価格設定が自由なので、その方針を貫くこともできる。

 デウォルフはまた「このサイトの強みは音楽ファンのコミュニティとして始まっているため、一気に10億曲配信されたとしても、ユーザーが途方に暮れるということがない点だ。自分たちの音楽コミュニティを通じてそこから買いはじめればいい。このコミュニティで知った音楽、エンターテイメントをこのコミュニティで買うというのは、正しいやり方なのではと思う」と語っている。

 現在アメリカのデジタル・マーケットの70%を占めるiTunes。メジャー・レーベルがそのオルタナティヴを捜しているのは間違いなく、今後どのような提携がなされていくのかによって音楽産業のあり方も大きく変わるものとして大きな注目がされている。
文/中村明美(ロッキング・オン)



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